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ライオンの檻に肉

夏希の高校は晴海埠頭のちようど反対側辺りにあるバリバリ埋め立て地の新設校だ。

設備もピカピカで充実してる。

首都大の大学院と併設なので見た目大学っぽい。

見た目に憧れて入って来る新入生も多い。

月子さんの小料理屋も近いので楊世君が編入を決めたようだ。

転校当日、夏希の学年は浮足立った。

絶世の塩顔イケメンが転校してきたのだから。

お坊ちゃま男子校から女子の方が多い青海高校へ。

学年女子は皆、狂喜乱舞した。

ただし、夏希はまだまだ絶望の中だったが…

ガチ恋相手が、結婚してパパに。

この現実を受け止めて死なずに生きてるだけでも立派と言える。

学校側の配慮か?クラスは別になった。

おかげで2人が今日から義姉弟で同居する事は、誰にも知られずに済んだ。

始めは校門で待ち合わすつもりだったが、あまりの女子の熱狂ぶりに危険を感じて、

月子さんの店で落ち合う事になった。


「今日からよろしくお願いします。」月子さんに頭を下げられた。

「いえ、本当にボロい家ですけど良いんですか?」夏希は心配だった。

深川の昔からある文化住宅だ。

和洋折衷の平屋に無理やり2階を増築した造りで

階段を昇り降りする度にきしむような家だ。

「お邪魔した時感動しましたよ。TVドラマのセットみたいで。」月子さんは小料理屋も古民家風にしてるくらいなので好きなのかもしれない。

そこに楊世(ようせい)も入ってきた。

「こんにちは、はじめまして。楊世と言います。

学校でチラッと見かけたけど声掛けられなくてゴメンね。」月子さんにソックリで美人さんだ。

3年女子が熱狂するのが分かる。

ただし、阿部寛に代表される濃い顔好きの夏希には

綺麗な姉妹ができたような気持ちだ。

でも、家の中が華やぐだろうなあ〜とは思える。


父は港湾署の鬼瓦みたいな顔の刑事で、夏希も小太りガッチリ体型で古い日本家屋の中では、ドワーフが2匹住んでるようなものなので、

エルフみたいな2人が住んでくれるとなんか明るくなりそう。

「私はこれから店開けなきゃいけないから家の方はお願いね。

お料理はお店のおばんざい3品くらい作り置きしてるから。

お味噌汁は楊世が作ると言ってるから夏希ちゃんはご飯お願いね。」

2人で店を後にした。


楊世が思いっきり「フーーッ!!!」と深呼吸した。

「どうしたの?!」夏希が驚く。

「いや、男子校育ちだから…

あんな沢山の女子見たの初めてで…正直ガチガチだったよ!」楊世が笑った。

「うちは、ほとんど女子だもんね〜公立なんだけど、なぜか」夏希が苦笑する。

「いや、まっ、それに期待して編入したんだけどさあ〜

マジで見たら硬直したよ。」かなり学校で緊張したみたいだ。

「まあ、少ないながらも男子もクラスに5人くらいは居るから安心して。」夏希は安心させようと言う。

「いや、もしかしたらモテるかな〜とか期待してたけど、

なんか思ってたのと違うと言うかあ〜」楊世が首をひねる。

「ああ〜」夏希は察した。

「男ってハーレム憧れるけど、実際はライオンに肉やるようなもんだからね。

立ち振る舞い気を付けないと命がいくつあっても足りないかも?」ウインクして楊世を見た。

心なしか顔が青い。

「愛想良いか悪いかどっちかに振っておかないと、相手によって態度変えたら

すぐリンチに遭うからね、気を付けて。」

そう忠告して地下鉄の電車に乗り込んだ。

男が多ければ女にランクづけしても黙って耐えるが、

女の中で女によって態度変えたら絶対許されない。

詰問責めで精神崩壊するまで追い込まれる。

明日からの楊世の学校生活を祈った。

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