佃島
「やっぱり閉まってるかぁ〜」夏希は家庭科控室の扉を回すが鍵が掛かっていた。
先生達は皆容疑者状態なんで、それどころじゃないんだろう。
「どうせ1時間もやらないし、ウチでお茶する?」サキが誘ってくれた。
「エッ、今日ダンスの日でしょ?」夏希が遠慮する。
「どうせ6時からだから1時間家で待つだけだし。
ウチは両親共働きだしね。
いつもはアンタとLUFAの話をマックでしてた時間じゃん?
お互いバイトないと暇だよね〜」週3だったはずだが、なぜか放課後毎日ダベっている。
「俺も。サッカー部顔出しても、あんまりいい顔されないしな。急に勉強だけとか言われてもなあ〜
1時間くらいお菓子食べて話すくらいしないと!
ツライわ!」
「僕はやっとクラスの顔覚えた所で、この事件だし。
教室で隠し撮りされてるし。ネットに上げる気なんだろなあ〜」楊世もウンザリした顔してる。
皆で佃島のタワマンのサキの家にお邪魔する。
「アンタ、そんなにお菓子やジュース買い込んで大丈夫?」サキに驚かれる。
「フッ、推し活の金が余ってね…」夏希が自虐的に笑う。
皆で携帯の写真見ながら話す。
「首は男でも女でも絞めれるとしてもさ、この非常階段の5階まで人運ぶのは男でもキツくない?
俺は3階ぐらいで無理だわ。」ヒロが今日は夏希の奢りのアルフォートを袋食いしてる。
「そこに呼び出したとか?登校時間なら、そっちは全く人気ないし。」サキがハリボーのまとめ食べしながら推測する。
「でも、こんなの絶対疑われるじゃん。
あれ?でも僕を呼び出したのは、犯人?」楊世が大事な事に気付く。
「だから警察も通信会社の方へちゃんと、時間と送信場所の確認に行ったんだろね。」夏希が紅茶のピーチ味を一気に飲む。
「インスタにはアクセス出来ないけど、クラスラインは見ること出来る立場の人だよ。
もしかしたら犯人は彼女がインスタしてるのも知らないかもね。」
夏希が箱が、ペコッとするまで中身を吸う。
「やっぱり年配の人かなあ?
Xで止まってる人、大人は多いし。」サキが首をひねる。
「あっ、ダンスの時間だ!」
そこでお開きになったのでヒロと楊世と夏希は月島駅から地下鉄に乗る。
門前仲町まで一駅だ。
駅でヒロと別れて2人は深川の家へ帰る。
ここまで来ると学校みたいに気を使わなくて良い。
「あのさ…ずっと聞きたかったんだけど」夏希が話し出す。
「元の家や学校に戻りたくない?
ココへ来た事、後悔してない?色々大変でしょ?」
漠然と人が、自分と関わって幸せなのか不安になる。
特に寝食を共にするのはストレスなんじゃないだろうか?
「僕は夢と目的の為にココに来てるからね〜
父のそばやあの学校では絶対叶わない進路だからね。
人が死んだのはショックだけど、僕は進むよ。」
楊世は月子さんと同じで穏やかで一見流されそうだけど
芯は誰より通ってる気がする。
だから、無理して自分のそばに居る訳じゃない。
心配しなくて良いみたいだ。
「そう、なら良かった。」2人で深川の文化住宅へ帰った。