推し活廃人
夏希にはずっと推しが居た。
ダンスユニットLUFAのボーカルでモデルもやってるレオン。
ハーフで英語もペラペラで〜歌が上手くて〜ダンスも最高♪
高校生活の全てを彼を推すために捧げてきたと言っても過言ではない。
アルバムは10枚買いライブチケットの当選確率を上げ、
誕生日には祭壇を作り、自分の誕生日でも作ったことないケーキを焼き、部屋はアクスタとパペットにポスターだらけ。
机は勉強する所ではなく、レオンを飾る飾り棚となっていた。
だが、そんな幸せは長くは続かない…ある日、
同じハーフの雑誌モデルとデキちゃった婚がスクープされてしまった!
もう、もう立ち上がれない…打ちのめされて…
「オイッ、起きろ!もう、夕飯の時間だろ!」仕事から帰った父親にふて寝してる布団を引っ剥がされた。
「お腹なんか空いてない!食欲ないよ!
もう生きてる意味もない!」剥がされた布団にしがみつく。
「大げさな!年頃の男なんだから、彼女くらい居るだろ!」父親は布団を剥がして階下のダイニングキッチンへ夏希を引きづって連れて行く。
「彼女じゃないよ!嫁だよ!それも子供まで…ヒドい!ヒドすぎるよ!」さめざめと泣く。
「いいタイミングだよ。3年なったらバイト辞めて勉強に専念しないと!お前本当に行ける大学無いぞ!」
父親は無理やりテーブルに座らせて夕飯を食べさせた。
すっかり意気消沈してグスグス泣いている。
「お前部活もしないでバイトと推し活しかしてこなかったが、高校生活それで終わって良いのか?
お前自身の人生なのか?それは?」父親は腕を組んで説教する。
「推しが喜んでくれたら、それが私の喜びなのよ!
お父さんには分からない…」ご飯をボソボソ食べながら独り言みたいに呟く。
「で、そいつは可愛いモデルの彼女と恋して結婚するんだろ?お前も喜んであげろよ!」男親らしい無神経さで諭す。
「お父さんのバカーッ!!!」夏希は箸を父親に投げた。
その時、父親の携帯が鳴る。
「あっ、月子さん♪
はい、楊世君は許してくれましたか!
良かった良かった。
じゃあ、とうとう一緒に住めますね。」携帯を切った。
「お前が推し活だけに明け暮れてるうちにお父さんは再婚が決まったからな!
お前もお前の人生をこれを機会に歩めよ!
高校生活を充実させろ!いいな?」父親がニコニコしてる。
父が月島の小料理屋の月子さんとずっと仲が良いのは知ってた。
綺麗で優しい人で夏希も全く問題ない。
推し活忙しいので、現実なんかどうでも良いと言うのが本音だった。
「別れた旦那さんも再婚するらしくて息子の楊世君が月子さんの所に来るらしい。
再婚する話をするか悩んでたが、やっと話せてOK貰ったみたいだ!
良かった良かった♪」
今時の中年は本当に元気だなと思う。
息子さんも大変だなと同情する。
「お前と同い年だ。同じ高校に編入試験も受けたらしいぞ。
まずは同い年の男子と仲良くしろ!
推し活じゃなく自分の人生を推せ!」
父、古舘耕三は上手くまとめたとご満悦だった。