閉口
これは、私だけが開けられる秘密の箱だ。
入れたいものはおおよそ検討がついている。
例えば……
ぐちゃぐちゃになったノート、傷だらけの人形、血の付いたハサミ。
そして、この制御できないほど膨れ上がった混沌とした感情さえも——。
入るだろうか?
いや、入れるのだ。
たくさん詰めすぎて蓋が閉まらなくなっても心配は要らない。
蓋の上にのしかかって「閉まれ」と命令すれば、箱はギシギシと音を立てながら何かを哀願するように大人しく口を閉じる。
私が許すまで決して開くことの出来ないその口を撫でる。
頬が緊張しながら上がっていく。
この箱は、私に従順だ。