第一話 機械人形
ようこそお越しくださいました。
銀の絡繰、なろう連載です。
第二十七話まで、毎日一話ずつ更新いたします。
第二十七話以降に関しては、様子見しながら進んでいきますので、のんびりお待ちいただけると幸いです。
死臭が鼻を突く。
何も思い出せない。
脳裏に浮かぶのは故も知らない、しかめっ面の老い耄れが放つ言の葉ばかり。
不快な目覚め、程良い吐き気。このまま寝れば楽になれる。そんな確信。無意味が意味を、生きる力を、刻一刻と削ぎ落とす。静寂が現状を物語る。鳴らぬ声はいつも何かを叫んでいる。
「機械...... 人形........」
粉塵を裂くは機械人形。
この死臭を感じていないのだろうか。その顔は情を知らない。情なぞ知らぬと、その顔は述べていた。
芯の通った立姿。気の抜けた面。透き通る様な白い肌。浅葱色の瞳。美しく纏め上げられた銀髪。髪飾りとは魔法の道具であったのか。髪先は瞳の色に、少し染まっている。
「問うは一つ。伏するか人間」
伏するも何も、既に伏せている。
すると彼女は、何やら御立腹のご様子。早足で近付いて来るや否や、彼の顔を下から覗き込む。不満の要因は彼の顔にあったのだろうか。
「口呪とは.... 陰湿な.....」
コウジュ。聞き慣れ無い。頭が悪いのか、はたまた記憶が悪いのか。
まぁいずれにせよ、宜しくないのだろう。何故かそこには確信が持てた。
次の瞬間、何かが唇に触れた。そして数瞬。ほんの数瞬後。口が開いた。
何かが唇を縫い合わせていたらしい。
「......」
開いた口の先から、血の池の臭いが、散った臓物の臭気が、我先にと飛び込んできた。しかし、不思議なことに、何故か吐き気は収まっていた。
だが次の瞬間、吐いてしまった。
美しき造物の香り。造られた香り。ソレらに酷く酔わされた。
絡繰の香りだ。
「吐く程私は不細工か」
一本取られた。
そんな感情。
そうして気絶してみせた。