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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
お人好し掲示板実況者と名家出身の女の子
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二年前。

つまり、冬真がリオ達に助けられ、探索者として教育されて一年が経過した頃。

何を思ったのか、リオはスレ民達を集結させバベルに挑んだ。

日本だけでなく、世界各地のスレ民が集合した。

集まった人数は、しっかり数えていたわけではないから正確なところはわからない。

けれど、百数十人はいたと思う。

顔出しはおろか、表立って活動していないものばかりだ。

無免許の者も多かった。


そのほとんどが、ダンジョンが出現してからの百年間、リオに命を助けてもらった者たちだった。


だからこそ、リオの呼びかけに集まったのだろうと思う。

さすがに、超初期に助けた者たちは寿命により亡くなっているが。

あの時集合していたのは、この数十年のうちに助けた者たちばかりだったときいている。

ちなみに冬真の師匠である【特定班】、【考察厨】、【実況者】、【厨二病】の四人も、リオがかつて助けた者たちだ。


「俺は知り合いに声かけられて参加したんだけどな」


バベルに向かって走りながら、全裸男は口を開いた。

どうやら全裸男は、リオに助けられた者ではないらしい。


「まさか、あんなことになるとは思ってなかったからなぁ」


二人の脳裏に過ぎるのは、二年前の黒歴史。

苦々しい記憶だ。

バベル、もしくは世界各地にあるバベル級のダンジョンを単独で攻略できる猛者たちが、為す術なく負けたのだ。


文字通り、全滅したのである。


なにが起きたのか?


魔族がでた。

魔族たちのスタンピードだと、誰もが思った。


けれど、違った。

あれは、あの時起こったことは、スタンピードでは無かった。


「デウス・エクス・マキナ」


冬真が呟く。

それを受けて全裸男が続ける。


「機械仕掛けの神、ね。

もとはラテン語だっけか」


「もしくは、創作関連で言うなら、一部ご都合主義の展開とかを言い表すときに使われるな。

強引なハッピーエンドとか。

まぁ、むりやり終わりに導くってなら、たしかに合ってるが」


誰がいつ、あの時起こったこと、いや起こした魔族をそういうようになったのかはわからない。

でも、いつの間にかその呼称が定着していた。


「デウス・エクス・マキナ、もしくは」


冬真は言い直す。


「魔王、と呼ぶ方がしっくりくるけどな」


二年前のレイド戦にて、猛者たちが何も出来ずに負けたのは、とある魔族の登場によって起こった。

スレ民達によって確認されている魔族のほぼ全員が、世界各地で名を馳せた者たちばかりだ。


無名の者もいるが、それは特定班によって、この世界のどこのだれかが特定されている。


けれど一体。

たった一体。


特定班によってもわからない魔族がいたのだ。


その魔族は登場すると同時に、集まった猛者たちの命を奪った。

睨まれただけで、倒れふし動かなくなる。

倒そうと動こうとすると、いつの間にか背後に死神のようなモンスターが現れ、手にした大きな鎌で真っ二つにされた。

では、動かなければ良かったのかというとそうではない。

動かずにいると、足元から三角錐のようなもので体を貫かれる。


そうして、なにも出来ずに彼らは全滅したのだ。


では、どうして助かったのか?

それは、いまもわかっていない。


気づいたら、全員樹海の外に倒れていたのだ。


ただ、思い出すのは。


(スネークは、リオはあの魔王のこと知ってそうなんだよなぁ)


あの場でリオだけが、反応がちがったのだ。

まるで、懐かしい顔を見たかのような反応だった。

驚きと、まさかという反応。


もう二度と会えないと思っていた存在に再会できた。


そんな反応だった。

あのリオがちょっとだけ泣きそうになっていたのも覚えている。

けれど、確認したことはない。

聞いてもいいのかわからなかったし、冬真のことをリオが根掘り葉掘り聞くことはなかった。

だから、あえて聞かなかった。


しかし、リオは百年近くあの姿のままで生き続けているのだ。


なにかしら彼女なりの、抱える理由があるはずだ。

でも、わざわざそれを聞くことはしていない。

なぜなら、リオは恋とは違うから。

いつか、冬真がリオのことを知る日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。


どちらでも良かった。


聞けば、もしかしたら教えてくれるかもしれない。

リオが百年生きてるということも、聞いたからこそ教えてくれたのだ。

じゃあなんで、そんな長生きになったのかということは教えてくれなかったが。


そうこうしているうちに、バベルにたどり着いた。


結局、全裸男も一緒である。


「まだ始まってないな」


全裸男が携帯端末を確認して、つぶやく。

冬真も頷いた。

念の為、バベル周囲の気配をさぐる。


「……部隊は展開しつつあるみたいだ」


恋の兄による討伐部隊のことだ。

スレ民たちに、彼らの動向は筒抜けであった。

わざわざそのことを、冬真たちへ知らせてくれたのである。


冬真はささっと、携帯端末を操作する。

メッセージを送り、新しくスレ立てをし、バベルを見上げた。


「思ったより時間は無さげだ、早く恋と雪華を見つけて逃げよう」


二年前のレイド戦により、考察厨たちがデウス・エクス・マキナの発生条件にあたりをつけている。

おそらく、百人以上でバベルに挑み、そして一定時間バベル内にいることが条件だとみている。


スレ民達からの情報提供により、討伐部隊は百人規模だとされている。

場所が場所だからだろう。

そして、金がある名家だからこそできる力技だ。


「知らないって幸せで怖いことだよなぁ」


と全裸男は言った。




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