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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
お人好し掲示板実況者と名家出身の女の子
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雪華は得意げな表情で、恋へと近づいた。

ダルマ状態で、自分では起き上がることも、立ち上がることも出来ない恋を見る。


「なん、で??」


恋は呆然と、そして失血により薄れゆく意識をなんとかつなぎ止めそう言葉を吐いた。

雪華は、楽しそうにバックパックから修行中に手に入れた回復アイテムを取り出す。

毒々しい色をした【タナトスの秘薬】である。

何本も取り出して、バッシャバッシャと恋へぶっ掛ける。


《大盤振る舞いwww》

《贅沢な使い方やなー》

《万能薬でもいいだろうに》


「持ってるなら使わなきゃねー。

しまい込んでても意味ないもん」


雪華がコメントに答える横で、恋が回復する。

手足が元通りになる。


「大丈夫?」


雪華は言いつつ、恋へ手を差し出す。

差し出してから、


「立てる?」


そう聞き直した。


《なんか、雪華、誰とはいわないけど似てきたな》

《たしかに、誰とはいわないけど、同じことしてるwww》

《凶悪犯かもしれん人へ、よぉ手を出せるな》

《たしかに》

《俺は無理だなー》


そんなコメントまで書き込まれ、ながれていく。


「何言ってんの、ここは無法地帯で弱肉強食の世界よ?」


ドローンには目を向けず、雪華は恋を見ている。

ただまっすぐ、見ている。

逸らさない。

逸らさないまま、続けた。


「つまり、強い方が正義なんだから!私が正しい!

私の行動は、誰がなんと言おうと正しいの!!」


文句ある?

とでも言いたげだ。

そして、もう一度、雪華はニッと笑ってみせる。

つられるように、恋は差し出された彼女の手へ、自分の手を伸ばす。

触れ、握ろうとする。

けれどそんな恋より先に、ぎゅうっと雪華の方が強くその手を握った。


「ほら、立ちなさいよ」


引っ張られるようにして、恋は元に戻った両足で立ち上がる。


「ん」


「さてさて、それじゃいいゲストも拾えたし、配信続行ね!」


《えwww》

《まじwww》

《強引すぎる》

《恋たん、巻き込まれてるwww》

《で、でも、殺人犯でしょ?大丈夫??》

《そうたよ、悪いことしたんならちゃんと罪を償うように説得しないと》


「……ふむ、そうねぇ」


言いつつ、まだ頭が追いついていないのか、どこかぼうっとした表情の恋を見る。


「ねぇ、あんた、父親を殺したって本当?」


雪華は失礼もくそもない、あけすけな聞き方をした。


「し、してない!!」


恋はつい反射的に否定した。

雪華はまたニヤリと笑う。


「だってー、本人が言うんだからしてないんじゃない??」


《いや、でも》

《じゃあ、してないって証拠は?》

《雪華たん、恋たんの無実信じてる系?》

《人はな、嘘をつく生き物なんだぞ?》


嘘をつく生き物、というコメントに雪華は返す。


「それくらい、知ってる。

だって、嘘だらけだしねぇ、この世の中って」


《え?》

《???》

《なにその反応??》


「この子が嘘をついてるって論法が成り立つなら、被害者側も嘘をついてるって論法も成り立つのよ」


《えー、それは無いよ》

《だって恋たんのお父さんが死んだのは事実でしょ?》

《殺したのが事実なんだから、恋は嘘をついてるってことじゃん》

《殺されたのは事実なんでしょ?》


そこで雪華は、簡単に手元の端末で、気になっていることについて検索をかけてみた。

さらに手際よく、知りたいことを検索する。


「今調べて見たけどね。

じゃあなんで、犯行前後の動画が出回ってないの?」


こういうのは、前後の動画が流れることがよくあるのだ。

ましてや、恋の父親が刺された場所、つまり犯行現場だが、表向きには彼が役員をつとめているとされているオフィスビルの一室となっていた。

そこには、防犯カメラが設置してあり、警備がつねにチェックしているはずなのだ。


(まったく、創作の探偵じゃあるまいし)


修行中、妙なことを学ばせるな、と思っていたが意外なところで役に立った。


《え、いや、だってそれは》

《あ、たしかに》

《あ》

《言われてみれば……》

《( ;゜д)ザワ(;゜д゜;)ザワ(д゜; )》


「あとはー、とくに寿命でもなんでもないのなら、この子のお父さんみたいな権力者って、蓄えてるレアアイテムで蘇生させて貰えるんじゃないの?」


だってそうでしょう?

と、雪華は続けた。


「ダンジョンがこの世に現れて百年。

その間、よっぽどの裏切り事がない限り、権力者への暗殺って消えたに等しいのよ?

噂くらい知ってるでしょ?」


レアアイテムを権力者が蓄えこんでいる。

これは、陰謀論界隈ではメジャーな話だ。

そしてつい最近では、他ならないメシアこと冬真も動画で指摘していたことでもある。

表の社会では実しやかな噂として、そういった話も流れている。


《あ》

《あ》

《たしかに》

《へぇ、そうなんだ》

《そんな噂あったんだ》


コメントが盛り上がり、同接数もどんどん上昇する。

皮肉なことだが、その数はどちらも雪華にとっては未知の数字となっていた。


《つまり、別に犯人がいる?》

《真犯人がいるってことか?》


このコメントによって、トレンドワードが一気に塗り変わる。

その第一位は【真犯人】であった。




【補足】

アイテム使って回復させてるのは、あの目を使うと魔力をメタくそ食うからです。

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