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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
お人好し掲示板実況者と名家出身の女の子
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久々の動画配信を、雪華は楽しんでいた。

厨二病が動画投稿を解禁してくれて、うれしかった。


最初、おそらくそこまでの同接数は見込めないと考えていた。

世間の話題は移り変わりが激しいからだ。

自分の活動休止により、離れてしまった視聴者もいた事だろう。

今は、それこそメシアの動画もある。

インパクト目的でSランクオーバーのダンジョンへ行って、攻略配信をしたところで数字では劣るだろうと予想していた。


それでもよかった。


なにより目的は、自分をかつて励ましてくれた動画の投稿主に会いに行くことだったから。

一方的な励ましだと理解していた。

こっちが勝手に励まされたのだと、理解していた。


だから、楽しそうな投稿主たちのところに行くだけの動画でもあった。

ついでに自分の動画を見掛けた人が、少しだけでいい楽しんでくれたなら、と考えた。


そして、蓋を開けてみたら見る見るうちに同接数は上昇していった。

動画に書き込まれたコメントを確認すると、どうやら自分の名前がSNSのトレンドワード一位になったらしい。


観てくれる人がいて、待っててくれた人もいる。

ありがたいことだ。


そのことが嬉しくてたまらない。

なにより、また動画投稿が出来て楽しくてたまらない。


自然の笑顔で、彼女はエンカウントするモンスターを屠っていく。


《雪華ちゃん、SUGEEEEEEE》

《魔法の威力上がってない?》


「フフッ、頑張って強くなってきたからねぇ」


と、雪華は言った。


《修行か》

《修行してきたんね》


「そうそう、もう本当に師匠達がスパルタでねぇ。

メシア、スレ主が強いのがよくわかったわ」


なんて言いながら、新調した杖でミノタウロスの頭をぶん殴る。

ミノタウロスの頭の中身が飛び散る。


《脳筋スタイルになってて草》


戦闘スタイルが変わったことを突っ込まれる。

しかし、それ以上のコメントが書き込まれた。


《殴ってほしい》

《ミノタウロス、裏山(*´д`*)ドキドキ》

《トゥンク》

《雪華ちゃん、俺の事も殴って♡》

《俺は引っぱたいてほしい(*´д`*)ハァハァ》

《俺は蔑んだ目を向けて欲しい》


一部、ハイレベルなコメントが書き込まれ流れていくのだ。

離れたファンもいるにはいたが、新しい層のファンを獲得した瞬間であった。

それはそうと、雪華の言葉に引っ掛かりを覚えた者も少なくなかった。


《メシア?》

《スレ主?》

《え、メシアの師匠に鍛えてもらったん??》

《雪華たん、TUEEEE》

《同じ人に師事したん?》

《なるほど、だからスピード上がってるのか》

《メシアとどっちが速いんだろ??》


これらのコメントに雪華が答えていく。


「まぁ、そうね。

スレ主を鍛えたのと同じ人たちが鍛えてくれたの。

たぶん、スピードは経験諸々の差からいってスレ主の方が上」


《そうなんだー》

《眼帯は?》

《眼帯について聞きたい》

《目を怪我したの?》


ついに聞いてくれたか、と雪華はニマニマした。


《え、なにその笑顔?》

《眼帯の下には、いったいなにが??》


「この眼ねぇ。思いっきり使いたいんだけど。

魔族の群れでも出てきてくれないかなぁ」


《は?》

《は?》

《魔族?》

《え、魔族?》

《はい?》

《いったい、その左目になにがあるんだ》

《というか、杖の使い方www》

《杖は魔法を使う時に必要な物なのに、打撃武器になってて草》

《←何言ってんだよ、本来の使い方だろ》

《え、本来?》

《←お前こそ何言ってんだよ、杖は魔法使う時に使うものだろ、情弱がwww》

《喧嘩すんなよwww》

《なに喧嘩してんだよ》

《コメントで言い争いしてるヤツいて草》

《※いわゆるメイスのこと。中世においては特権階級の騎士や聖職者に愛用されてたらしい。聖職者にいたっては、返り血がつきにくいというのが理由だった》

《聖職者の持つ杖って、たしか武器のメイスの流れを組んでたんじゃなかったか?》

《有識者いて草》

《ついでに言うと、文学作品でも実はこの杖を使った武術が出てくる》

《なに、有名な作品なん?》

《知ってる人は知ってる武術、バリツ》

《ばり?》

《なに?バリツって??》

《ホームズwww》

《シャーロック・ホームズやんけwww》

《いや、アレは柔道だったか合気道だったか、とにかくそういうのがルーツじゃなかったか??》


なかなかマニアックな知識が披露されていく。

それを、雪華も興味深く読んでいく。

世界には知らないことがたくさんあるのだ。


「んー、それにしても、いないなぁ。

ここじゃないのかな?」


《なになに?なにか探してるの??》


呟きをドローンがご丁寧に拾ったらしい。


「まぁ、いっか。

あのね、スレ主達が実況してるとこに乱入したいなぁって思ってたんだけど。

どうやらここじゃないみたい」


《メシア?》

《別のダンジョンにきちゃったのか》


「どこで実況してるのかな?

どうせだし、混ざったらたのしそうかなって思ってたんだけど……ん?」


言いつつ、今いる階層を眺めまわした。

その時、奥からなにか殺気のようなものを感じた。

面白そうな、楽しそうな気配。

おそらく、意外なことが起きている気配を感じ取る。

修行で感じ取れるようになってしまった、気配だ。


《どしたの?》


「奥に、誰かいる……」


言った次の瞬間に、血の匂いが香る。


「……スレ民?でも、うーん??

ちょっと行ってみよう」


《なんだろ?》

《wktk》

《ドローンに先行させたら?》


「あ、それもアリね」


視聴者の提案で、ドローンを血の匂いが漂ってくる方へ放つ。

それを歩きながら追う。

動画で、映像を確認すると、


「おや、これまた意外」


ドローンが映した光景に、雪華は目を丸くした。

しかし、雪華以上に視聴者たちが驚きの声をあげた。


《え、えええ?!》

《なんで、こんなところに!?》


ドローンが映しだしたのは、大量のモンスターに囲まれ、血まみれの瀕死になりながら戦っている恋の姿であった。

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