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「さて、どうしようかねぇ」
呟いてみるが、やることは決まっていた。
【最後まで投げ出さない】である。
幸い、恋は詮索好きではなかった。
彼の部屋を物色することはなかった。
そんなことをすれば、隠していた馬マスクやらほかの恥ずかしいものやらを目にしていたはずである。
当たり前といえばそうだが、そんな当たり前ができない人間というのは、意外と多いのである。
たとえば、良かれと思って、を言い訳にして頼んでもいないのに部屋の掃除をする人間とか。
冬真は、隠しておいた馬マスクを取り出す。
ついでに同じように隠しておいた、SSSSSランクダンジョンでしか手に入らないとされているレア回復アイテムも引っ張りだしてくる。
それからバックパックを用意して、その中にそれらアイテムを放り込んでいく。
《決まってないのかよwww》
冬真の何気ない呟きを携帯端末が拾い、掲示板へと書き込まれる。
それにスレ民が反応した。
《決まってないわけないだろ》
《当然、恋の手助けをするんだろ》
「まぁな」
準備が出来たので、次に恋が向かったダンジョンはどこだろうか、と考えた。
こういうとき、考察厨から教えて貰った考え方が役立つ。
手元にある情報も含めて考える。
《でもさ、手助けするっていっても何処にいったかわかるの??》
《どこのダンジョンに向かったか、か》
《少なくともSSSランクより上だろ》
《浄玻璃鏡を手に入れに行ったのはそうだろう》
《問題は、恋が、どこでそれが確実に手に入るかを知ってるかどうかになるが》
《夢幻絵巻手に入れた時に、浄玻璃鏡の鏡は魔族からのドロップはなかったっぽいもんな》
《それ言ったら、あのスタンピードで夢幻絵巻を手に入れられたのは運が良かったんだよ》
《運が良すぎたともいえるけどな》
《普通のアイテムしか手に入らない事の方が多いしな》
《そういや恋が手に入れた【夢幻絵巻】ってどうなったんだ??》
「恋が持ってる」
《兄貴に取られなかったのか》
《運がいいなー》
《ほんとに運がいいな》
《(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-》
《つーことは、手頃なSSSランクダンジョンに向かったのかね?》
《可能性は高いな》
冬真はスレ民の考えに否を唱えた。
《違うん?》
「だって、恋は指名手配中だぞ?」
恋が浄玻璃鏡を手に入れようとしていることまで、彼女の兄が把握してるとは思わない。
けれど恋は指名手配されているのだ。
外に出ただけで通報されかねない。
そこは上手く逃れられたとしても、なら何処に潜伏するかという話になってくる。
これに関しては、連日の報道でSランクオーバーのダンジョンに身を隠しているのではないか、という考察が出ていた。
そのため、恋の兄の手先や名を挙げたい冒険者がそう言ったダンジョンに張り付いている可能性が高い。
《あ、そっか》
《そうすると近場は避けるか》
《でも遠すぎてもリスクがあるんじゃね?》
《見つかるリスクは高まるだろうな》
《ちなみに、スレ主はどこだと思ってるんだ?》
「樹海のダンジョンのどこか」
《あ、あー、バベルのあるあの場所か》
《見つかるリスクはあるけど、樹海にさえ入れば、たしかにそのリスクは無くなるんだよな》
《あそこは少し腕に覚えがある、売名目的野郎が行ったところでどうこう出来る場所じゃないし》
《捜査してる組織とあの樹海を監視している組織は、まったく違う別組織だから、連携を取ろうとしても上手くいかない可能性がある》
《あそこ、基本的にSランク以上のダンジョンの密集地だもんな》
《でも、だとしてもだよ?どうやって見つけるのよ??》
《たしかに、見つけるの苦労しそう》
「そうかな?」
《そうだよ》
《そうだろ》
「そうでも無いと思うけどなぁ」
《なんで??》
「だって、夢幻絵巻あっても無くてもそこで遊んでる連中がいるだろ?」
《あ》
《くっそーwww》
《そういうことかよwww》
《俺らを使う気マンマンマンwww》
《楽しそうだし、いいぜwww》
《なんならスレ主の真似して動画投稿でもしようかね(´∀`*)ケラケラ》
《そこで、たまたま恋を見つけたとしても仕方ないしなー》
《あ、いいなそれ!》
《めっちゃ再生数稼げたりしてwww》
《顔映るの嫌だから、俺は普通に探すわ》
《馬マスク買ってこなくちゃ》
《実は動画投稿に興味あったなおまいら》
《顔出しは嫌だけどなー》
《俺は興味なし》
《いや、逆に恋の実家に居場所バレるだろ》
《そうだそうだ、落ち着けおまいら》
「いや、そうじゃなくて。
知り合い何人かに連絡とって、見かけたら教えてもらう。
それまで虱潰しで行こうかと」
《工エエェェ(´д`)ェェエエ工》
《横のつながりを利用するのか》
《なんだよ、俺たち使って探すのかとばっかり》
《つーかスネークとか頼んないの??》
「スネーク、パート先のシフトが変更になって今忙しいから無理らしい」
紙袋事件で、千客万来となってしまったそうだ。
おかげで毎日残業らしい。
そのため、この数日も冬真の部屋に来ることはなかった。
鉢合わせしなかったのはいい事だ。
もし鉢合わせしていたら、ややこしいことになっていたに違いない。
《じゃあ、今回は動画実況はなし?》
準備万端整ったので、部屋を出ようとしたところで、そんな書き込みがきた。
「まぁ、うん」
《!?工エエェ(゜〇゜ ;)ェエエ工!?》
《つまんねーなー》
《( -ω- `)フッ、仕方ないな》
《俺が一肌脱ごうじゃないか》
《何する気だよ??》
《なに、たまたまスレ主と同じことして動画実況するだろ?
そこにたまたま、偶然にもスレ主が映って実況することになるわけだよ。
完璧じゃね?》
「えー、あー、まぁ、別にいいけど」
こうして、今回もゲリラ動画実況が決定したのだった。
そしてこの数十分後。
何故かトレンドワード一位に【全裸の馬鹿】が躍り出てランクインすることとなった。
※注意
大愚ではありません