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冬真は、目がとても良いのでドローンにもすぐに気づいて、背を向け走り出した。
「いやぁぁぁぁあ!?山姥だぁぁああ?!」
叫びを上げ逃げる冬真、追いかける雪華。
「誰が山姥じゃぁぁあ!!??」
その様子は雪華のドローン(予備)で撮影され、配信されている。
動画のコメントはというと、
《雪華たんを山姥扱いwww》
《せめて小悪魔だろwww》
《まぁ、仕方ない。あの形相で追いかけられたらなぁ》
《メシア君、足速いなぁ》
《速すぎて、ドローンでも顔が上手く撮れてないな》
《……逃げてる??》
《おかしいな》
《あんだけ強いやつが逃げてるのが違和感しかない》
《だよな、下手すると雪華たんが返り討ちにされてた可能性がある》
《でも、逃げてるんだよな……》
《なんで逃げてるんだろ?》
《さあ??》
こんな感じだった。
コメントは続く。
《少なくとも、本当に雪華のことを山姥だと思ってるなら逃げずにたおしに来てるはず》
《ということは??》
「私に追いかけられてるって自覚あるってことね!
そっちがその気なら!!
風塵乱打!!」
雪華が異能力を使おうと杖を取り出し、振るい、魔法を放つ。
風魔法だ。
小石なんかを舞い上がらせて、相手を攻撃する魔法である。
ただし、威嚇、足止め程度なので、その威力は小さく調整してある。
それでも、攻撃には変わりない。
《地味に石とか当たると痛いやつ》
なんてコメントが流れた直後。
冬真は立ち止まり、くるりと体の向きを変える。
剣を構え、
「魔滅の剣」
そう小さく呟いて、襲い来る魔法へと剣を斬りつけた。
斬った魔法が消える。
《って、え?!》
《おいおいおい、メシア君、マジか!》
《魔法を斬って無効化しやがった!!》
《そんなことできるの?!》
《まぁ、昨日のアレ見ちゃったからなぁ》
《メシア君ならできるんだろ》
《ほんと、何者だよ、この子》
そんなコメントが流れていく。
そして、ドローンが彼の顔をしっかり捉えようとした瞬間。
「炎の魔弾!!」
ラミアを倒す時に使った魔法が、ドローンへと放たれた。
火の玉がドローンに当たり、壊れる。
「え?
ああああ!!ドローンが!!
なにしてくれるのよ!?
ドローンだって安くないのに!!」
雪華が非難の声を上げた。
「事前に撮影の許可をとる。
最低限のマナーだと思うけど」
「……うっ」
「挨拶もなにもせず、いきなり追いかけられたら逃げるし。
顔出しについてなにも尋ねられていないのに、配信されてたら嫌だろ」
「だからって、壊すことないでしょ?!
いくら命の恩人だからって、やっていいことと悪いことがあるでしょ?!
弁償してよ!!」
「ヤダよ。
ドローンが壊れたのは、あんたの自業自得だろ」
これらのやり取りが、掲示板に書き込まれる。
それをみたスレ民の反応は、
《おやまぁ、スレ主バッサリいったな》
《まぁ、スレ主の言い分もわかる》
《スレ主が嫌いなタイプだろ、相手》
《え、スレ主、雪華みたいなの嫌いなの??》
《かかわり合いになりたくないタイプだろうな》
《話に聞いただけだが、スレ主を捨てた両親を彷彿とさせる》
《いまのところ、お礼の言葉も無いからな》
《言われてみればたしかに》
「昨日のドローンも、壊したのアンタでしょ?!」
「記憶にございません」
「大昔の政治家か!?
とぼけんじゃないわよ!!」
さらにこのやり取りが掲示板へ書き込まれる。
《雪華ってこんなDQNだったんか》
《山姥って言われて怒ってるのもあるんじゃないか?》
《昨日と今日で、通算二台もドローンこわされたんじゃなぁ》
《そもそも実力不足なのに、ハイランクダンジョンに挑戦したのが間違いだったんだよ》
スレ民の反応も中々手厳しい。
「そもそも、昨日だってスタンピードさえ起こらなければ、アンタに助けて貰うこともなかったのに!!」
「……命が助かったんだから、別にいいじゃん」
冬真が、ボソッと言った時だ。
――ズン、ズン――
という足音が聞こえてきた。
冬真が足音の聞こえてくる方向を、正確に見極めてそちらを見た。
いま、二人がいる階層の奥から、巨大なモンスターが姿を現した。
「うそ、単眼巨人?!
まだ一階層なのに?!」
雪華が、驚きの声を上げる。
「なんだ、そんなことも知らないのか。
だから昨日も死んだんだろ」
「うっさいわね!!
中階層以降に出るって聞いてたから驚いただけよ!!」
このやり取りも、冬真の携帯は拾い、掲示板へ書き込まれている。
ちなみに、このダンジョンは全100階層からなっている。
中階層は40階層から60階層のことだ。
《サイクロプスかぁ》
《持ってる棍棒を奪おう、高く売れる》
《俺、アイツらの目にアルコールスプレーぶっ掛けて倒したことあるぞ》
《アルコールwww》
《沁みるもんね、アルコールwww》
《知ってるとは思うが、目だwww目を狙えwwwスレ主www》
《目を潰さずに回収できたら、それはそれで高値で売れる》
スレ民達の書き込みを見て、冬真は呟いた。
「さて、どうしたものか。
って、あ……」
その横から、雪華が駆け抜けてサイクロプスへ攻撃を仕掛けた。