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コンビニスイーツをポイポイと買い物籠へ投げ込む。
恋の好みがわからないので、和と洋両方を複数種類、二個ずつ放り込んでいく。
それなりの量になった。
レジへ向かう。
その間にも、書き込みは続いていた。
内容はスレ主、 つまり冬真の今後の動き方についてだ。
《それでどうするつもりなん、スレ主?》
《厄介ごと抱え込むのは自由だけどなー》
《表向きは恋は犯罪者なわけだし》
《このままだと、捜査の手がスレ主にまで及ぶのも時間の問題だろ?》
《なんだっけ?こういうのも罪になるんだよな、たしか》
《そうなの??》
《【犯人蔵匿罪】or【犯人隠避罪】になる可能性が高い》
《へぇー》
《かなりリスクあんじゃん》
冬真はレジを済ませようとする。
ついついレジ脇にある、揚げ物コーナーを見てしまう。
アメリカンドッグを追加で注文する。
金を払って、コンビニの外へ出るとすぐにアメリカンドッグに付いてきたケチャップとマスタードをかける。
モグモグと食べ始めた。
食べながら、書き込みを確認する。
《捜査班には鑑定能力者もいるって話だし》
《時間の問題だよな、マジで》
(たぶん、大丈夫っと)
冬真はそう書き込んだ。
《なんで大丈夫なん?》
当然、そう訊かれる。
《親と借金取りに見つかるまで、最低三年間、今のアパート見つからなかったから》
とくに隠すことでもないので、冬真は正直に書き込んだ。
《なに、特殊なアパートなん?》
(特殊といえば特殊だよなぁ、あそこ)
住民は、冬真を含めて何かしら事情を抱えたもの達ばかりだ。
冬真と同じように悪質な借金取りから逃げている者もいれば、身内に暴力をふるわれ命からがら逃げてきた者もいる。
あのアパートはそんなもの達の隠れ家の一つである。
《まぁ、うん。色んな人が逃げてきて、見つからないように住んでる場所だから。それ相応の処置がされてる》
自分は見つかってしまったが、と自嘲する。
見つかってしまったものは仕方ない。
どうやって見つけたかは気になるが。
《あ、あぁ、なるほど保護施設なのか》
《見つけるのに骨が折れるとは聞いたことあるな。詳しいことは知らんが》
《でも、逆にそういう場所こそ捜査されないか??》
どうだろう?
わからない。
しかし、時間稼ぎくらいにはなるはずだ。
少なくとも今日明日にでも見つかるとは思えない。
あそこはそういう場所だからだ。
捜査組織だろうと、踏み込むには手続きが必要になってくる。
《まぁ、アレだ、捜査される前に》
冬真は再度書き込みを始める。
《?》
《捜査される前にどうするんだ?》
またも当然すぎる質問が書き込まれる。
《恋の無実を晴らせばいいだけだ》
それが出来たら苦労しないだろう、とスレ民達は思い、書き込もうとして気づいた。
《あ、そっかー、その手があったな》
《そうだそうだ、その手がある》
《どんな手だよ?》
中には気づいていないものもいた。
冬真は答えを書き込む。
《【浄玻璃鏡】を使う》
ようやく、意味がわかっていなかったスレ民にも話が通じた。
《あー、なるほど》
《バベルで魔族が落とすやつか》
《またバベル挑戦か》
《バベルじゃなくてもSSSランクより上のダンジョンならごくまれに、モンスターも落とすぞ》
《アリス・イン・ワンダーランドとかな》
《アリスの迷宮は、精神攻撃エグいだろ》
《アリス・イン・ワンダーランドはなぁ、心の傷抉った上で塩塗り込んでくるからなぁ》
《でもさ、それめんどくさいことになるだろ》
《なにが?》
《いや、だって恋はスレ主のこと、メシアだって知らないんだろ?》
《どうやって、恋に説明するんだよ》
《あ》
《あ》
《あ》
《あ》
《そういやそうだった》
《あー》
《あ、たしかに》
「たしかに、どうしよっかなぁ」
まったく考えていないわけじゃないが、やはり冬真から提案するのはおかしいだろう。
《考え無しかいwww》
さすがにこれには反論する。
《いやいや、なにも考えていないわけじゃないぞ》
しかし、構わずほかのスレ民が、
《もうめんどくせぇな、さっさと正体バラしちまえよ》
《それも有りだよなぁ》
「うーん、それは遠慮したい」
《なんでよ?》
《恋からしたらめっちゃ借りを作ることになるんだから、スレ主=メシア=お前だなんて言いふらすことないだろ》
「いや、さすがに馬頭で動画あげてたとかバレたら恥ずかしいし」
これにはスレ民が総ツッコミをした。
それを要約すると、たった一言だ。
その一言とは、
《今更過ぎて草》
これになる。