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《今一緒に、俺の部屋で肉じゃが丼食ってるwww》
《スレタイ、どうゆうことなのwww》
《メチャ強お嬢様って、恋か??》
《なに女の子お持ち帰りしとんじゃ、羨ましいなコノヤロウ( º言º)》
《可愛い女の子お持ち帰りして、やる事が肉じゃが丼食べることって、お前……》
下世話な書き込みが流れていく。
それに苦笑しつつ、今しがた撮影した肉じゃが丼の画像を、冬真は貼り付けた。
《(((゜σ¬゜*))) ゥマソ….》
《男子高校生の腹を満たすためだけの丼物かぁ》
《その肉じゃが、スーパーの惣菜?それとも手作り??》
自分で作ったのかと問われたので、顔文字で返す。
《(* ´・ω・))コクコク》
《料理はそれなりに出来るぜ( *˙ω˙*)و グッ!》
そんな、クソどうでもいい情報を冬真が書き込んだ直後、
《なんで恋をお持ち帰りしてんの?》
《恋と友達になったん??》
《スレタイどういうこと?(2回目)》
他のスレ民から、なにがどうしてそうなったのかを問う書き込みがされた。
《あー、実はさ》
冬真はそう前置きをして、経緯を説明する。
それに対するスレ民の反応はと言うと、
《ぺろっ、こ、これは事件の味!》
《なんかやばくね?》
《恋、変なことに巻き込まれてないか?》
《恋じゃなくて、恋を助けたことによってスレ主が変なことに巻き込まれてるんじゃね?》
《これから巻き込まれる件》
スレの書き込みを確認し、丼をかきこみ、モグモグしつつ、冬真はチラチラと恋を見た。
それに気づいた恋が、
「なに?」
そう訊ねる。
冬真は、淡々と返す。
「肉じゃが、口にあったかなって思って」
「……お母さんの味と似てる、美味しいよ」
おそらく、素と思われる感想がきけた。
「そりゃ良かった」
そんな短いやり取りのあと、また携帯端末をいじる。
この短いやり取りの間に、スレ民たちのやり取りも進んでいた。
《事件性は確実にあるだろうけど、問題はそれがどんな事件かってことだ》
《なぁなぁ、スレ主、やっぱりちゃんと確認しておけよ?》
《恋がなんでそんなボロボロ状態でいたのか、聞いた方がいいと思う》
冬真はまた恋を見た。
その時だった、携帯端末にニュース速報記事が届いた。
契約上、登録させられたネットニュースサイトからの記事だ。
【速報】と、冒頭の文字だけしか表示されないので記事の内容までは分からなかった。
ただ、恋の名前があったのは読めた。
途端に、スレ民たちもざわつき始める。
《おい、スレ主!お前の家、テレビあるか?!》
《どしたどした?》
《なんか緊急速報のメールがきた》
「……テレビ?」
ボソッと呟く。
あるにはある。
スネークことリオが持ち込んだテレビがある。
それに視線をやる。
普段はそこまで使うことの無いテレビを付ける。
すると、ニュースキャスターがなにやらまくし立てていた。
その映像に、恋が釘付けになる。
映し出されていたのは、恋の指名手配画像と彼女が犯した罪を忙しなくまくし立てるニュースキャスターの姿だった。
どうやら恋は父親を暗殺したらしい。
そして、その場を腹違いの兄に取り押さえられるも逃げてしまったということだった。
恋の実家であろう、屋敷が映し出される。
他の局の取材班も一緒に映し出され、騒然としているのが見て取れた。
《ありゃまー》
《これは、また( ̄▽ ̄;)》
《大騒ぎだなぁ》
《暗殺者、スレ主の家で肉じゃが丼食べてるんだが、それはwww》
深刻そうなアナウンサーの実況中継が流れる。
冬真は恋を見た。
彼女は、顔面蒼白でかたまっていた。
おそらく現実に思考がついていっていないのだろう。
と、そこで彼女も冬真を見てきた。
「あ、あの!わたし!!」
「おかわりか?」
冬真はすっとぼけた。
「え、いや、そうじゃなくて」
「冗談冗談。
にしても、激しめの親子喧嘩してきたんだなー」
冬真はどこまでもいつもの調子で続けた。
なんなら、不謹慎な発言まで出てくる始末だ。
「まぁ、それも冗談として」
冬真はもう一度テレビをみた。
そこでは、アナウンサー達が手に入れた情報をまくし立てている。
何時頃に暗殺が行われたのか、そういうことをまくし立てている。
「ちょっと落ち着けって」
冬真はそこでテレビを消した。
そして、続けた。
「大丈夫、困ってるクラスメイトを通報するほどゲスじゃないよ、俺」
実況者の言葉が不意に蘇る。
――途中で投げ出すなよ――
そんな言葉が脳内で反響する。
「でも、状況が変わったからさ。
聞くわ。
なにがあったん?」