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《ちょちょちょ、ちょい待ち!!》
スレ民の書き込みに気づいた1人がコメントを打ち込む。
それが流れていく。
それに続いて、やはり【魔族のスタンピード】に関する質問や、動揺するコメントが群れとなり、やがて弾幕となって画面を埋め尽くす。
《は?!》
《スタンピード??》
《スタンピードって、あの??》
《SSSSSランクダンジョンでも、スタンピードって起こるの?!》
《モンスターじゃなくて、魔族??》
《魔族のスタンピード!?》
《そんなの聞いた事ないぞ!!》
《ザワ……ザワ……》
《まぁ、聞いたことないの当たり前だろ》
《SSSSSランクダンジョン関連の動画を広めたの、メシアだしな》
《広めたというか、広まったというか》
《まぁアレだ、スタンピードが起こらないわけが無いんだもんな》
《ランクは違えど、ダンジョンなのは変わりないしな》
《でも、今までSSSSSランクでスタンピードが起きたなんて話なかったろ》
《←あったよ》
《あっても、入り口に近いとこばっかりで、ハイランク扱いのベテラン探索者が対応してた》
《場合によっちゃ、探索者連盟が特殊部隊派遣してた》
《表沙汰になってはいたけど、そこまで深刻な扱いにはなってなかったってだけ》
《つーても、魔族の存在自体が世間に知られたのはつい最近だし》
《←つい最近というか、メシアの動画のせいだろ》
【バベル】に限らず、SSSSSランク認定されているダンジョンは、一般的には永く未開の場所とされてきた。
未踏とされていないのは、一定数挑戦する者がいたからだ。
けれど、挑戦した者は姿を消すか、蘇生不能となって発見されることが多かった。
だからこそ謎が多く、ほとんど調査が進んでいない。
監視役として使われている探索者ですら、その情報を中々持ち帰れない。
せいぜい、出入口に近い階層のものだけであった。
そのため、一般人への認知度は皆無に等しかった。
SSSSSランクダンジョンでも、スタンピードが起こるのだと。
いや、起きているのだと。
観測されてこなかった事象。
だからこそ、起きていないと思われていた事象。
それが今、配信によって表沙汰となった。
《で、でも、クソ強魔族のスタンピードが起きたなら、いや、起きてたなら世界滅んでも良さそうなのに》
《今の所滅んでないもんなー》
《案外、いまこうしてる現実が死後の世界だったりして》
《オカルトやん(´;ω;`)》
魔族のスタンピードとという事態に、視聴者達は混乱し続けている。
その間に、スレ主達は体勢を立て直していた。
恋の蘇生をし、彼女の傷を癒し、全回復させる。
緊急事態なので、スネークが指示役となる。
ここで、スレ主と恋が専門学校に通っていた学びが活かされる。
実戦での授業ではまだであったが、訓練として探索者としてチームを組んだ時の動き方を学んでいたのだ。
スネークの指示に従って、二人が息のあった動きを見せる。
《おおおおお!!!!》
《すげぇ、息ぴったし》
まず、二人はスネークの指示の元、一人目の魔族を倒すことに成功する。
その倒された魔族をドローンは映し出す。
《この顔どっかで見たことあるような……》
《←5年前に大手企業をスポンサーにつけた有名探索者だよ》
《そういや、海外のSSSらんくダンジョンに挑戦して行方不明になったって言われてたな》
《魔法杖持ってるってことは、メシアの腕かスネークの腹吹っ飛ばしたのこいつか??》
《いや、複数いるからな》
《どの魔族の魔法攻撃かなんて、素人目にはわからん》
《それな( ´-ω-)σ》
《って、ん?》
《足元に魔法陣が展開してる?》
疑問を書き込む者がいる一方、スレ民達がざわつきだす。
《え、この魔法陣って》
《やばない??》
《ヤバいな》
《スネークの事だから気づいてるとは思うが》
《ダメだ、気づいてても魔法陣に捉えられてる!!》
その書き込みが流れていくのと、魔法陣が発動するのは同時であった。
足元に展開された魔法陣が発動すると、スレ主、恋、スネークは糸の切れた人形のようにその場に倒れてしまう。
《魔力と体力、どっちも吸い取るドレイン系の魔法陣か》
《正確に三人の足元に展開、発動するとか、めっちゃ腕がいい魔族が混じってんな》
《←冷静に分析すな!!》
《これ、3人ともヤバいだろ!!》
三人が身動きがとれない状態となる。
そこを魔族達が取り囲む。
ドローンが映し出したその数、凡そ百人。
《嘘だろ》
《魔族のスタンピード、ヤバすぎる》
三人を取り囲んだ魔族達が、一斉に襲いかかる。
その、瞬間。
――風錐魔――
倒れた三人の、誰のものでもない声が降ってきた。