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見落とした書き込み。
冬真がそれに気づいたのは、ダンジョンに足を踏み入れた直後である。
夜でも、何故か明るいダンジョン内の画像を撮影して、掲示板に貼り付けた時に気づいた。
「……え」
思わず、そんな声が漏れた。
スレ民たちの書き込みが、それに続いた。
《えwww》
《マジかwww》
《昨日の今日で復活とか、よぉやるわ》
《俺は無理》
《若いっていいなぁ》
昨日の今日。
今朝のニュース。
噂になってること。
諸々が、冬真の頭を駆け抜ける。
そして、彼にひとつの決断をさせた。
その決断は、言葉になって飛び出す。
「よし、帰ろう!!」
冬真の言葉を、携帯が拾う。
そのまま、掲示板へ書き込まれる。
それを見たスレ民たちが反応する。
《帰ろうとすんなwww》
《帰るなよwww》
《せっかく来たんだろwww》
《連続チャレンジ、これにて終幕》
《それはそうと、ほんと昨日の今日なのに、なんであの配信者の子ダンジョンに潜ったんだろ??》
《それもAランクより上のSSランクだろ》
《雪華のホムペとSNS見てきたー》
《十代のSランクダンジョン攻略者が出たから、挑戦することにしたみたい》
《Aランクで死んだのに??》
「Aランクダンジョンで死んだのに?」
奇しくも、冬真はスレ民と同じ反応をしてしまう。
《配信者は動画の再生数や同時接続数、つまり視聴者の数で稼いでるから》
「そういや、そうだった」
《Sランクオーバーのダンジョンを配信実況する奴は今の所いなかった》
《でも十代の攻略者が出た》
《二匹目のドジョウを狙ったところで話題にならない。だからさらに上のランクのダンジョンに挑戦すれば、それだけで世間の注目は集められる》
「過激なことをすれば、人気者になれるってわけか……。
その子、馬鹿なのかな」
せっかく拾った命をわざわざ捨てに行くようなものだ。
助けた冬真からすれば、なんとも言えない気持ちになる。
《馬鹿かどうかはわからんが、その配信者、雪華は現在18歳だ》
《おぅふ、高校三年生くらいか?》
《いんや、この春高校卒業してる、だから誕生日来れば19歳》
《18歳だからなんなん??》
《わからんか?》
《18歳ってことは、今なら、Sランク以上のダンジョンを攻略すれば、今朝のニュースで出てたSランクダンジョン攻略者の記録を塗り替えられるだろ》
《あぁ、なるほど》
《たしかに》
《でも、それってさ公式の記録でって話だろ》
《非公式ならいくらでも塗り替えられてるからなぁ》
《非公式故に、表に出てこないってだけだし》
《それこそ、SSSSSランクダンジョン攻略なんて12歳で攻略した奴がいるからな》
《スレ主のことかぁぁあwwwwww》
《雪華はどっかのダン専の生徒だったりするん??》
《スレ主とは別の専門学校の生徒っぽい》
《年齢からして、今年入学かな?》
《今年の入学っぽいな》
《探索者の専門学校もそれなりに数あるからなぁ》
そんな書き込みを眺めて、冬真は決意を固める。
「やっぱり帰ろう」
《だから、帰るなってwww》
《面白くなってきたとこだろwww》
《いいじゃん、別に、雪華の方もスレ主のこと探してるんだからさ》
《(ヾノ ̄▽ ̄)もう遅いみたいだぞ?》
もう遅い、という書き込みが冬真の目に止まるのと、
「いたぁぁぁあアアアア!!!??」
そんな甲高い声とともに、狂人の顔つきで冬真へ突進してくる少女が現れたのはほぼ同時だった。
雪華である。