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その生配信は、順調だった。
出現するモンスターは強敵ばかり。
しかし、スレ主は慣れた動きでバッタバッタとそれらを倒していく。
恋は、腕や足を吹っ飛ばされたりしてダルマになりつつ、その度に値段のつかない貴重アイテムで再生&回復しつつ、モンスターを倒して行った。
そのお陰で、恋の動きが良くなっていく。
配信は順調だった。
同接数はやはりエグい数字を叩き出し続けていたし、SNSのトレンドワードもこの配信関連のもので埋め尽くされていた。
目的のアイテム【夢幻絵巻】は、まだ入手出来ていなかったが、配信としては順調そのものだったのだ。
ソレらが現れるまでは。
最初は、恋の後頭部がいきなり弾け飛んだ。
「……は??」
撒き散らかされる脳髄。
それを視認して、すぐに意味がわからないとでも言いたげな声が漏れた。
そんな声を最初に漏らしたのは、意外にもスネークだった。
恋の体がその場に倒れる。
頭を吹っ飛ばされたので、動かない。
続いて、今度はスネークの腹に穴が開いた。
それまでドローンは、スネークの姿を映すことは無かったが、ここで初めてスネークが動画に映った。
スネークが内臓を垂らしつつ、その場に蹲る。
スネークへ【タナトスの秘薬】を投げようと、スレ主が動いた。
瞬間、彼の左腕が弾け飛んだ。
辛うじて、アイテムを持っていた方の右手は無事だった。
彼はスネークへ、秘薬を投げることに成功する。
その光景を、余すことなくドローンは撮影する。
それらを見た視聴者たちの戸惑いが、コメントとして流れ、弾幕となる。
《え、ええええ???!!!》
《!?》
《!!??》
《ちょ、え??》
《ナニコレ、なにこれ?!》
《スネークの腹が吹っ飛ばされた:(´◦ω◦`):ガクブル》
《((((;゜Д゜))))》
《なになに?!》
《なにが起きたん?!》
《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛》
《!!!!!》
《!!??》
《おう?!》
《え、これ、仕込み??》
《やらせか??》
《←SSSSSランクダンジョンでヤラセ??》
《ありえないだろ》
《(゜ω゜;)》
《( ゜д゜)》
《やばない?》
《もしや配信事故、か??》
《いや、いつこうなってもおかしくは無かったけど》
《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!??》
《ナイスキャッチ》
《めっちゃ、ビチャビチャに秘薬かけとる》
《そりゃかけるだろ、使わなかったら死ぬやん、あの傷》
《腹に穴が開いたらなぁ》
《メシアの方も、腕再生させたか》
《しかし、いったいなにが起きてる??》
《!!??》
《!!!!》
《!!》
《!?》
《恋たんのことも助けてー!!》
《おわ、スネークが前衛に出た?》
《あの触手で応戦しとる》
《待て待て待て、ほんと何と戦ってんだよ!?》
《モンスターだろ??》
《遠くから狙撃されてるっぽいんだよな》
《しかも、変なのが魔法が展開された形跡が無いこと》
《おい、誰でもいいからさっきの動画検証しろよ!!》
《SNSで、検証してるやつおるぞ》
《マジか!》
《はえーよ》
こんなコメントの群れの中で、冷静に今起きていることを理解してる者達がいた。
スレ民である。
《おやまぁ》
《珍しい》
《久々じゃね?これ??》
《恋って子、運がいいのか悪いのか》
《恋の頭吹っ飛ばしたの、狙撃銃だな》
《スレ主の腕を吹っ飛ばしたのは、あれすぐ消えたけど小ちゃい魔法陣が展開してた》
《消えるの早かったけど、スネークの腹に穴を開けたのも、魔法陣だった》
《スネークとスレ主に展開されたのは、術式構成がそれぞれ違ったぞ》
《違ったのもそうだけど、モンスターが使うような単純なのじゃなかったな》
《複雑に編まれて構成されてた》
《んじゃ、確定だな》
《(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-》
《複雑な術式使えるの、人以外だと魔族だもんな》
《で、本来なら滅多に現れないはずなのが複数出てきてる、と》
《こんだけ条件揃えば、確定だな》
これらのコメントに、とある視聴者が気づいた。
ダメ元で、その視聴者は疑問を書き込んだ。
《なにが、確定なの??》
その疑問は、コメントの群れの中に埋もれ、流されてしまう。
けれど、スレ民の1人がそのコメントに気づき、答えを書き込んだ。
《魔族のスタンピード♡》
その答えは、思いのほかに目立った。
SNSのトレンドワードが一気に書き換わる。
そして、堂々のトレンドワード一位となったのだった。