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とりあえず、解散となった。
帰路についた恋を見送って、すぐに冬真は紙袋を取った。
それから、樹海の中を歩く。
歩きながら、携帯端末で掲示板に書き込みをする。
今後のことを軽く告知するためだ。
スネークに相談していないが、事後報告でいいだろうと勝手に決める。
書き込みを終えて、気づいた。
「そういえば、スネークが書き込みしたの最初だけだったな」
その後、何故か書き込みが途絶えてしまった。
彼女もパートをしているので、書き込みが途絶えてしまったのは、それが理由かもしれない。
配信していた動画のコメント欄もついでに確認しようとする。
しかし、まだメンテナンスは明けていなかった。
代わりにSNSで反響をエゴサしてみる。
「あー、なるほど」
どうやら、ゴーストリーマンからもらった紙袋効果で、スネークのパート先が大変な事になっていたらしい。
スネークは、綺羅星屋のパートリーダーである。
「たしかに、あそこのブランデーケーキは美味い」
ずっしりしっとりしていて、程よい甘さのブランデーケーキだ。
初めてバベルを攻略した時、スネークからお祝いにともらったことがある。
「でも、俺はあんぱん派なんだよなぁ」
スネーク達に保護された時、差し出されたのが綺羅星屋のあんぱんだったのだ。
あの時夢中で食べて以来、好物になった。
でも、住んでるアパートからは距離があるのと、ダン専とは反対方向なので気が向かないと買いに行かないが。
懐かしんでいると、着信があった。
スネークからだ。
『おっすー。
配信、大反響だったっぽいな』
勝手にゲリラ配信したことは気にしていないようだ。
「まぁ、うん、それなりには。
それで、ちょっと報告なんだけど」
冬真は今後の配信企画についての提案を、スネークへ話す。
『あー、うん、りょーかいりょーかい』
冬真が勝手に恋と約束したことを、スネークは気にした風もなくそう返した。
それから、軽く配信予定についての相談をした。
ざっくりと今後のことが決まった。
『じゃ、そういうこ、』
スネークの言葉の途中で、なにやら電話の向こう側から男性同士の言い争う声が聞こえてきた。
『連盟に目をつけられたじゃないか!!』
とか。
『いいだろ!?宣伝になったんだから!!』
とか。
どうやら宣伝云々言ってる方は、電話越しではあるが声からしてゴーストリーマンのようだ。
『いきなり混み始めたから何事かと思っただろ!!』
『リオちゃんがシフト入ってくれたから良かったものの!!』
なんか色々聞こえてくる。
ちなみに、【リオ】というのが、スネークの名前である。
冬真は、彼女と出会って暫く【スネーク】呼びをしていたので、それが定着してしまいずっと【スネーク】呼称している。
『あー、店長達が喧嘩してる。
止めるかぁ。
んじゃ、詳しい打ち合わせは明日の夜ってことで』
そう言って、通話は切られた。
そして、宣言通り次の日の夜にスネークとの打ち合わせとなったのだが。
てっきり携帯端末のリモート機能を使うかと思っていたのに、スネークは冬真の住む部屋にやってきたのだった。
それも、綺羅星屋が販売している商品がどっさり入ったダンボールを持って現れたのである。
ちなみに、蛇マスクはしていない。
銀髪に紅い瞳をした超絶美人は、ニコニコと笑いながらダンボールを見せつつ、
「店長から宣伝してくれたお礼だってさー。
これ食いながら打ち合わせするぞ」
なんてのたまった。
冬真としてはあの言い争いを聞いたあとなので、ちょっと微妙な気持ちだったけれど、気にしないことにした。
美味しいものが美味しいことには変わりないのだから。
打ち合わせのあと、スネークは帰るのが面倒だからといつもの様に泊まっていった。