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ちなみにここで、トレンドワード一位がまたも塗り変わった。
トレンドワード一位は、【キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!】であった。
剣と剣がぶつかり合う。
それは、火花が散りそうなほど激しいぶつかり合いだ。
そんなぶつかり合いを演じつつ、冬真は倒れた恋の死体から距離をとる。
キールとの戦闘で、彼女の体の損傷をなるべく減らすためだ。
《いけー!!》
《殺れ、殺れー!!》
《ktkr》
《スゲェ》
《( ゜д゜)す、すげぇ…》
《Σ(゜Д゜)スゲェ!!》
《恋たん、蘇生させてー!》
《とりあえず、キール倒してから蘇生させんだろ》
《がんがれ!!》
《異能で攻撃しないんか??》
《そういや、さっきから物理攻撃ばっか??》
《剣で殴りあってるようにしか見えん》
《時々、お互いの姿が消えるな》
《いっけーー!!》
《これ、恋が無事でも入り込むの無理だっただろ》
《←(σ゜∀゜)σそれなッッ!!!》
《魔族が他の魔物とレベチすぎる》
《メシアが化け物過ぎんだろ》
《知ってたはずなのに、あらためてメシアのヤバさがわかる》
《ちょい、待てよ?メシアでこれだろ?》
《メシア育てたスネークって、どんだけ化け物なん?》
《それ言ったら、考察厨だって化け物ってことになるじゃん》
《殺れ、殺れー!!》
《いけ、ころせー!!》
化け物同士のぶつかり合いに、コメントも白熱していく。
元々、そんなに治安がいい方ではなかったのがさらに悪くなってしまった。
しかし、一方で、
《考察厨も化け物←(σ・ω・)σそれな》
《スネークの化け物具合が知りたい》
《つーか、ほんとなんで魔法使わないんだよ?》
《魔法使ったら一発だと思うんだけどな》
という冷静なコメントもあったりするのだった。
《あ、間合いとった》
《距離とったな》
《仕掛けるか??》
《wktk》
冬真はタイミングをはかっていた。
というのも、魔族には何度も煮え湯を飲まされてきたのだ。
冬真の成長を面白がったスネーク達が、エレベーターを使って900階層まで彼を連れてきて、腕試しをした事があった。
その時に初めて遭遇した魔族が、このキールであった。
初戦にて、冬真は為す術なく殺された。
(初めて勝った時は、利き腕と左足もってかれたんだよなぁ)
そう考えれば感慨深くもなる。
いまは、対等に剣を交える程度には強くなったということだ。
剣を構えなおし、
「炎の魔弾!!」
剣先にいくつもの炎の玉が出現する。
それを剣で打ち飛ばす
ちゅどちゅどちゅどん!!
打ち飛ばされた炎の玉は、キールに向かって飛び、直撃した。
《当たった!》
《どうだ?!》
《直撃……》
期待のこもったコメントが流れる。
爆煙の中に、揺らめく影があった。
《あ》
《あっ》
《!?》
《?!》
《!?》
《!?》
《!?》
《!?》
《!?》
《!!??》
《おわ、マジか》
《無事じゃん》
《傷一つついてない》
《!!?》
《!?》
《たおれて、ない?!》
《死んでないじゃん》
《ダメージ受けてないな》
《魔族をそんな簡単に倒せるわけないだろ》
《←お前考察厨だな》
《←何故バレたし》
《←なぜバレないとおもったwww》
「やっぱ、無理かぁ」
考察厨もだが、冬真もこれだけでキールを倒せるとは考えていなかったようだ。
キールが片手で剣を構え、戦闘態勢に入る。
空いているもう片方の手で印を組む動作をした。
それを見て、紙袋で覆われていた冬真の顔が青くなる。
「もう?!マズイマズイマズイ!!」
《ん?》
《どした??》
《なんか、メシア焦ってる??》
視聴者のコメントの通り、冬真は焦った。
その意味を全て理解出来たのは、考察厨だけだった。
《がんばれがんばれ♡》
どうしたどうした、というコメントが流れていく。
その中に混じって、考察厨が書き込んだ楽しそうな【がんばれ】というコメントが流れて行った。
直後。
「断罪と処刑の剣」
そんなキールの呟きをドローンは拾っていた。
《……え?》
《は、え?》
《いま、しゃべった??》
《しゃべったぁぁあ!!??》
《おおおおお?!》
《喋れるんかワレェ!!!!》
《喋ったァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!???》
《!!!!》
《喋れるのか?!》
《!?》
《!?》
コメントが驚きの弾幕で染め上げられる。
そんな中、動画内の異変に気づいた者がいた。
《え、あれ?》
《なぁ、メシア膝ついてないか?》
《いや、待て》
《片足がないぞ?!》
《え?》
《え!?》
《あ、ほんとだ》
《うそやろΣ(゜д゜;)》
冬真の片足が消し飛んでいた。
左脚だ。
バランスを崩して、右足を立てつつ剣を支えにしてなんとか倒れずにいる。
「やっべ、これじゃ俺も他人のこと言えねーわ」
その顔は、紙袋のしただったけれど、それでも笑っていた。