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《うわ、グロ》
《グッロ》
《グロいな》
《恋たん、死ぬな!》
《そら、がんばれがんばれwww》
腹の破けた部分を抑えて、恋は着地した。
同時に、蹲る。
「そら、ぶっかけておけ」
なんて言って、冬真は恋へ万能薬を一本投げてよこす。
「ありがとう」
恋は激痛に耐えながら、傷口に豪快に万能薬をぶっかけた。
あっという間に傷が塞がる。
飛び出ていた内臓も、元通りである。
破けた服はそのままなので、肌が見えている。
《慣れてるなぁ》
《さすが、メシア》
《さすメシ》
《さすがやなぁ》
《メシアだからな》
「達磨になりながら進んだら、誰でも慣れる」
《( ˙꒳˙ )ヒュッ》
《言葉の重みが違う》
《達磨にされたんか》
《ダルマになったんか》
《ダルマ……》
《ダルマかぁ》
《お、oh......》
《oh(´・ω・`)...》
《oh…(´ ゜ω゜`)》
《ダルマねぇ》
「ギロチンだかの都市伝説で、首を落としたら即死するってのあるけど、あれ嘘だからな。
少なくとも、俺は意識もあったし耳も聞こえてた」
《え、ちょちょちょやめてやめて(´;ω;`)》
《やめてよぉぉ、そういう話は》
《ラヴォアジエの伝説か》
《あー、まばたきのやつね》
《←まばたきの実験諸々は、現代と違って医学諸々未熟だからいわれてるやつ。現代だと否定されてる》
《まばたきが起こるのは、必要な血液が循環しなくなって痙攣するからとかなんとか》
《絞首刑の方が人道的らしい》
《苦しみが少ないって言う点では》
《←ケースバイケース、絞首刑の時に落ちる床の穴が開くタイミング間違うと、舌を噛んだりすることもあるらしい》
《あとは、絞首刑のための縄をコツを意識して死刑囚にセッティングしないと悲惨なことになるとか聞いた》
《←キチンとしてないと死刑囚の頚椎が伸びて、遺体の首が伸びたり首がきれて大出血する》
《でも、ニワトリとか拘束せずに頭を落として締めると、体だけ動いたりするんだよな》
《はたして、生きてるとはなんぞや??》
《急に哲学になったwww》
《ニワトリだけじゃなく、ゴブリンやオークだってたまにそういうのいるだろ》
《いるいる》
《頭落としたのに、体だけ動くのいる》
《でも、それだと体は即死しなかったってことで頭は即死したってことにならないか?》
コメントがだんだんマニアックな方へ移行する。
しかし、冬真と恋はスライムとの戦闘でそんなのをいちいち読むことは難しかった。
視聴者の一部は戦闘をみたいので、コメントをオフにしている。
しかし、マニアックな雑学は続いていた。
《そもそも、絞首刑だって即死といえば即死だけど、意識ない状態で心臓止まるまで刑務官に観察されるからな》
《え、そうなの?》
《首の骨が折れて即死するって聞いたけど》
《そもそも即死っていうのが、事件事故によって、短時間のうちに亡くなったことを言うんだよ、だからギロチンや首吊り、事故で短時間のうちに亡くなったら即死っていわれる》
《24時間以内なら突然死らしい》
《へぇー》
《絞首刑に限って言えば、落下直後の死刑囚は意識ないけど心臓が動いてる状態だからな、だから生きてるとも言える》
《十数分くらい、死刑囚が死んでいくのを刑務官が見守るんだよな》
《怖い怖いカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ》
《なんでおまいら、そんなこと知ってるん??》
《世界には、いろんな奴らがいるから》
《動画はいろんな奴が観てる》
《探索者もいるし、一般人も観てる》
《動画やテレビ番組ってのはそういうもんだ》
《玉石混交?》
《玉石混交とは、なんか違う気がするwww》
そんなコメントが流れていく中でも、戦闘は続いていた。
と言っても、頃合を見計らって恋が指をパチンと鳴らして、スライムを潰したため終わったが。
戦闘が終わった直後、冬真は周囲の気配を探りつつコメントを確認した。
コメントに返答するためだ。
これは、動画投稿を始めてから、ほかの動画を参考にして学んだことだ。
ほかの動画投稿者たちは、戦闘しつつこう言ったことに楽々と応じている。
掲示板実況とはまた勝手が異なるのだ。
掲示板実況の場合、書き込みはたしかに流れていくが確認は画面をスクロールすることで簡単に確認できる。
しかし、スネークが動画を投稿するために選んだ動画サイトは、打ち込まれた文字が右から左に流れていくところだ。
ほかの動画サイトだったら、別の仕様になっていてコメント欄が別にありそこを確認できる。
けど、このサイトは違った。
コメントの一覧は、別で確認できるようになっている。
冬真はその一覧を開き、戦闘で見逃したコメントを確認しする。
「コメント確認した。
へぇー、じゃあ俺が達磨にされたり首チョンパされて、しばらく意識があってもすぐ死んだのは、即死扱いになるのかー。
じゃあ、即死でいいんだ」
勉強になるなぁ、と冬真は呟いた。
《勉強w》
《勉強かぁwww》
《勉強、勉強ねwww》
「知らないことを知るのは楽しいじゃん。
あ、でもこれでちょっとわかったかも」
《わかった?》
《なにがわかったの??》
「魔族のこと」
《???》
《?》
《??》
《?????》
クエスチョンマークの弾幕が流れていく。
けれど、それを彼が説明するのは魔族と遭遇してからだ。