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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
お人好し掲示板実況者と名家出身の女の子
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なんで恋と一緒にダンジョン探索、もとい、ダンジョン散歩をしているのか?


この問いは、動画視聴者達からも動画コメントにて数多く書き込まれていた。

一部だけ紹介すると、


《コラボ動画じゃないの?》

《恋は、動画投稿していないよね?》

《なーなー、なんで恋も一緒なん??》

《デート配信ですね》

《チューしないのか?( っ¯ ³¯ )っ~♡》


こんな感じで、動画コメントは純粋な疑問による書き込みもあれば、下世話なものまであった。

ちなみに、この2人はそんな関係では無い。

流れていくコメント群を、恋は自分の携帯端末で確認する。

それから、隣を歩くスレ主を見た。


「なんというか、すみません」


「なにが?」


「私の用事に付き合わせてしまって」


「いいのいいの、どうせブラブラ散歩するつもりだったし。

むしろ、俺の散歩に付き合ってもらってるようなもんだから」


さすがに、撮影してるのでこうなった経緯は伏せている。

表向きはあくまで、スレ主こと冬真が散歩がてら、ダンジョンのはしごをしていたところで、偶然にも恋と遭遇した、ということになっている。

トレンドワード入りしている紙袋が、皮肉にもこの唐突な偶然の出会いを裏打ちしてくれていた。

しかし、納得しない視聴者もいるのである。


《そうかなぁ??》

《偶然、ね?》

《なんかヤラセっぽい》

《メシア、もしかして、なにか探してる?》


なんなら、勘づいている視聴者のコメントも流れていく。

しかし、さすがに探し物をしているのが恋だとは考えていないようだ。

それもそのはずで、恋は自分の力試しのために【バベル】に挑戦しているとうけとられているからだ。

恋としては、その方が都合が良かった。

一応、秘密裏に動いているのだから。

しかし、助けてもらった手前、スレ主には本当のことを説明した。

そして、出来ることなら、自分を助けたことを含め内密にしてほしいとお願いしたのである。

この時に話の流れで、普段なら絶対話さない家庭事情も説明することとなった。

スレ主は黙ってそれらを聞き、しばらくぼんやりと携帯端末を操作していたかと思ったら、こう提案したのである。


『じゃあ、散歩ついでに付いてってもいいか?

というか、暇つぶしになるからこの散歩、配信してもいい??』


と。

正直、意味がわからなかった。

なんで、そんな話になるのか、本当に意味がわからなかった。

続いて、こんなことを言ってきた。


『せっかく助けた君に死なれたら、俺が嫌だ。

俺なら、バベルのナビくらいならしてあげられるし』


恋はすぐに、その言葉が弱い人を見捨てておけないという意味だということに気づいた。

思うところはあったものの、恋は言葉を飲み込んだ。

恋は独りでここに挑んで死んだ。

だから、スレ主の同行を許したのである。

もちろん、道案内を申し出てくれただけが理由ではない。

スレ主は彼の師匠的な存在へ、恋の探し物について心当たりは無いかたずねてくれたのである。

すると、恋が探している物、【賢者の書】は存在しないことがわかった。

スレ主曰く、おそらく別のアイテムと間違えているのだろうということであった。


「…………」


恋は、流れていくコメントを見て、それからスレ主を見た。

とある和洋菓子店の紙袋を被った彼の視線は、携帯端末の画面へと注がれている。

やがて、恋にしか聴こえない声でスレ主は言った。


「俺の探し物ってことにしてもいい?」


恋は、小さく顎を引いた。

それを確認して、スレ主はドローンに向かって、


「よくわかったなぁ」


そう口にした。

途端に動画コメントが、


《当たり?》

《おや、当たったん??》

《大当たりー!》

《当たり?》

《当たりなんだ》

《当てたやつおるwww》


こんな感じで次々と書き込まれたものだから、【当たり】の弾幕となってしまった。

その弾幕も落ち着いた頃、


《その探し物ってなに?》

《なにを探してるの??》

《探し物kwsk》

《なに探してるん??》

《メシアが探してるものが気になりすぎる》

《捜し物の詳細はよ(ノシ 'ω')ノシ バンバン》


当たり前だが、探し物の詳細について訊ねるコメントが書き込まれ流れて行った。

苦笑して、冬真はそのアイテムの名前を口にした。


夢幻絵巻(むげんえまき)


それが、スネークが嘘八百を並べ立てた架空アイテム【賢者の書】、その元ネタにしたアイテムの名前であった。

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