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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
お人好し掲示板実況者と名家出身の女の子
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盛大なため息を吐かれて、なんならガチで冬真から嫌がられているとは知らず、考察厨はこう書き込んだ。


《とりあえず、話をすすめようじゃないか》


その書き込みに、ほかのスレ民も頷く。


《そうだな》

《(。_。(゜д゜(。_。(゜д゜ )ンダンダ》

《で、どこまで話したんだっけ?》

《つーか、なんの話だったっけ??》


冬真がその質問に対して書き込む。


《賢者の書ってアイテムについて、恋が探してるみたいなんだ。

でも、俺はこのアイテムについて何も知らない。

いや概要については、さっき恋から聞いたけどさ。

一部のスレ民は、このアイテムについて知ってるみたいだな。

知ってるなら、それについて、情報提供してほしい》


《あ、あー、まぁな》

《どうする?》

《スネークから説明されてないみたいだけど、まぁ、いっか》


そこから、事情を知っているスレ民が説明をした。

【レンフィールド】での件で、現在配信活動を休んでいる雪華が管理局にて、尋問されたこと。

その際、雪華の姉である特定班が妹を守るために、現れたこと。

さらに、リモートではあるもののその場にスネークも参加したこと。

それらを説明されて、なにも聞かされていなかった冬真は三度目の盛大なため息を吐き出すこととなった。


「なにやってんだ、あの人たち」


冬真のつぶやきと、


《おもしろいことしてんな、アイツら》


考察厨の書き込みは同時だった。


《面白いというか、ややこしいだろ》


そんなスレ民のツッコミはとりあえずおいておく。


《えーと、とりあえず話を整理しようか?》

《整理っていうか、あれだろ、明らかに恋は家からの指示だか命令で、スネーク達がついた嘘八百の【賢者の書】をさがすためにバベル目指して来てるだろ》

《恋の実家の楫取家からしたら、表向きはアレだけど自分たちが実質占有してたダンジョンに侵入されてるわけだからな》

《そりゃ、おもしろくないし、なんならさらに技術や研究のために【賢者の書】をほしがるわな》

《けど、バベルは今のところ攻略できる奴なんて限られてるわけで》

《ほとんどいないって言っても過言じゃないだろ》

《いたら速攻でいろんな組織が囲うしな》

《国としても囲われてる探索者がいるって話だが、どこまで本当か》

《居たとしても、バベルをちゃんと攻略出来てるわけじゃないし》

《管理局が派遣する特殊部隊だって、実力者揃いの精鋭だが、そいつらでさえ攻略出来てないしな》

《拾えるアイテムも、網羅されてるわけじゃないし》

《嘘を証明できないわけで》

《ぶっちゃけ、スネークのついた嘘が悪魔の証明になったパターンだな》

《賢者の書が無いのを証明するには、バベルをくまなく調べて無いことを確認しなきゃいけない》

《つまり恋に本当のことを言ったところで信じるかどうかわからないし、信じなかったら無いことを証明するしかないけど》

《そんな義務は、スレ主には無いしな》


はてさて、どうするどうする、とスレ民がある意味盛り上がる。

冬真としては、おそらく恋に真実を告げたところで信じないだろうと考えていた。

というのも、スレ民の予想通り恋は楫取家の当主である父親から直々に命令されて、ここに来ているのだ。

【賢者の書】という架空のアイテムを見つけるだけみつけてこい、と。

けれど、彼女はそれに失敗した。

ダンジョンの難易度のこともあるが、本来ここは一人で挑戦するような場所ではないのだ。

初挑戦ならなおのこと、複数人で挑戦しなければバベルにまでたどり着けない。

彼女の説明から、本当は楫取家に所属しているほかの探索者が同行するはずだった。

けれど、彼女の兄がなにやら邪魔をしたらしい。

この兄は、恋とは腹違いの兄とのことだ。

詳しい家庭事情は知らないが、恋の家も中々複雑なのは察せられた。

恋の兄は、次期当主候補の恋のことを憎んでいる。

そのためおそらく今回の話を聞いて、死んでもらおうと考えた、というのが恋の想像だった。


『次期当主候補、その最有力者であり実力もじゅうぶんなのだから、一人でバベルを攻略できなくてはならない』


と、彼女の兄は父親へ言ったのだ。

恋の父親がそのときどんな風に、この言葉をとらえ考え、そして今回のような命令をだしたのか、正確なところはわからない。

けれど、もしかしたら女風情が、という考えがちらついたのかもしれない、と恋は言っていた。

かなり保守的な考えがまかり通っている家らしいので、そういう考えに父親が至ったとしても不思議では無いというのだ。

それなら、そもそもダンジョン攻略を止めそうなものだ。

なぜなら子を産む、という役目を重視しそうだろうと思われるからだ。

もしかしたら、彼女の父親はそれなりの期待を、自分の娘に抱いているのかもしれない。

そう考えるなら、今回の命令も少し納得できる気がした。

しかし、である。

それはそれとして、傍目からみると彼女はとても困っていた。

そこに、冬真は過去の自分を重ねた。

泣きながらダンジョン内をさ迷った、最初の自分。

なんとかしてやりたいが、なにせ探し物が架空のアイテムだ。

どうにもできない。

そこに、考察厨が書き込んだ。


《まぁ、賢者の書は存在して無いからな。

無いもんはどうしようもない》


その書き込みに、ちょっと引っかかった。

考察厨は、ない時は無いとはっきり書くタイプだ。

この場合なら、【賢者の書なんて存在してない】と書くはずだ。

けれど、考察厨はこう書いている。


【賢者の書()存在してない】


つまり、これは……。

冬真の指が画面を撫でる。


《もしかして、ほかのアイテムならあるのか?》


冬真はそう書き込んだ。

画面の向こうで、考察厨がニヤついたように感じた。


《スネークが嘘をつくとき、あいつは嘘に本当をまぜる》


それが考察厨からの返答だった。

つまり、賢者の書は存在していないが、類似のアイテムなりがある、ということだ。


《そもそも、ゼロから有を生み出せるほどスネークは天才じゃない。

絶対ベースにしたアイテムなり技術なりがあるはずだ。

つまり、そういうことだ》


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