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雪華の活動休止は、それなりに世間の話題をかっさらった。
けれど、さらに三日も経過すると次々に新しい話題が出てきて人々の関心はそちらに向くのだった。
それでも、そこそこに世間は騒がしく、けれども穏やかであった。
スレ主こと、冬真もスネークとともにダンジョン配信を続けている。
動画は相変わらず人気であった。
ほかのダンジョン配信者とのコラボ企画も盛況だ。
しかし、冬真としては配信より純粋な趣味としての掲示板実況をやりたくなりつつあった。
その欲に、彼は素直に従った。
「そんなワケで久々に掲示板実況だ!」
携帯端末が冬真の声を拾い、建てたばかりの掲示板へ書き込みがされる。
反応はすぐに来た。
《およ?》
《あ、メシア呼びされてるスレ主じゃん!》
《もう、掲示板実況には戻ってこないと思ってたぞ!!》
《スレ主、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!》
《あ、スレ主だ》
《戻ってきたんか、ワレェ(歓喜)》
《炎上の中心だったなー》
《火消し活動乙》
《今回は掲示板かー》
《あれ?でも、今後の活動に掲示板実況なんてあったっけ??》
「無い。まったくの趣味」
《お、おうwww》
《マジかwww》
《非公式かいwww》
掲示板は大草原となった。
「あ、そーだ!
思い出した。
お前らに聞きたいことがあったんだ」
《聞きたいこと?》
《なになに??》
《わざわざ聞きたいことがあるとは、いったいなんだ??》
「雪華を玩具にしてるやつ、いるだろ??」
《へ?》
《雪華?》
《あの子、活動お休み中でしょ?》
《なんでここで雪華??》
「アイツが活動休止する前に、お前らと接触したみたいでな。
お前らスレ民に訓練してもらうとかなんとか言ってたんだ」
《へ?》
《そうなの??》
《知らんなぁ》
《雪華みたいな子が玩具にねぇ?》
《物好きなスレ民もいるんだな》
スレ民の反応は様々だ。
しかし、しらばっくれているのか、はたまた本当に心当たりが無いのかはわからない反応である。
「で、俺の名前がバレてた」
《え!》
《マジかwww》
《ウケるwww》
《スレ主、身バレしたんかwww》
《んー、その割には騒がれてなくね?》
《雪華はスレ主の正体は知ってるけど、バラしてはいないってこと??》
《たぶん、そういうことなんだろ》
「怒らないから、俺の正体バラしたスレ民、正直にいいなさい。
今ならバックドロップで許してやるから」
《激おこやんけwww》
《あの泣き虫くんが、成長したなぁ》
《お姉さん嬉しい(´;ω;`)》
《お兄さんも嬉しい(´;ω;`)》
《(⊃-^)ホロリン》
《うーん、雪華は自力でたどり着いたんじゃね?》
《だとしたら、認識を変えなきゃな》
《だなー》
《それな( ´-ω-)σ》
《つーか雪華と連絡先交換したりしてないの??》
「してるけど、携帯端末の電源が入ってなくて連絡取れないんだよ」
《……え?》
《スレ民が関わってるのに??》
スレ民達が戸惑った。
「そういうこと」
《え、ちょっと待って?》
《もしかしてガチで雪華に手を貸してるスレ民いんの??》
《これ、アレだよな?
雪華が普段使ってる端末の電源切って、代機用意して掲示板実況させつつ、訓練してるやつだよな?》
《スレ主の時にやってたやつな気がする》
《たぶん、それなんだろうな》
「俺もそう考えてる」
《なにか問題でもあるの??》
「問題じゃなくて、不思議なんだよ。
お前ら、雪華みたいなタイプ苦手だろ?
玩具にもしたくないはずじゃん。
でも、雪華は玩具になってる。
普通に、気になるだろ」
《まぁなwww》
《でも、誰も書き込まないなら分からずじまいだろ》
「ま、それもそうだ」
真相は、雪華の休みが終わってからでも聞けるだろう。
そう思い直して、冬真は切り替えることにした。
久々に趣味としての実況だ。
楽しまなくてはならない。