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コメントへ、冬真は楽しげに返す。
「さて、どこでしょう?」
《Cランクダンジョンなのはわかってるんだよ》
《今の所、モンスターが出てないんだよな》
《モンスターが出てきても、Cランクダンジョンに出るのはたかが知れてるし》
《出てくるモンスターでダンジョンを特定するのは無理だと思う》
《現状、手がかりはこの光景か》
《きれいだよなー》
《ヒントほしぃ》
《確認だけど、これ、国内ダンジョン?》
「国内のダンジョンだ」
コメントに答えつつ、冬真は歩を進める。
《探索依頼ってことだけど、マッピングしなくていいの?》
《そーいや、探索が進んでいない不人気ダンジョンなんだよな》
《地図は無さそうだな》
「地図作るの苦手なんだよ。
だから、どんなモンスターが出るのかとか調べてリスト化するんだ。
あと、スタンピードの兆候がないかとかな」
冬真の説明に、蛇が口を挟んだ。
「だよなー、昔からずっと地図だけは作るの苦手だもんなー、お前」
「うるせー」
《何この相棒感》
《爬虫類野郎とメシアの関係、めっちゃ気になる》
《ただの協力者、じゃなさそうなんだよなぁ》
《いわゆる、深い仲だったりして》
今度は蛇がケラケラと笑いながら、コメントに答えた。
「深い仲、なんて久々に聞いたな。
いや、この場合は読んだ、かね。
そんな仲じゃねーよ。
まぁ、お手てを繋いだ事くらいはあるけどな」
《え、どゆこと?》
《ザワ……ザワ……》
動画内に流れるコメントがザワつく。
しかし、冬真はと言えばウンザリした声音でそれに返した。
「あー、うん、お手て繋いだよねー。
繋がざるをえなかったもんねー」
《おい、マジで何があったんだ二人に》
《恋人同士って感じでもなさそうなんだよなぁ》
憶測が動画内で飛ぶ中、冬真が答えを提示した。
「初めてさー、Sランクダンジョンに放り込まれた時に、助けに来てくれた奴の一人でさー、コイツ」
「懐かしいなぁ。
迷子になって、エーンエーンって泣いてるスレ主の手を引っ張って保護したんだよ」
《メシアの過去が気になる》
《それな、めっちゃ気になる》
《初めてで、Sランクオーバーのダンジョンに放り込まれるとか、何があったんだ、マジで》
こんな雑談でも、今世界中が注目している探索者だからだろう。
動画の視聴者数、同時接続数はあっという間に一万を超えていた。
それどころか、もうすぐ五億を超えそうであった。
世界中で、配信を見られる環境にあるもの達が、こぞって見ているのだ。
冬真のことを、見ているのだ。
あのクソふざけた馬マスクの下の顔が知りたい、と。
あのクソふざけた馬マスクの正体が知りたい、と。
前人未到のSSSSSランクダンジョン、その5階層以降をまるで散歩をするかの如く探索した、少年のことが知りたいと。
世界中の人間が興味津々で注目しているのだ。
「ねー、なにがあったんだろーねー、ほんと」
冬真は、棒読みでコメントに答えた。
その時、ようやくモンスターが出た。
《あ、スライムだ!》
《でも、普通のスライムだな》
《普通のスライムだけど、メシアのあの剣さばき見られるぞ!!》
《(*・ω・*)wkwk》
ただのスライムの出現でも、メシアの剣さばきが見られるとなってコメントが盛り上がる。
しかし、冬真はその期待をいとも簡単に裏切った。
剣は使わなかったのだ。
代わりとばかりに、
ゲシっ!!
と、蹴りを食らわせた。
《蹴ったwww》
《スライムさーんwww》
《スライム、ゴムボールみたいに跳ねて、溶けた、死んだか》
《つまらない物を蹴ってしまった》
《スライム:あ、ありのまま今起きたことを説明するぞ》
《スライム:なんか、蹴られたと思ったら死んだ件》
《うーん、スライムだけじゃダンジョンの特定はできないなー》
《(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-》
こんな感じで、ズンズンズンズンとダンジョン探索が進んでいく。
動画も進んでいく。
このダンジョンは、地下に行くダンジョンのようで階段は下へ下へと続いていた。
遭遇したモンスターも、低ランクモンスターばかりである。
それらを倒し、持ってきたメモ帳に記録していく。
ついでにモンスターが落とした道具や素材も回収する。
そして、視聴者が気づいた。
《もう二時間経過しとる》
《ほんとだ》
《今、何階層?》
《10階層くらいだったかな?》
《エリアボスとかいないの??》
《そろそろ出ても不思議じゃないんだけど、見ないな》
《まぁ、必ず遭遇するわけでも無いしな》
《運にも左右されるし》
「喋りながらだとあっという間だよなー」
なんて、冬真が呟く。
蛇もそれに続く。
「それな」
言った直後、蛇が立ち止まった。
そして、不思議そうに上を見る。
一拍遅れて、冬真も上を見た。
《ん?》
《どしたどした??》
《なんか上にあるの??》
ドローンが天井を映し出す。
そこは、ゴツゴツとした岩となっている。
《なんもないぞ?》
《モンスターでも隠れてるのか?》
《いや、待て、なんか聴こえないか??》
《ザワ……ザワ……》
《なんだ?》
《なんか、鈍い音が聞こえる》
コメントがザワつく
《( ; ゜д)ザワ(;゜д゜;)ザワ(д゜; )》
《え、なになに??》
《怖いんだけど》
《Cランクだから、どんなに強くてもドラゴンが出てきたりはしないはず》
「「きた!!」」
冬真と蛇の声が重なる。
その、瞬間。
天井が崩れて落ちてきた。
《え、落盤?!》
《なになになに?!》
落ちてくる瓦礫を、二人は難なく避ける。
瓦礫と共に、人が落ちてきた。
しかし、その落ちてきた人物は危なげなく着地する。
ドローンがその人物を映し出した。
動画に現れたその人物を見て、視聴者達が驚愕する。
《は、え?!》
《なんでこの子が天井から落ちてきたの?!》
《この前Sランクダンジョン攻略した子やないの》
《ニュースで見た子だ》
《ダイナミックお邪魔しますじゃねーかwww》
《ダイナミックお邪魔しますwww》
《たしかにwwwダイナミックにお邪魔してるなwww》
《ダイナミックお邪魔します、草》
《wwwwwwwww》
《www》
《やっべ、ダイナミックお邪魔します、ツボったwww》
降り立ったのは、楫取恋である。
静かに、ただ静かに恋は冬真と蛇の前に立っている。
そんな光景をみた視聴者のコメントが流れていく。
《盛 り あ が っ て ま い り ま し た!》