表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
人がいい掲示板実況者の話
24/117

24

午前の授業が終わり、昼休み。

楫取(かとり)(れん)は、自分の席で弁当をつつきながら携帯端末を取り出した。

表示させたのは、今世間の話題をかっさらっているとある配信者の動画である。

アカウント名【スレ主】。

しかし、ほとんどのもの達からは【メシア】と呼ばれている者の動画である。

全部で十本弱。

全てが十分弱のダンジョン実況の動画だ。


それも生配信されたものではない。


今どき、珍しい予め撮影して編集を加えた動画であった。

ダンジョン実況の配信動画は生配信が主流だ。

というのも、配信者と同じくリアルなドキドキハラハラを味わえるからだ。

恋が生まれる前には、メシアが投稿したような動画が主流だったと聞いたことがある。

しかし、今は生配信にとって代わられてしまった。

メシアと同じ動画を投稿する者が全くいないわけではないが、視聴者数や同時接続数が稼げないので少数である。


「…………」


恋は動画の中の、メシアの戦闘シーンを見る。

何気ない動きを観察する。

それから、窓際の席で購入した焼きそばパンをもそもそ食べている冬真を見た。

まことしやかな噂として、彼がメシアではないか、というものが流れている。

しかし、確証はない。

というのも、冬真は猫背で倦怠感をつねに纏っている。

一方、メシアの方は姿勢がよくキビキビ動く。


彼とメシアが同一人物説が流れたのは、有名な動画配信者【雪華】を助けた時に、彼女の撮影用ドローンにメシアの顔が少しだけ映っていたからだ。

その顔が、冬真によく似ていたのだ。

噂に拍車をかけたのは、メシアが投稿した動画である。

動画の中で、馬の被り物をして顔を隠した彼は直に喋って、SSSSSランクダンジョンの実況をおこなった。

その声が、冬真そっくりだったのだ。

しかし、やはり冬真のキャラとメシアのキャラには乖離があった。

冬真があんなふざけた被り物をして動画なんて撮影するだろうか、という乖離だ。


しかし、それを除けば、


「動きが似てる……」


冬真とメシアの戦闘スタイルが似ているのだ。

冬真が異能、つまり魔法を使ったところは見たことが無かった。

噂では、身体強化しか使えないらしいと聞いた。


しかし、噂は噂だった。


まだ、この専門学校での実技授業では攻撃魔法を使うような授業をしていない。

積極的に使っているのは、一部の者だけだ。

恋だって、授業中では今のところ使った事がなかった。

使ったのは、学校側には内緒でSランクダンジョンに挑戦し、攻略した時だった。


「…………」


「あ、恋さんもやっぱりメシアさんが気になるのかしら??」


隣の席の同級生、それも高齢の女生徒が丁寧に話しかけてきた。

品のある老女だ。

このクラス、それどころかこの学校において最高齢の生徒である。

八十代だと聞いている。


「え、あ、はい」


「今の子達って凄いわよねぇ。

こういうテレビでしかやってこなかったことを、全部自分で出来ちゃうんだもの」


老女は、持参したおにぎりを食べながら、動画を見ている。

それから、


「私もね、うふふ。

孫と一緒にこの前携帯を買いに行ったの」


なんて言いながら、新品の携帯端末を見せてくる。


「もうね、配信実況に夢中になっちゃって。

このお馬さんの動画も見てるの。

おもしろくてねぇ」


「はぁ」


「でね、孫に色々聞いて……ってあら?

なにか、お知らせ??」


「あ、私の方にも……」


言葉の途中で、恋と老女のそれぞれの携帯画面に、通知を設定していたアカウントから動画が投稿された旨の知らせが届いた。


「あらあら、お馬さん、もう新しい動画を作ったのねぇ」


なんて言いながら、老女が慣れた手つきで携帯を操作した。

恋も同じ動画を表示させる。

それは、告知動画だった。

フリー音源のBGMと文字だけの、これまた今どき珍しい告知動画である。

そこには、今日午後六時からとあるダンジョンで生配信をすることが書かれていた。

さらに、ちょっとだけ重要な発表もするらしいとある。


「あらあら、楽しみが増えたわァ」


老女が楽しそうに呟く横で、恋は真顔でその動画を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ