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馬の被り物をそのまま本人画像として登録した、SNSのアカウント。
五分と経たないうちに、登録フォロワーが四百万人を超えていた。
それを確認した冬真の反応はというと、
「え、なにこれ、怖い!」
だった。
今まで、こういったSNSのアカウントは作ってこなかった。
しかし、これが異常であることは冬真にもわかった。
未知の恐怖に震えていると、動画の編集と投稿に携わったスレ民から連絡があった。
改めて連絡先と名前を登録したので、携帯端末の画面には【ヘビ】と表示されている。
なんでも、以前【スネーク】として掲示板ダンジョン実況をしていたらしく。
登録名を聞いたら、そこからとって【ヘビ】にしてほしいと言われたのだった。
[SNSのアカウント確認したかー??]
[したけど、数字がエグい]
[歴史的快挙だからなぁ]
[よく偽物扱いされなかったな]
[動画にアカウントの告知しといたから、それだろ。
まぁ、偽物、成りすましアカウントが出てくるのは時間の問題だが。
見つけ次第対処するし。
でも、アカウントの自己紹介欄のとこに、活動情報用のアカウントで本人の投稿は無し。中身は基本スタッフ(俺)って書いてはおいたが。
まさかフォロワーが四百万超えるとは、驚きだ。
フォロワーはまだまだ増えてるぞ。
あと、それとは別によろしくお願いします、って挨拶も残したが。
そっちの方は、10万いいね、がついた]
なんなら、今日中にフォロワー数が一千万人を超えるかも、とヘビは言った。
[とりあえず、今後の活動について打ち合わせしようぜ]
[打ち合わせって言ったって、基本ダンジョンに潜って実況動画を投稿するだけだろ。
なら、動画の投稿予定日だけ淡々と告知すればいいんじゃないか??]
[まぁ、反響がそこまでじゃなかったらそれでもよかったんだけど]
[なにか不都合でもあるのか??]
[他のダンジョン配信者からコラボの申し込みが殺到してる]
返信を打つ前に、変な声が冬真から漏れた。
「はい?」
メッセージにはヘビの説明が淡々と書かれている。
[まぁ、当然の結果だわな。
ただコラボってなると、顔バレのリスクが出てくる。
主に打ち合わせとかだな]
[ぜってぇ、やんねー]
[そう言うとは思ったよ。
でも、悪い話じゃないはずだ。
配信者もピンキリでな、それこそ人気者同士の配信ってなるとそれだけで話題になるし、視聴者数も稼げる。
多少のリスクは背負わないと、貯金は増えないぞ]
正論だった。
なにしろ貯金残高はゼロ。
これから、もしかしたらいつまた親の借金問題が舞い込むかわからない。
[通常の打ち合わせなら俺が窓口になる。
コラボ相手にも顔出しに関しては交渉する。
要は顔出しNGを了承してくれる配信者にしぼって活動すりゃいいんだ。
なんなら、俺も一緒に配信に出てやろうか??
首突っ込んでるんだ、矢面くらいには立ってやるよ]
そこまで言われたら断れない。
[その分のマージンは貰うけどな]
ヘビも金は欲しいのだ。
当然の権利の主張に関しては、冬真はなにも言わなかった。
むしろ、快諾したのだった。
金で揉めるのは両親の件だけで十分だ。