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冬真が決意を固めた時、動画サイトのメンテナンスが終わった。
動画の続きを見ようと、また視聴者数が増えていく。
《メンテナンス終わってる》
《意外と早かったな》
《メンテナンス終了と聞いて》
《やったー、続き見られる》
《続き続き( ゜∀゜)o彡°》
《やったー、続きだー!!》
《やぁ》
《やぁ》
《うぽつ》
《キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!》
《あ、見られる》
コメントが流れていく中、動画の中の冬真は通称ボス部屋の扉を開け、中に入っていく。
《体育館みたいに広い》
《壁は岩場なのか、ゴツゴツしとる》
《そういや、ボスってどんなモンスターなんだろ?》
《天井高ぇ》
ここで、動画を編集した者からのテロップが入る。
〖BGMがないと雰囲気も糞もないので、クラシックでもどうぞ〗
そして流れたのは、有名なクラシック音楽だった。
《?!》
《?!》
《!?》
《まさかのクラシックwww》
《ラデツキー行進曲www》
《なんでここでクラシックwww》
《ダンジョン実況でクラシック音楽使うなwww》
《www》
《おぅ?!》
音楽とともに動画内に現れたのは、巨大なスライムだった。
どれくらい巨大かと言うと、通常のスライムの大きさがスイカくらいだ。
しかし、今彼の目の前に出撃したボススライムはそれこそ二階建ての建物くらいの大きさである。
《ボスってスライム?!》
《ここで??》
《まさかのスライムで草》
《そういやここまででスライム出てなかったな》
《基本、ダンジョンランク問わずにスライムって出現するもんな》
「スライムがボスってことで拍子抜けした奴もいそうだなぁ。
でも、このスライムが結構厄介でな。
なんでかって言うと……」
なんて言いながら、冬真が巨大スライムへ剣で斬りつける。
すると、剣が弾かれた。
全く攻撃が通らないのである。
《!?》
《!?》
《!?》
《まじか》
《うわぁ、攻撃が通らないのか》
《たしかに厄介だけど》
《でも、こういうモンスターって口の中に攻撃魔法ぶち込んだら倒せるだろ》
《←セオリーだよな》
《いや、口どこだよ??》
ゼリー状のプルプルモンスターには、見た限り口のようなものは見当たらない。
《スライムは基本、体当たりか周りのもの吸い込んで当ててくる》
《待ってれば、そのうち口を開ける》
そんなコメントが流れる。
その間にも冬真の説明がはいる。
「こんな感じで物理攻撃が通じないんだ。
じゃあ、口の中に攻撃魔法ぶち込めばいいだろ?
って考えになりそうだけど……」
冬真はスライムから距離をとる。
それからスライムが、口を開けるのを待った。
スライムは程なくして口を開け、手近なものを吸い込んで冬真へ当ててくる。
土塊や石などだ。
それを冬真はひょいひょいと躱す。
標的から外れたそれらは、あちこちの壁や地面へ当たり、当たった場所を陥没させた。
《ヒェッ》
《やべぇ》
《当たったらイチコロやんけ》
《:(´◦ω◦`):ガクブル》
《((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル》
そこにすかさず、冬真な魔法を撃ち込む。
「炎の魔弾!!」
撃ち込まれた炎の玉は、スライムの口の中に入る。
スライムの口が閉じる。
そして、スライムの体の中で、
ボンッ!!
というくぐもった爆発音が響いてきた。
瞬間、スライムの姿が変化した。
ゼリー状はそのままだ。
しかし、炎をまとっている。
《!!》
《!?》
《!!??》
《うそやろ、おい》
《!?》
《!?》
《!?》
《!?》
《!?》
《!!??》
《( ゜д゜)》
《魔法食べて、その能力身につけやがった……》
《おおお》
《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛》
《え、つー事は?》
《物理→効かない》
《攻撃魔法→食べて自分の能力にできる。ダメージは無しっぽい》
《え、これどうやって倒すん??》
《って、わぁぁぁぁ!!??》
《炎の玉飛ばしてきた?!》
《そういやこういう魔法だったな》
動画の中で、冬真の攻撃魔法と同じもの――無数の火の玉が彼へ襲いかかる。
それを冬真は慣れた様子で、やはりひょいひょいと躱す。
冬真のものより威力が上がっているのか、壁などにぶち当たったそれらは大爆発を起こす。
しかし、ダンジョンが崩れる気配はなかった。
《室内でやる攻撃じゃねーな》
《ダンジョン内を室内って言うなよ》
《室内草》
《室内www》
《やべぇ、室内にジワジワくる》
《え、でも、これどうやって倒すん??》
《あ、スライム元にもどった》
一度、大きな攻撃をしたからかスライムは元のゼリー状へ戻っていた。
「まぁ、こんな感じで食べて変身しちゃうんだ。
つーても、魔法攻撃を一発撃つとこうやって元に戻る。
じゃあ、どうやって倒すのかっていうと……」
《(;゜д゜) ゴクリ…》
《ザワ……ザワ……》
《ザワザワ》
《どうやって倒すんだろ??》
《wktk》
「一寸法師方式」
ボソッと、冬真はそう呟いたかと思うとスライムへ向かって駆ける。
するとスライムがその口を大きく開ける。
その中へ、冬真は飛び込んだ。
《くわれたぁぁあ!!??》
《ちょ、え??》
《ええええええ???!!!》
《メシア終了のお知らせ》
《あ、一寸法師方式ってそういう》
《ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛》
《うわぁぁあ!!?》
冬真は中から斬撃を加える。
そして、スライムが弾け飛んだ。
《おお?!》
《おおおおおお!!!!》
《たお、した??》
《やった、か??》
《←フラグやめぃwww》
《oh(´・ω・`)...》
《あ、メシア出てきた》
《ベトベトかと思いきや、汚れてない》
《スライム倒した!!》
《やべぇwww》
《スゲェwww》
「こんな感じで中から、ただ斬りつけると倒せる。
でも、時間かかりすぎると胃液で溶かされるからスピードが大事だ」
《お、おぅ》
《人間業じゃねーよ》
「さて、それじゃ時間もちょうどいいな。
えーと、ごしちょうありがとうございました」
言わされてる感満載なセリフとともに、動画がブラックアウトする。
動画が完全に終わるまで数十秒弱あった。
その短い時間内にコメントが次々書き込まれ、流れていく。
《88888》
《88888》
《88888》
《8888888888888888》
《SUGEEEEEEE》
《乙》
《攻略乙》
《実況乙》
《お疲れ様でした》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《乙》
《乙》
《え、これで終わり??》
《また動画上げてくれないかな?》
《再生回数やべぇwww》
《同時接続数でもランキング一位とってやがるwww》
《この人、SNSとかやんねーかな》
《SNSやってくれると嬉しいが》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《おいwwwおまいらwww動画のアカウント情報見てみろwww》
《ん?》
《へ??》
《メシアのやつ、SNSのアカウント作ったっぽいぞwww》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《マジか!!》
《チェックしなきゃ!!》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
《88888》
この日、一日だけで投稿された動画は、全て数億から数十億再生という記録的な数字をたたき出した。
その凄まじさは、テレビの速報テロップで報じられるほどであった。
ニュース番組ではこぞって、この事を取り上げることとなり、冬真は一躍時の人となったのであった。