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冬真とスレ民が作り上げた動画は、あっという間に拡散された。
様々なSNSでトレンド入りしていく。
そうしてさらに視聴者数、再生回数を稼いでいくのだった。
最初の動画は十分程度のものだった。
「んーと、あ、そろそろ十分か。
いったん編集でここはカットするっぽいから、また後でー」
一階層を攻略したあたりでタイムアップとなった。
馬の被り物をした冬真が、ヒラヒラと手を振り動画は終わる。
続きの動画は、まだ投稿されていなかった。
動画投稿から三十分が経っていた。
あちこちのSNSや掲示板では、この動画の話題で持ちきりであった。
《メシアの動画やべぇwww》
《動画のアカウント名、スレ主なのに誰もスレ主って呼んでないの草》
《続き早く上がらんかなぁ》
《探索者連盟のホムペ、落ちてんだけどwww》
《野良探索者だから、ホムペには載ってないんだよな、これが》
《声の感じからして、まだ若いよね、十代くらいかな??》
《釣り動画がまさかの神動画でクッソ笑ったわwww》
《それも、いまや懐かしいアナログなパーティグッズ使って顔を隠すタイプだもんなwww》
《某動画の【馬鹿四天王】や【馬鹿十二神将】を彷彿とさせる》
《それな、めっちゃ懐かしかったわwww》
《海外からの問い合わせがさらにえげつないことになってるっぽい》
《探してくれるな、って動画内で言ってるのになぁ》
《やるな、って言われたらやりたくなるのが人のサガだから》
《被り物に【スレ主】と書くくらい、自己主張してるのに、なんで、誰もスレ主呼びしてないんだよwww》
《馬鹿ってつけなければ、四天王や十二神将ってカッコイイ印象受けるよね》
《そうか?》
《俺はダサいと思うなぁ》
《えー、かっこいいよー》
だいたいこんな感じで盛り上がっていた。
この間にも、動画の再生回数は伸びていた。
どんどん、伸びていた。
動画が投稿されて、三十分近くが過ぎた。
その時点で、再生回数は一億回を超えようとしていた。
「…………」
その動画を淡々と視聴している者がいた。
冬真の同級生である、楫取恋だ。
たった十分間の動画を、すでに何度も見返していた。
淡々としつつも、その目には嫉妬から来る怒りが滲んでいる。
ギリっと、血が出るほど唇を噛みしめる。
一方、感情的にその動画を見ている者もいた。
雪華である。
「ふざけんな!!なんであんなヤツの動画が一億再生もしてんのよ?!」
こちらも嫉妬だった。
自分の動画の方が価値がある。
そう思っていた。
たしかに、公式記録は楫取に後れをとった。
それでも楫取とちがって、雪華には動画があった。
苦労して、工夫して、やっとの思いで再生回数と同時接続数を稼げるようになったのだ。
だというのに、初めて動画投稿をした新人にその数字で負けてしまった。
数字は残酷だった。
残酷に現実を見せつけてくる。
残酷に現実を突きつけてくる。
まるで自分の努力が無駄だと言わんばかりに、現実を突きつけてくる。
それが悔しかった。
ただただ悔しかった。
だから、
「……なんで、こんな奴が……。
こいつより、私の方が……」
暗く、低く、彼女は呟いた。
その瞳は動画に向けられていた。