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同じように、世界の書き換えに気づいた者たちがいた。
魔族をバベル外で実際に倒した者たちである。
冬真とリオ、そしてそれに協力したコウに、スレ民たち。
そして、もう一人。
リオのリア友であり、今回彼女へ掲示板上で助言した人間だ。
人間、と言ってもこの者もリオや店長、コウと同じ存在である。
ドピンクの長い髪。
出るところは出て、引き締まるところは引き締まっている、傍目には少し発育のいい少女だ。
掲示板では【星子】を名乗っていた人物である。
本名はエステル。
「……????」
最初、エステルは世界の書き換えるによる衝撃がなんなのかわからなかった。
しかし、程なくしてそのことに気づいた。
何故気づいたのかというと、今いるとある海外の街。
大きな、街。
そこで様々な人が最新のニュースに釘付けになり、話題にしたからだ。
とあるSランクダンジョンにて、攻略者が出たのだ。
文字通り、つい先程まで名前すら知らなかったダンジョン攻略者、つまり探索者の名前が有名になっていたのだ。
通常、Sランクを攻略を出来るほどの強さの者なら、世間的にはともかく、探索者界隈では地味に有名な者が多い。
冬真やスレ民たちのような存在が例外なのである。
最初、エステルはその攻略者も冬真やスレ民と同じ部類の人間なのかと思った。
スレ民が配信事故なにかで、Sランクダンジョンを攻略してしまったのだろう、とそう考えた。
しかし、違った。
街の人々の反応からして、ずっとその探索者はダンジョンを探索をしており、Sランクダンジョン攻略も時間の問題、と噂されていたのだ。
経歴も調べるとすぐにわかった。
探索者だった曽祖父に憧れ、同じ道を歩んだらしい。
その探索者も有名な人物で、海外のバベル級ダンジョンを探索したことがあり、攻略こそ出来なかったものの生きて帰ってきた人物である、とされていた。
しかし、エステルは知っていた。
そんな人物など、本当に先程まで欠片も存在していなかった。
つまり、これは……。
「リオ達の実験の成果、か??」
そのことにすぐに思い至る。
現状、そうとしか考えられない。
「歴史が変わったって、ことだよなぁ」
その呟きは誰の耳にも届かない。
最新ニュースによる興奮とざわめきにかき消されたからだ。
一方、その頃。
世界の書き換えを引き起こしてしまった張本人たちはというと。
もちろんそのことに気づいていた。
樹海の中で、全員が顔を見合わせる。
「これってつまり……」
誰かが呟いた。
「考察厨か、迷探偵がいたらすぐに考えをいってくれるんだろうが。
この中にそのコテハンを使ってるやつ、いるか?」
スレ民の一人が、メンバー全員に問いかける。
該当する者はいない。
代わりとばかりに検証班が発言した。
「自分が立てたスレが消えてる」
「マジか」
そこから今回のメンバー全員で、色々調べてわかったことを合わせて考えた結果、この様な答えが出た。
今、ニュースとなっている海外のSランクダンジョン攻略者。
その曽祖父が、先程倒した魔族であること。
バベルの外にて倒したことで、どうやら彼の魔族となる運命が変わった。
運命が変わったことで、彼の曾孫が誕生し、曾孫はSランクダンジョン攻略者となった。
それは、希望であった。
今回の依頼者である老女の願いを、もしかしたら最高の形で叶えられるかもしれないという。
そんな希望のように、リオや冬真には感じられた。
しかし、問題があった。
このことを広めるべきか、否か、である。
おそらく魔族をダンジョン外で倒すことに直接関わった者にしか、この世界の書き換えは認知できていない。
他のスレ民に話したところで、信じてくれる可能性は低かった。
そのため、一先ずこのことは自分たちだけの秘密にしよう、ということで話はまとまった。
余計な混乱を招く意味は無い。
幸いなことに、ドローン配信されていた動画も消えていた。
本当にこのことを知っているのは、魔族討伐に関わったメンバーと、彼らはまだ知らなかったが一部例外の者たちだけだった。
とりあえず解散となりほぼ全員がその場から去った。
しかし、検証班はその場に残りリオと冬真へ提案した。
「今回の件に関する、スネーク達が受けた依頼。
その魔族を倒すのに、参加したいのだけど」
と、そう提案した。




