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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
伝説リアタイ世代と、掲示板実況者達
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そんな配信を、黙々と見ている視聴者がいた。

冬真の同級生でもある、老女だ。


「…………」


キールと殺し合いをしている人物が誰なのか、老女はすぐにわかった。

声と、そして動き方でわかった。

もう、ずっとずっと昔のことだ。

その動き方を、戦い方を、老女は見たことがあった。

古い古い、記憶。

でも、鮮明で、まるで昨日の事のように思い出せる。


キールと出会うよりも、ずっと前。

七、八歳くらいの時のことだ。

まだ恋も、世界の残酷さも知らず、ただただ楽しかった、楽しいことしか無かった子供の頃。

老女は近所に住む、当時で言うところのガキ大将や友人たちと、大人の真似事をしてダンジョンに潜ったことがある。

そして、出られなくなった。


迷子になったのだ。


モンスターに襲われて、ただ泣くことしか出来なかった。

老女も友人たちも、あちこち擦り傷や切り傷を負って、怖くて、心細くて泣くことしかできなかった。


今のように、モンスターのこともよくわかっていなかった。


ただ、自分たちはここで死ぬんだと、そうどこかで思っていた。

帰りたかった。

家に、帰りたかった。


そんな彼女達を、見つけてくれたのがお姉ちゃん――リオだった。

他にも、おじちゃん――【綺羅星屋】の店長と、今は亡き老女の父親、近所の大人たちが手分けして捜しにきてくれていた。


でも、先に彼女たちを見つけてくれたのはリオと店長だった。

二人に見つけてもらって、とても安心して皆で大泣きしたのを覚えている。

その後、ダンジョンの外まで行く途中で何度か彼らが、自分たちを守るためにモンスターと戦闘した。

その時の2人の動き方は、ずっと脳裏に焼き付いて消えなかった。


そのことを、老女はずっとおぼえていた。

だからわかるのだ。

この蛇のマスクをした者が、リオであると。

二人が、歳を取らない不思議な存在であることを知ったのは、それから何年かしてだ。

ほかの大人たちは気づいていなかった。

老女だけがそのことに気づいた。


でも、当時はそれでも、まだ老女は子供だったから素直に聞いてしまったのだ。


――なんで、おじちゃんとお姉ちゃんはずっと同じ姿なの??――


それに彼らは、老女が子供だからと侮らないで真摯に応えてくれた。


――魔法をかけているからだよ――


幼い彼女は興味をそそられて、さらに聞いた。


――なんで魔法をかけているの?――


それに応えたのは、お姉ちゃんだった。


――捜し物、いや、お姉ちゃんたちの宝物が見つかるまで、天国へ行かないようにするためだよ――


子供相手だったからだろう。

言葉を選びつつ、そう説明してくれた。

お姉ちゃんたちの宝物がなんなのか、くわしくは知らない。

でも、それが見つかるまで、死ぬわけにはいかない。

だから、魔法で歳を止めているのだ、と理解できた。


「お姉ちゃん、だったんだ」


やっぱり、と思った。

最初、この人達が投稿している動画で、初めて彼女の声を聞いた時、どこかで聞いたことがあると思った。

しばらくして、リオの顔が浮かんだ。


そして、この動画だ。

いま配信されているこの動画。


「…………」


老女は、懐かしそうに悲しそうに、そして何かを考えこむようにして、動画を見続けている。



動画の方はと言えば、リオがキールを圧倒していた。

老女はコメントをオフにしていたが、いま画面は弾幕で埋め尽くされていた。


《SUGEEEEEEE!!》

《圧倒してんじゃん!!》

《メシアの先生なだけあるわ》

《ヤベー》

《イケー!!》

《あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!!》

《おおおおお!!!!》

《おおおおおおおおおおお!!!!》

《!!??》

《!》

《!?》

《!!!!》

《おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!》

《キールが魔法使おうとするの見計らって無効化してるな》

《こんなことできるんだ》

《如意棒だからだろ》

《そういや、ダンジョンで見つかる武器って、おとぎ話に出てくるようなの多いよな?》

《そういやそうだな》

《あれ、なんなんだろうな??》


そのコメントが、意識を取り戻した冬真の目にたまたま映った。


「昔、考察厨に聞かされたことがある」


冬真の声をドローンが拾う。


《あ、メシア復活!!》

《考察厨??》

《なになに?》

《何の話だ??》


「ダンジョンで見つかる武器やアイテム、一部が俺たちが想像する架空の武器に、何故か似てるって話」


《メシアの知り合いの考察厨はなんて言ってたんだ??》


リオの戦闘もだが、冬真の話も好奇心を誘っている。

だから、コメントは大騒ぎ状態である。

構わず、冬真はかつて聞かされた話を語った。


「ダンジョンはわかっていないことが多い。

だからこそ、わかっていることで考察という名の妄想仮説を立てるくらいしかできない」


考察というのは推理ではない。

わかっている情報を妄想で埋めて、隙間をその人達なりに解釈する自己満足の遊びだ。

少なくとも、冬真の知っている考察厨はそうとらえていた。

だから、妄想仮説、という適当な言葉をでっちあげて、考察厨は説明してくれたのだ。


「俺の知り合いの考察厨曰く、ダンジョンは世界各地に出現している。

で、その場所、国ごとにドロップできるアイテムが違うんだ」


《そんなの知ってるよ》

《アイテムによっては同じものなのに国ごとに呼称、名称が違うんだよな、たしか》

《←同じものもあるよ》

《まぁ、土地ごとに違うってのは有名な話だ》


「でな?

考察厨は外国にいる知り合いの探索者たちに頼んで、調べてもらったんだよ。

その土地ごとの伝説や神話を。

そしたら面白いことがわかった」


《おもしろいこと??》

《なになに??面白いことって??》

《メシアの説明も気になるが、スネークの戦闘も迫力あって集中できねぇwww》


「その土地に昔から伝わるおとぎ話。

おとぎ話に出てくる伝説上の武器がドロップしやすいらしい。

たとえば、日本の場合は……リオが今使ってる如意棒。

これは元々の国でもドロップするらしいけどな。

武器ではないってなると、羽衣とかかな。

天女の羽衣。

あとは、きびだんご、なんてのもあるじゃん」


《あー、あの一部のモンスターを一時的に仲間にできる》

《たしか、狼系と人型系と鳥系のモンスター限定で仲間に出来るんだよな》

《ももたろうじる……》

《←それ以上はいけない》


「考察厨曰く。

ダンジョンはその土地ごとに親しまれ、人々の記憶に刻まれた物語とかを読み込んで、ドロップアイテムとして反映してるんじゃないか、なんて言ってた。

でも、それだけだと説明できないこともある。

ダンジョンはわからないことだらけだ、とも」


反映してるのは、ドロップアイテムだけではない。

さまざまなモンスターだってそうだ。

たとえば、ミノタウロスがいい例だろう。

日本なら、もっと他の、たとえば妖怪でもいいはずなのに。

何故か、西洋の伝説上のモンスターがダンジョンには出てくることが多い。

これは、日本のサブカルチャーである創作作品でよく登場しているから、というのが考察厨の考えであった。


《なるほどなぁ》

《そういや、前にメシア達が見つけた夢幻絵巻にはダンジョンの攻略方法が載ってるんだよな??》

《アイテム情報も載ってるんじゃなかったか?》

《つーことは、【タナトスの秘薬】とかいま名前がついてるのって、本当は別に名前があるってことか??

《あぁ、ややこしや、ややこしや》


コメントが混乱しているうちに、リオとキールの戦闘が終わった。


「ほい、終了」


倒されたキールの体が、霧散する。


《魔法を使わせず、武器だけで倒しちゃった……》

《おつかれー》

《スネーク、すげー!!》

《8888》

《888888》

《888888》


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