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その配信は、バベルのとあるフロアの、どデカい扉から始まった。
そして、その扉は現実に存在するとあるブロンズ像作品に瓜二つであった。
《え、これ》
《美術の教科書に載ってたやつ!!》
《ロダンの地獄門じゃん》
《ダンジョンが作品パクってる……》
《うわ、ダンテに出てくる有名すぎる銘文もそのままやん》
コメントが指摘した通り、扉には有名すぎる銘文が刻まれていた。
【汝この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ】
まだ、ダンジョンがこの世界に姿を現す前に作られたブロンズ像にもある銘文だ。
《で、メシア、ここなんなの?》
《バベルってのはわかるが》
《ここ何階??》
《つーか、今回の企画内容はキールとの再戦だろ?》
《そう都合よく、魔族とエンカウントできるの??》
《ここ初めてみるとこだな》
《バベルの攻略実況配信は欠かさず見てたけど、初めて見るな、ここは》
《なんなん、ここ??》
ドローンが冬真、つまりメシアの馬面を映す。
冬真は腕組みをしたまま、答えた。
「ヒント、まだ実況配信してない場所」
《えー、わかんないよ》
というコメントが複数書き込まれ、流れていく。
「あるだろ?
俺らが唯一、まだバベルで配信してない場所がさ」
今日に至るまで、1階層から999階層を冬真たちは攻略動画を投稿したり、生配信していた。
編集で多少カットすることはあったものの、ほぼほぼ全ての階層を動画で世間に流していたのである。
あと、配信されていない場所といえば……。
と、そこで視聴者が気づいた。
《最上階か!》
《もしや、ラスボスのいる階層??》
《1000階層目か!!》
一瞬、コメントが消えた。
そして、次の瞬間には弾幕が現れる。
《……はい??》
《さ、え??!!》
《最上階!?!!》
《あ、そういや、バベルって途中までの攻略動画しか投稿されてなかったな》
《うそ》
《ここが????》
その反応を確認して、冬真は首肯した。
「大当たり」
《(」’ω’)」オォオォオ!!!ウウゥゥアアォオ!!!!!!》
《おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお》
《マジか!!》
《すげぇ、ここがラスボスのいる部屋か!!》
《まさかこの目で拝めるとは!!》
《スゲ━━━ヽ(゜Д゜)ノ━━━!!!!》
《でも、なんでダンテとロダンのパクリ??》
すると、そこで今度はスネークの声が入る。
「別にこのバベルだけじゃないんだよなぁ。
この門が出入口の扉になってるの、世界各地にあるバベルと同じSSSSS級ダンジョンなら何処でもそうなんだよ。
ほれ、これ海外の同じランクのダンジョンの最上階の画像」
《待て待て待てwww》
《なんでそんなの持ってるの、スネーク》
「なんでって、行ったことあるから」
《世界各地巡ったのか》
「まぁなー」
《うそだろ》
《なんで今まで無名だったの、この人……》
「まーまー、俺のことはどうでもいいじゃん」
ドローンは撮影していなかったが、そう口にしたリオの顔は実に楽しそうだった。
まるで、恩人たちのことなんて最初から無かったかのようだ。
「とりあえず、メシアはラスボスの説明よろしく」
リオに促され、冬真はラスボスについて説明しようとする。
しかし、それよりも早く動画コメントが書き込まれる。
《そういや、バベルのラスボスってどんなモンスターなの?》
《ドラゴン?》
《サイクロプスがたくさん、とか??》
《案外スライムだったりして》
《ラスボスと今回の企画って関係あるの??》
《あ、わかった!キール・ロンドがラスボスなのか!》
「まぁ、うん半分当たり」
《半分?》
「バベルのラスボスは、この扉に触れて開けた者によってその都度変わるんだ」
《探索者によってラスボスが変わるの?》
「そういうこと。
スネークやスネークの仲間達がいろいろ検証した結果、わかったことも今説明しておく。
これからここに来るかも知れないやつが、視聴者の中にいないとも限らないから」
そう前置きをして、冬真は続けた。
「基本、扉を開けたヤツによってラスボスは変化する。
出てくるラスボスは、扉を開けた奴の中で1番ヤバくて強い認定されてる魔族になる。
ちなみに、俺の場合はキール・ロンドになる。
だからここなら、ほぼ100パーセントの確率でキールと対戦できる。
複数人、二人以上で扉を開けた場合はその人数分だけ、ヤバくて強い魔族が現れる。
もしも、その魔族が被ることがあるならランダムでさらに魔族が追加される。
つーてもこれは最高10人で検証した結果で、それより上の人数だと、またどうなるかはわからないらしい」
《なるほどなー》
《基本1VS1なのな》
「さて、それじゃメイン企画、はじめるか」
冬真は地獄門がデザインされた扉へ触れる。
ゆっくりとその扉を押しあけた。




