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数日後の日曜日に、その動画は投稿配信された。
動画のタイトルは、
【SSSSSランクダンジョンに潜ってみた】
である。
《一コメ》
《うp乙》
《嘘乙》
動画の冒頭で、物好き達がコメントしている。
しかし、これは配信は配信でも主流の生配信では無い。
予め撮影し、編集した動画である。
《またこの手の動画か》
《定期的に投稿するやついるよなー》
《すぐに嘘だって、バレるのになー》
《なー?》
《この前の動画だと、CランクをSSランクってことにしてたよな》
《今回は大口もいいとこだな、SSSSSランクだとよ》
《というかなんで、こいつ馬の被り物してんだ??》
《久々に見たなー、このパーティグッズで顔隠してる奴》
《つーか、この動画見てるの俺たち三人だけかよwww》
コメントが流れる中、馬の被り物をした動画投稿者こと冬真が話し始めた。
馬の被り物、その額から鼻の部分にかけて、何故か【スレ主】とマジックで書かれていた。
「やぁ。
えー、これで撮影できてるのかな?
ま、あとで編集するらしいから、出来てなかったら撮り直しすればいいだけだし。
あー、アレだ、これを見ている人たちはたぶん、探索者かダンジョンの実況配信が好きな人達だと思う。
んで、きっと最近話題の【メシア君】なる人物について知ってる人達だと思う。
ダンジョンに潜る前に、それについて話そっか」
《メシア?》
《あー、アレだろ、雪華助けたやつ》
《国の内外問わず、アレはどこの誰だって問い合わせが殺到してるらしいぞ》
《あー、あれか》
《でも、なんでそんなことを動画の冒頭で話すんだ??》
《さてね》
《案外、この馬はそのメシアとしりあいなのかもしれないぞ》
「アレな、俺なんだわ」
《はい?》
《は?》
《SSSSSランクダンジョンに挑戦ってのも嘘くさいのに、さらに嘘を重ねるとか……》
《度胸あるなー、この子》
「すでに動画が出回ってるから、無駄な足掻きとはわかってるが。
でも、俺、顔出しNGなんよ。
だから、この被り物をしてる。
あと、俺を探してる人達がいるとも聞いた。
その人たちがこの動画を見るかはわからないけど、一応言っておく。
迷惑だから探さないで欲しい」
《よりにもよって、時の人のなりすましか〜》
《度胸ありすぎだろ》
「よーし、言いたいことは言ったからこれでいいかなー。
嘘乙とか、コメントが荒れそうだから。
俺が、通称【メシア】っていう証拠見せる。
まぁ、それが動画タイトルにもしてるやつなんだけど。
これから、SSSSSランクダンジョンに潜る」
ここで、画面が切り替わる。
現れた建造物に、視聴者三人は驚く。
《……んな?!》
《え、まって、ここって……》
《まさか【神界へ通じる塔】か?!》
《待て待て待て、落ち着こう》
《落ち着いていられるか!》
《バベルがある場所って、たしか周囲を森に囲まれてて、更にSランクからSSSSダンジョンがあるから、それらを攻略していかないとたどり着けないんじゃなかったか?》
《たどり着けるのは、本当にひと握りの人たちだけだったはず》
《たどり着けても、出現するモンスターがメチャ強で五階層までしか攻略出来てなかったはずだ》
《一番最近でバベルに潜ったっていう公式記録は、三十年前だぞ》
「たどり着くのも大変なのは有名だよなー、ここ」
なんて言いながら、冬真がダンジョンの入口へ向かう。
《わお、教科書で見たままじゃん……》
入口には、細かなレリーフが施されていた。
それは、ほかのダンジョンには無い特徴だった。
つまり、素人目からみてもこのダンジョンは【本物】だということがわかるのである。
《な、なぁ、これ、まじでガチのヤツなんじゃ……》
《顔出しNG、探されるのもイヤとか言いつつ、こんな目立つことして、いったいどういうつもりなんだ、こいつ??》
そのコメントに答えるかのように、冬真は説明を始めた。
「そろそろ疑問を持つ人も出てそうだから言うけど。
俺は顔出しNGだし、探さないでほしいってのはそのままなんだけど。
じゃあ、何でわざわざこんな動画を上げてるのかって話なんだけど。
言葉だけじゃ人って納得しないらしいからさ。
だから、俺の強さを見てもらおうと思ってね。
俺を鍛えてくれた人たち曰く、そうすれば普通の感性の人たちならドン引くからってことなんだ」
《えーと、つまり?》
《簡単に言えばストーカー対策だな》
《SSSSSランクダンジョンに潜って生還できるような、ヤバいやつにちょっかい出そうとは普通思わないだろ》
《あ、なるほど》
《んー、なんだろ、この子、なんて言うか操り人形っぽい?》
《そういや、さっきから、編集するらしい、とか第三者が関わってるっぽいこと言ってんな》
《協力者がいるんだろ》
「こういうのなんて言うんだっけ??
あぁ、そうだ百聞は一見にしかず、だ。
とにかく、これからダンジョンに潜る。
今日は、そうだなぁ十階層のボス討伐を予定してる」
《は?》
《は?》
《は?》
《待て待て待て、お願い待って??》
《バベルって、たしか五階層までしか攻略されてなかったよな?》
《公式の記録だと、そうだな》
こんな感じで、冬真の初配信の動画は始まったのだった。