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【ダンジョン】人助けしたら、知らんとこでバズってた件【実況】  作者: アッサムてー
幕間

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リオの過去とか2年前のこととか諸々

「恩人で親友で、家族だよ。

だからこそ、助けたいんだけどなぁ」


と、リオは言った。

そして、冬真を見て苦笑した。


「そんな顔するなよ。

さすがに傷つくぞ」


言われて、冬真はきょとんとする。

どうやら、自分がどんな表情をしていたのか自覚が無いらしい。


「無意識か」


リオはまた苦笑した。


「スネーク……、リオにも家族がいたんだな」


思わず口から滑りでた言葉は、冬真が思っていた以上に冷たい響きがあった。


「俺は、お前のことも家族だと、そう思ってるよ」


リオはさらりと返す。


「…………」


冬真は、本当に今更だが、リオについて何も知らないことを実感する。

冬真がリオについて知っているのは、【綺羅星屋】でパートをしていること。

【綺羅星屋】の店長とは長い付き合いであること。


そして、ダンジョンで人助けをしていること。


それくらいだ。

それくらいしか知らないのだ。


リオに助けられて三年になる。

でも、何も知らないのだ。

けれどリオは、冬真のことを家族だという。

冬真に家族はいない。

だって捨てられたから。

血の繋がった家族に、捨てられたから。

だから冬真に家族はいない。


リオは、そんな冬真を拾って、彼のわがままに付き合ってくれているだけだ。

強くなりたい、と。

リオ達みたいになりたい、とそんなわがままな願いに付き合ってくれているモノ好きだ。

少なくとも、冬真はそう思っていた。

けれど、リオは違ったらしい。


「俺とお前が家族?」


冬真からどこか冷笑、いや嘲笑の混じった声が出てしまう。

そんな反応を見て、


「……ほら、そっくりだ」


どこか懐かしそうにリオは微笑んだ。


「その反応、俺もしたなぁ。懐かしい」


冬真は気まずくなり、話題を無理やり戻す。


「恩人ってことは、あのデウス・エクス・マキナ、魔族たちに助けられたことがあるのか?」


「まぁな」


リオが助けられたということが、信じられない。

彼女は強くて、自分でなんでもできるから。

他人を助けることがあっても、助けられるところなど想像できない。


「…………」


「その辺のこと、聞きたいか?」


「なんで?」


「聞きたそうにしてるから」


「教えてくれるのか?」


「まぁ、うん、お前ならいいよ」


「なんで?」


「家族だから。

俺が姉ちゃんで、冬真が弟な」


「……家族でも秘密はあるだろ」


「まぁな。

でも、モヤついたまま楽しく配信実況は出来ないだろ。

それにそういうのは、視聴者に伝わるもんだからな。

それを避けたい」


「だから話すって、軽すぎないか?」


「そこまで秘密ってわけでもないし」


そういうものらしい。

少なくともリオの中ではそうらしい。


「じゃあ、聞く」


「よし来た。

それじゃ、ダンジョンに行く道すがら話してやる」


そうして、二人は部屋をでた。

今日のダンジョン探索は、配信実況だ。

目的地に着くまでの間に話してくれるらしい。


「店長に捕獲されたところから始まったんだ」


「……捕獲?」


「そ、店の生ゴミ漁りしてて捕まった」


犬猫、いや、タヌキの話だろうか?

冬真はツッコミかけたが、それより先にリオが言葉を続けた。


「あのころ、俺は浮浪児ってやつで。

毎日腹を空かせてた。

あちこちの店に強盗に入る度胸もなければ、体力も無くて。

だから、飲食店の生ゴミ漁ってた。


で、何度か当時の店長の店の生ゴミ漁りに通ってたら、網で捕獲された」


やっぱり、タヌキとか野良猫とかの話のような気がする。


「そんで保護されて、住み込みのアルバイトさせてくれたのがはじまりだった。

それで、ウィーナ……ウィリーナたちと知り合ったんだ」


「ウィリーナ?」


「お前たちが戦闘をした女の魔族の名前」


名前、あったんだ、と冬真は今更ながらに思った。

しかし、それは当然のことだった。

キール・ロンドのことも考えたら当たり前のことだ。

魔族は元人間なのだから、名前があって然るべきだ。


「男はミコト、ちっちゃい子はハルジオン。

この三人は、店長の実子だ」


歩きながら、冬真は髪型を変える。

上げていた前髪を下ろし、背筋もダラっとだらしない猫背にする。

するとどうだろう。

最寄りのバス停に着く頃には、誰も彼のことを時の人と認識しなくなる。

視線を集めるのは、リオだ。


「ウィリーナとミコトは双子で、ミコトの方が兄ちゃんだ。

3人は俺に読み書きや魔法を教えてくれた。

一緒にご飯を食べて、遊んでくれたんだ」


視線こそ集めているものの、行き交う車のエンジン音やらで会話はほとんど聞こえていないだろう。

仮に聞こえていても、途中からなので何の話かはわからない。


「なんで、その3人はダンジョンに?」


リオの言葉が切れるのを待って、冬真は質問した。


「そこが謎なんだよなぁ。

こっちに飛ばされてきた時には、姿が無くなっててさ」


「飛ばされてきた?」


今度は、リオがきょとんとする番だった。

それから、なにやら考えこんだかと思うと、指を軽く振った。

魔法が展開、発動する。


「これで会話を聞かれる心配は無い」


リオはそう言って、続けた。


「お前もスレ民の端くれだろ。

特別な方の掲示板のことは説明したじゃんか、忘れたのか?」


特別な方の掲示板。

この世界に存在している、ふつうの匿名掲示板とは違う。

あらゆる世界と繋がっている、異世界匿名掲示板のことだ。


「忘れてないけど、アレは異世界と繋がってるんだろ?」


口にして、気づいた。


「あ、あー、なるほど。

リオや店長はこの世界の人間じゃないってことか??

異世界から飛ばされてきた、異世界人ってこと??」


「半分当たり」


「半分?」


「俺はお前らから見れば異世界生まれ、異世界育ち。

だから、半分当たり」


「ということは、店長は……」


「そう、元々こっちの世界の人だよ。

ただ、店長がいた頃はダンジョンなんてなかったらしいけど」


「え、そうなのか?」


「お前が使ってる携帯端末はあったらしい。

たぶん、ダンジョンが出現したことで歴史が変わったんじゃないかって言ってた。

あ、ちなみに、コウさ……ゴーストリーマンも元々こっちの世界の人。

店長の幼なじみだからな、あの人。

色々あって異世界にきて、俺たちと一緒にこっちに、元いた時代より過去に飛ばされてきたんだ」


情報が大渋滞している。

冬真は、色々頭の中を整理する。


「えーと、店長たちは元々現代人で、異世界転移して、出戻ってきたけど。

何故かそれが百年前だった、と。

これで合ってる?」


「合ってる合ってる」


ややこし過ぎる。


「とにかく、俺たちは突然こっちの世界に飛ばされたんだ。

で、気づいたらウィリーナたちはいないし。

なんか百年前だしってことで、大変だった」


そこで、バスが来た。

乗り込んで、運良く座ることが出来た。


「異世界に戻る方法を調べたり。

ダンジョンについて調べ、研究もした。

ダンジョンには、俺たちが飛ばされてきた秘密がありそうだったからな。

並行してウィリーナたちの行方も探した。

そんで、気づいたら百年経ってた。

やっと二年前に、俺たちはウィリーナを見つけたんだ」


二年前。

リオが中心となって、バベルにレイド戦を仕掛けた時のことだろう。


「二年前のレイド戦は、まさかあんなことになるなんて思ってなかった。

今までやらなかった方法で、バベルに挑戦しよう、遊んでみようってだけのことだったんだ。

でも、おかげでウィリーナを見つけることが出来た」


「見つけたはいいけど、俺たち全滅したけどな。

そういえば、あの時はどうして助かったんだ?」


冬真は何気なく言っただけだった。

しかし、リオは表情を強ばらせた。


「……なにか、あったのか?

あの時、いったい、なにがあったんだ??」


冬真は気になって、さらにそう追撃してみる。

リオは唇を噛み締め、俯いてしまう。

やがて、


「……たんだ」


小さく、呻くようにリオは言った。


「え?」


「店長が助けにきてくれたんだ。

ゴーストリーマンと同じように」


その言葉の意味を理解して、冬真はさすがに絶句してしまった。


「それって、まさか」


「そう、そのまさかだよ。

俺たちを助けるには、デウス・エクス・マキナになったウィリーナを殺すしかなかった」


不可抗力とはいえ、自分の娘を手にかけたということだ。


「そうして、俺たちは助かり蘇生させられたんだ」


あの時、蘇生してくれた存在が判明した。


「そして、今回のことだ。

まさかミコトとハルちゃんまで出てくるとは思わなかったから驚いた」


そこで目的地付近のバス停が近くなったので、降車ボタンを押す。

ランプが赤く光った。

ほどなく、バス停に着いた。

運賃を払って、二人はバスから降りる。


バスが走り去る。

それを見送りながら、リオは話を締めくくった。


「と、まぁこんなところか」


「それが、お前がダンジョンに潜る理由か」


「まぁな」


「俺に配信をさせてるのも、そこに繋がってるのか??」


「まさか。

アレはお前がバズったから、提案しただけた。

お前、お金稼ぐの好きだし。

配信したら、楽しくなりそうだったからな。

そりゃ、ちょっと強制的だったかもしれないけど。

俺の事情とは無関係だよ」


「……そうか、無関係か」


言いつつ、冬真はリオを見る。

そして、顔だけは知っている綺羅星屋の店長と、殺されかけたデウス・エクス・マキナ達のことを思い出した。


彼等にリオは助けられた。

そして、リオはやがて冬真を助けることになる。

逆を言えば、彼等がいなかったら冬真は助からなかったと言えるだろう。


「なら、関係有りにしようぜ」


その言葉は、するりと冬真の口から流れ出た。


「え?」


「手伝うよ。

アンタの家族を助け出すのを手伝う。

せめてもの恩返しだ」


まさか、憧れや楽しいとは別の理由で、ダンジョンに潜ることを決めるとは、冬真自身も驚いた。

リオは、冬真の言葉に目を丸くする。


「別にそんなつもりで話したんじゃないんだけど」


「わかってるよ。

でも、俺がやりたいんだ。

俺を助けてくれた、あんたの為に」


リオは、いつの間にか自分より背が高くなってしまった冬真(おとうと)を見た。


「おっきくなったなぁ、迷子のチビ助」


「チビ助はやめろ」


「でも、うん、ありがとう。

頼りにしてるぞ、冬真」




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