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デウス・エクス・マキナ、もしくは、魔王。
勝手にそう呼称されている存在が、三体出現した。
その場に居合わせた探索者。
なかでも、猛者と呼ばれる程度には経験をつみ、強さを身につけたもの達が相手をするも、なかなか厳しい状態となっていた。
「おいおいおい、どーするよ?」
「どうするもなにも、どっちかが倒れないとこれ終わらないだろ」
「向こうは消耗してる感じもしないんだけど」
「ほんと、どうしたもんかね」
「雪華は魔眼使用からの魔力切れ、恋は動きについてこれないだろうし」
「ついてこれたとしても、ありゃ使いもんにならんよ。見りゃわかるだろ」
冬真を含め、戦闘に参加していた者たちは疲弊しつつあった。
それでも、雪華と恋は戦力外にカウントされている。
雪華は魔力切れにさえなっていなかったら、カウントされていただろうが。
全裸男もアイテムによって蘇生され復活していたが、敗北の色が濃くなりつつあった。
お互いが持ってきていた蘇生、回復アイテムも底を尽いている。
疲弊から集中力も途切れつつあった。
形成が不利になる。
結界の中にいた、スレ民、雪華、恋にもそれが伝わる。
自分たちの死がすぐそこに迫っている。
死ぬのは初めてでは無い。
でも、次生き返る保証なんでどこにもない。
蘇生できなかったら、ダンジョンに飲み込まれるのだろう。
そして、あの魔族と同じ運命をたどることになる。
もしかしたら、死んで、消えて、そのままかもしれない。
戦っていたスレ民たちが倒れていく。
死んでいく。
まるで歯が立たない。
最後に、冬真だけが立っていた。
肩で息をしながら、片方の腕が取れ、残った方の腕で剣を構えながら、それでも立っている。
魔族三人と対峙する。
「ははっ、はじめてキールと戦った時思い出す」
と、笑いながらそう呟いた。
魔族三人が、一斉に冬真へと飛びかかる。
その、瞬間だった。
「そこのお嬢ちゃん。
幻術使いな。
お母さんから教えて貰ったっていう、あの桜がぶわぁってなるやつ」
と、恋へ初めて聞く声が囁いた。
「え?」
「いいから、はやくはやく」
と、その囁き声がいう。
こういう時、指示に従うよう訓練していたおかげだろう。
恋は、自然な動作で幻術を使用する。
魔族三人が、幻術に包まれる。
動きがにぶる。
同時に、結界のなかから動く者がいた。
いったいいつの間にそこにいたのか。
それは、4人目だった。
オチャラケた雰囲気のスーツ姿の男である。
雪華も恋も知らない人間だった。
ゴーストリーマンである。
そのゴーストリーマンは、冬真と魔族たちの方へ駆け出していた。
かけ出す時に、恋へ、
「大変よくできました」
と声をかけた。
あっという間に冬真の横をすりぬける。
幻術のなかへ、彼は飛び込んだ。
そして、
「ごめんな」
そう、悲しそうに顔を歪めながら、ゴーストリーマンは剣で魔族三体の首を刎ねたのだった。
魔族たちが倒れる。
そして、あとには討伐隊と、スレ民達の死体に、生き残ったものと。
ドロップしたアイテムが残された。
さらに、いつの間にかドローンが復活していた。
雪華が持ち込んだドローンである。
そのドローンは、この一部始終を動画サイトへ流し続けていたのである。




