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【完結】追放から始まる『異世界“純愛”物語』  作者: 地獄少年
第九章 悪夢

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第三話 異変

「くれぐれも気をつけるようにな」


「「はい」」


トゥールビヨンから声を掛けられつつ、オレたち四人はキルケーのテレポート魔法で帰還する……。




「………………あれ?」


「どうしたの?」


アンダルシア王国へ転移するかと思ったのに、キルケーの魔法は不発だったようだ。


「失敗したかな? 覚えたての魔法だからね……」


「そうなんだ」


(キルケーも失敗するんだ……)


珍しく凡ミスをするキルケーも何だか微笑ましく思えた。




「………………?」


「ん? また失敗?」


キルケーが不思議そうに首を傾げている。


どうやら二度目のテレポートも失敗したようだ。


どうしたんだろうか。




「動くなっ!」


「「へっ?」」


玉座に座っていたトゥールビヨンが大声を上げ、血相を変えてこちらに飛んできた。


目にも止まらぬ早さで近づいてきたと思ったら、キルケーの腕を捕まえた。


「攻撃されている!」


「え? ……攻撃?」


オレたち四人は意味もわからずトゥールビヨンを見つめた。


「テレポートが機能しないと言うことは、王城の魔法陣に異変があったと言うことだ。おそらくアンダルシア王国は攻撃を受けている!」


「そんな……」


唐突な発言が信じられなかったが、トゥールビヨンの険しい顔に従うしかなかった。


冗談で言っている訳では無いことだけは分かる。




「国王様、緊急の報告です」


兵が一人、慌てた様子で部屋に入ってきた。


「アンダルシア王国のソロモン王、アンジェリーナ王妃が暗殺されたとの報告が届きました」


「「…………!?」」


(暗殺? あの二人が殺された?)


オレは耳を疑った。あの二人が殺されるわけが無い。


キルケーも呆然としたまま報告にきた兵を見つめている。


「間違いないのか?」


「はい」


とは言うものの、兵の報告が正しいのならテレポートの魔法が使えなかったのも頷ける。


王城に異変が起きているのは間違いないと言うことか……。


「始末したか?」


「はい。その場で直ぐに」


(え? 始末……?)


「案ずるな。嘘の報告かもしれん。緊急事態を告げる場合は、ここの魔法陣を使うことになっている。他の魔法陣を使って報告をしてきた者は他国の間者とみなし、その場で始末すると決めている。たとえ顔馴染みの者であってもな」


案ずるなと言ってはいるが、トゥールビヨンの表情は硬いままだ。


アンダルシア王国で何かが起こっていることは間違いなさそうだが、何が起こっているのかは全く分からない。


不安だけが募る。


「ここの魔法陣からの報告が来るまで待て」


信頼できる情報が来るまで待つしかなかった。


本当は直ぐにでも戻るべきなのだろうが、大きな危険を伴う事になる。




「陽動だ。ダーレー王国襲撃は我々の注意を逸らすための陽動作戦だったのだろう。そう考えれば、制圧することなく中途半端に撤退したのも納得いく」


「陽動……?」


注意を逸らす為だけにあれだけの攻撃をしかけたというのか?


ダーレー王国は壊滅状態だ。王城も城壁も崩れ落ち、民家の多くも倒壊していた。


やってる事がむちゃくちゃだ。


「とは言うものの、陽動をかけたくらいでそう簡単に落とせる相手では無いのだが……」


トゥールビヨンが考え込む。


陽動作戦と言っても、ダーレー王国から遠く離れたアンダルシア王国にどれほどの効果があるのか疑問だ。


それにソロモンとアンジェリーナに限らず、王国の兵はすこぶる強い。


リゲルたちが大きく成長したと言っても、そう簡単に倒せる相手では無いはずだ。






「「……!?」」


隣の魔法陣が光り、兵が一人現れた。


彼の口から真実が語られると思うと、胸が締め付けられるような感覚に陥ってしまう。


「報告です……が……」


兵はキルケーの姿を見て言い淀んだ。


「構わん、全て話せ!」


報告を躊躇する兵に対してトゥールビヨンがそのまま伝えるように促す。


「はっ! アンダルシア王国のソロモン王、アンジェリーナ王妃は死亡。何者かの手によって暗殺されました」


オレたちは兵からの報告に絶望するしかなかった。


先程の報告が嘘であると期待していただけに、落胆が大きい。




「団長パーソロン、カディスとヘロドの執事二名も戦死です。その後、王城は大きな地響きと共に倒壊しました」


「パーソロンも……」


信じられなかった。パーソロンもカディスもヘロドも戦死なんて想像できない。


ヘロドの恐ろしさは身をもって体験している。


彼と対峙して勝てる者などいるのか? リゲルは彼よりも強いと言うのか?


「ゴドルフィン王国か?」


「はい。首謀者はリゲルです。ロベルト、セリーナの姿も目撃しました」




「直ぐに戻ります!」


呆然としていたキルケーが我に返る。


国の緊急事態だ。ここでのんびりしている訳にはいかないと考えたのだろう。


トゥールビヨンに掴まれている腕を払い落とそうと小さくもがく。


「駄目だ。国へは戻さん。今戻ったらあっさり殺されるぞ。国内の残った魔法陣に兵が待ち伏せていることは容易に想像できる。彼らの最後の標的はキルケーの命だ」


「そんな……」




「城内の全兵を集めろ! 大至急だっ!」


トゥールビヨンが怒号をあげた。


ダーレー王国とアンダルシア王国が攻撃を受けたのだ。


バイアリー王国もじっとしていられる状況ではなくなった。






トゥールビヨンに強く腕を掴まれたまま、キルケーは力なくその場にへたり込む。




『カラン……』




母から受け継いだ大きな杖が床に落ち、乾いた音をたてた。











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