第八話 乱戦
「!? 魔導部隊、どうなっているっ!?」
エクリプスと交戦中のリゲルが怒鳴り声をあげた。
少し前から魔導部隊による攻撃が止まったからだ。
彼らの援護攻撃があるからこそ、エクリプスやリーの攻撃を凌げていると言える。
リゲルは剣を交えながら魔導部隊の攻撃がおとなしくなったことに不満を募らせた。
魔導部隊の攻撃を抑えているのはライン隊だった。
エクリプスと共にダーレー王国へ入国していたライン隊が参戦し、彼らの足止めを始めていた。
ライン隊は情報収集が主な役割。
戦いに特化した部隊ではないので、魔導部隊を殲滅することは出来ない。
ただ、気配を消して足音を立てずに近寄る術は、この状況では大いに役立った。
魔法使いたちの背後に忍び寄り、攻撃を妨害するには打ってつけだ。
杖を折り、背後から突き飛ばしたり、首根っこを掴んで引っ張ったり……。
文字通り子供じみた戦い方だが、魔法使い相手には十分に効果を発揮した。
それに、彼らの目的は魔導部隊の殲滅ではなく、彼らの攻撃を阻止することだ。
ライン隊の子供じみた攻撃でも目的は十分に果たすことができていた。
オーウェンが戸惑う三人に向けて魔法を放つ。
魔導部隊からの攻撃を気にしなくて良いと分かったので、彼ら三人への攻撃に集中できるようになった。
オーウェンの攻撃に合わせてリーも三人に向けて魔法攻撃を集中させる。
リゲルたち三人は彼らの魔法攻撃によって徐々に後退していく。
ライン隊の参加によって流れは五分に引き戻され、もう一度三人を追い込むことが出来るようになった。
エクリプスは三人から距離を取って体制を立て直し、宙を舞いつつチャンスを伺う。
戦いの流れはこちらに傾きつつあるが、マサヤとオーウェンを孤立させないようにだけ気を付けなければならない。
怪我をして動けないマサヤを中心にして、それぞれがポジションを取るようにしてリゲルたちを追い込む。
マサヤは意識が朦朧としながら何とかして踏ん張り、弱々しいながらもガードの魔法を唱え続けていた。
戦況が有利に傾いたことで、エクリプスはリゲル一人に標準を定め何度も攻撃を繰り返した。
個々の実力はリゲルよりもやや劣っていることは分かっているが、倒せないまでもリゲル一人だけを抑える役割に専念した。
倒すことを目的にするとリスクをとった攻撃をしなければならず、そうすると逆にやられてしまう可能性も高まる。
付かず離れずの戦い方で、リゲルとマサヤを近付けさせないことを目的に戦った。
しつこく付き纏うエクリプスにリゲルはイライラを募らせていた。
たいして強くもないエクリプスを倒せそうで倒せない。
一気に斬り込もうとすると距離を取られて上手く交わされてしまう。
オーウェンやマサヤに攻撃対象を切り替えると、逆に斬り込んできて攻撃の隙を与えてくれない。
攻撃に派手さは無い。地味ながらも堅実な戦い方をするエクリプスは非常に厄介な存在だった。
リゲルが足止めを喰らっているため、セリーナとブライトはオーウェンの命を奪うことに専念した。
逆に言えば、エクリプスの攻撃を気にしなくて良い状況だ。
だが、二人の動きを抑えているのがマイリージャンの魔法攻撃だった。
リーは強烈な魔法を絶え間なく放ち続け、彼らに攻撃を隙を与えないように努めた。
帯剣していないリーは接近戦に弱い状況だ。
彼らと常に距離をとりつつ、マサヤとオーウェンを守ることに努めた。
隙を見てマサヤに近づくことを試みるが、流石にそれはさせて貰えない。
お互いが牽制し合う戦いが続く。
魔導部隊の攻撃を気にしなくて良くなったオーウェンは、マサヤを守りつつリーとエクリプスの援護に回っている。
乱戦の中でも、状況を把握しそれぞれの役割が明確になりつつあった。
だが、今の状況では防戦が精一杯で相手を倒すまではいかない。
ここでリーが攻撃パターンを変える。
今までは火の魔法を中心に大火力の攻撃を繰り返してきた。
火力は大きかったが、一方向からの攻撃になるので避けられやすいことが欠点。
そんな一方向のみの攻撃に慣れてきた三人に対して、四方から飛んでくる攻撃に切り替える。
周辺に散らばる小さな瓦礫や木片を三人に向けて一斉に照射した。
小さな瓦礫が直撃したら肉を切り裂くほどの威力がある。木片はぶつかるだけなら小さな衝撃で済むが、場合によっては体に突き刺さることもあった。
小さな瓦礫も十分な助走距離があった場合は体を貫通するほどの威力になるのだが、混戦の中での攻撃だとそこまでの威力は出すことができない。
しかし、相手の動きを撹乱させるのには十分すぎる効果があった。
三人が一瞬動きが止まる。
いきなり攻撃のパターンを変えられ四方から瓦礫の直撃を受けたのだから当然だ。
その隙をついてエクリプスが襲い掛かる。
リーは再度、高火力の魔法を三人に炸裂させる。
リーの攻撃がこう着状態だった戦況をほんの少しだけ傾けさせることに成功し、そのまま一気に決着をつける機会が訪れた!




