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【完結】追放から始まる『異世界“純愛”物語』  作者: 地獄少年
第五章 特訓!

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第二話 装備

「おぉ!!!」


武器庫へ案内されたオレは感嘆の声をあげてしまった。


壁一面にさまざまな種類の武器が飾られていたのだ。


アニメや漫画で見たことあるような武器はもちろんだが、どちらかと言うと初めて見る武器の方が多い。


ありきたりな剣、槍、弓も大きいものから小さいものまで多種多様だ……。




「凄いですね、この数。みんな使いこなせるのですか?」


「そんなわけあるか。オレが使いこなせるのはこの剣だけだよ」


トントンと自分の腰に手をやりながらパーソロンは呆れたような口調で答えた。


「ここは世界中の武器を集めてある。まだまだ知らない武器もあるかもしれないけどな。隣の部屋には鎧や盾があるぞ」


「おぉ! 集めるのが趣味なのですか?」


王様のコレクション的な感じなのだろうか。


武器マニア向けの博物館のようだ。




「ん? 呑気なことを言うな。戦いのために決まっているだろう」


「え……? 戦いのため?」


言われるまで気付かなかったが、オレは心底平和ボケしているようだ。


「敵がどんな武器で攻めてきても対応できるようにするための収集だよ。見たこともない武器を持った相手との戦闘は怖いものだ」


「あぁ……、なるほど……」


見たこともない武器の多くは、そもそもどうやって使うのかすら想像できないものも多い。


確かにこんな武器を持った人間と戦うのは恐怖でしかない。




「マサヤはこの中から好きな武器を選べ。実際に手で持って振り回してみて、自分が気に入ったものを使うといい」


「え、はい。自分で選ぶんですね。普通の剣を渡されるのかと思ってました」


この中から選べと言われてもな……。


数が多過ぎるし、そもそも剣すら握ったこと無いと言うのに。


「道具は自分が気に入ったものを選ぶのが最適だ。自分の手と同じように自在に操らなければならないんだから。他人から押し付けられたものを使っても自分に合わなければ意味が無い」


「なるほど……」


「まぁ、数も多いし、色々と見て回るが良い。で、今日用事があるのは残りの三人だ」


「「「……!?」」」


フウカとライカとキルケーはキョトンとした顔でパーソロンを見つめていた。


「私たち……ですか?」


キルケーが不思議そうな顔でパーソロンに問いかけた。


「そうだ。フウカとライカ、お前たちもだぞ」


「「……?」」


「帯剣をするつもりはありません」


「帯剣なんて野蛮です」




こいつらパーソロンにも平気で反撃するんだな……。


毒の強さは相手を選ばないのか。


あの理不尽なまでの口ごたえはオレに対してだけじゃないとわかって、少しホッとした気分でもある。




「話を最後まで聞け。武器を持って戦えと言っているわけじゃない。今後、公式の式典に参加するときは帯剣しなければならない。王女であるキルケーはもちろんだが、フウカとライカも帯剣は必要だ」


「「「うーん……」」」


三人とも全く納得していないようだ。


帯剣することがそんなに嫌なのだろうか。




「飾りの剣ではダメなのですか?」


「偽物でも遠目からなら誰も分かりませんよ……」


二人は子供のような言い訳を始めている……。




「将来の女王様とそのお付きの者が偽物持っててどうするんだ。これは王妃様からの指示でもあるんだ。そこは素直に従え」


「「分かりました」」


アンジェリーナの名前を出して、ようやく二人は納得したようだ……。




「それでだ。マサヤに聞きたいことがあるんだが」


「ん? 何でしょう」


「ドラゴンの落とし物を覚えているか? あれでここにいる四名分の装備を用意する予定なんだが、大丈夫か? 一応、手に入れた本人のお許しをいただいた方がいいと思ってな」


「あぁ……。いいですよ。問題なしです」


すっかり忘れていた。


そういえばダンジョンを出たところでキルケーに預けてそのままだったな。


「よし。じゃあこっちに置いてあるからついて来い」




案内された隣の部屋には例のドラゴンの落とし物が並べられていた。


二メートルほどの角が二本、五十センチほどの牙が二本、一メートル四方の鱗六枚に、大きな翼が二つ。


全てが赤黒い。


物によってはかなりカッコイイ装備に仕上がるはずだ。




「角二本からお前たち四人分の武器を作る予定なんだが、まあ四人がどんな武器を希望するかによっては材料が足りなくなる場合もある。そのときはまたどうするか考えるとして……」


「角を削って作るのですか……?」


この硬い素材をどうやって加工するのか興味がある。


硬いってことは折れやすいってことでもあるよな……。


「削り出しで作ってもいいんだけどな。熱を加えてから加工するらしいぞ」


「へぇ……」


そんな技術もあるのか。一度見てみたいものだ……。




「牙からはナイフを四人分。ナイフはいつどこででも使えて便利だから四人とも持っておけ。鱗からは体を守る鎧が作れるんだが、どういう使い方が良いかは自分たちで考えてくれ」


「私たちは不要です」


「赤色は私たちには合わない色ですから」


「え? 何言ってんの……?」


帯剣に引き続き鎧についても拒否してきた二人なんだが、色が合わないって何なんだ?


「私たちは青が主体なんです。赤は青色の良さを殺してしまう喧嘩色です」


「キルケー様の青色を汚す色が赤系なのです!」


まさかの答えにビックリだ。


見た目の、しかも色重視で要る要らないを決めるなんて……。


でも、それ以上に驚いたのは、二人が赤色を否定しながらオレの髪を見つめていることだった。


「ちょっ……、オレの髪の色を否定しないでもらえます?」


「キルケー様の良さを殺してしまう髪ですね」


「キルケー様を汚す髪ですね」


「言葉の意味がおかしくなってるだろ……」


この二人に話を振ると必ずおかしな方向へ脱線してしまう。


もう慣れてきた感はあるのだが……。


そして慣れてきたことがもう一つ。二人がいくらぼやいてもいつものように笑顔のままのキルケー。


この三人は息が合い過ぎている……。




「まあ色のことはお前らに任せる。とにかくこのドラゴンの落とし物はお前たち四人の物だから。四人で有効活用する方法を探ってくれ」


「はい」


このままではオレ一人が使うことになりそうだが、せっかくのドロップアイテムだ。四人で使う方が良いのだが。


それにオレ一人で使うには量が多過ぎる。




「キルケーはどうなの?」


ずっと武器を眺めているキルケーに問いかけてみた。


何を選ぶのか迷っているように見える。


「うーん……。今更武器と言われてもなぁって感じかな。子供の頃からずっと何も持たずに冒険してきたから何かピンとこなくて……」


もしかしたらオレ以上に悩んでいるのかもしれない。


もともと攻撃すること自体を否定してきた冒険者生活だったのだ。


今更武器を持てと言われても困るのは確かだろう。


「魔法を使うのなら杖は持たないの? 確かセリーナは杖を持っていたよね?」


ダンジョンでオレたちを殺しにきた女魔法使い。


勇者リゲルと行動を共にしていたセリーナは、いかにも魔法使いっぽい長い杖を持っていた。


「うん、杖はいずれ持った方が良いのかなって思ってるけど、武器はなぁ……。どちらにしても、片手や両手が塞がる方が不安かな」


「あぁ、なるほど……」




「「うーん……」」


結局、オレもキルケーも武器を眺めながら悩むだけでこの日の訓練時間は終わってしまった。


フウカとライカは散々文句を言いながらドラゴンの落とし物を食い入るように見つめ、手に取って感触を確かめたりしている。


どう使おうか悩んでいるのか、それともただ単に興味津々なだけなのかは知らない。

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