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プレイ時間:48.5時間〜

プレイ時間:48.5時間〜



 日曜日になり、昼過ぎに僕はログインした。

 アカリアがその時間にログインしてほしい、と連絡してきたからだ。

 きっとデギオンの言っていたことだろう。

 僕はまだ答えを出せずにいて、仮にデギオンと一緒にアカリアがいなくなって、それで、僕はどうなるだろう。

 二人と友人じゃなくなるわけじゃない。

 ただ、少しだけ離れた友人、という形に変わるだけ。

 ログインした先はラーメン屋で、僕しかアバターはいない。

「アカリア殿から伝言をお預かりしています」

 急に老店主のNPCアバターが話し始めた。

「飲食店街にある、「喫茶アメジスト」で待っている、とのことです」

 NPCに礼を言っても仕方ないけど、それでも僕は設定されているワンタッチで発言できるテキストで礼を言って店を出た。

 マップを開いて、ほど近い位置にある喫茶アメジストの場所を理解して、歩き始める。

 デギオンが言を翻すことはないと思う。それを考えた。

 だから、僕に選べるのはレベルを25にするか、それともしないか、そのどちらかだ。

 そして後者を選ぶということは、このゲームを遊ぶのをやめるのい等しい。

 僕はゲームをするためにアカウントを作って、ここまで続けてきた。

 もちろん、ゲームの許容する範囲には入っているから、レベルを無視してのんびりと過ごすのもいいだろう。

 でもそれは僕の最初の考えとは違う。

 アカウントを作った時、僕は強くなることを求めたと思う。

 友達ができたらいい、パーティを組めたらいい、そう思った。

 その思いは今も変わらないし、後悔もしていない。

 デギオンもアカリアも、僕には過ぎた仲間だった。

 強くて、知識も豊富で、多くのことを教えてくれた。

 その二人に僕は何か、恩返しをしなくちゃいけない。

 喫茶アメジストに到着し、中に入る。少女のウエイトレスの姿をしたNPCアバターに、アカリアの名前を告げると、こちらです、と案内される。

 カウンター席で、アカリアは一人で座っていた。

 こちらを振り返る彼女に頭をさげるモーションを返し、隣の席に腰掛けた。

「デギオンから連絡をもらった」

 アカリアがそう切り出した。

「勝手に君に関わって、勝手に放り出すのも、ひどいことだとは思う」

 訥々とアカリアが言う。

「でも、僕やデギオンが手助けすることで、君の楽しみが奪われるのは、間違っている」

 何も楽しみは奪われていない、と言いたかった。

 二人といるのが、楽しいんだから。

「もっと広い世界を、旅するべきだよ」

 アカリアがこちらに向き直った。

「私も、デギオンと同じように、君がレベル25になったら、君から離れる」

 レベル25まで、あと9つ。

 僕は密かな決意を固めて、「わかった」とテキストを打った。

 ごめんね、とアカリアが小さな声で言ったけど、アバターは声にある悲痛さとは別に、平然としていた。



(続く)

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