プレイ時間:47.5時間〜
プレイ時間:47.5時間〜
僕が一日にゲームを一時間しかしない、と宣言したのを覚えていたアカリアが、危険地帯に行く時間的余裕はないから、と僕を訓練施設に誘った。
そこでお互い、防具は外して、短い槍だけで向かい合う。
防具を外すと言っても、僕の場合は武装から携行の中に移動させるだけだけど。
訓練施設でも、僕のアバターは重すぎるアイテムのせいで、動きがアカリアよりも格段に遅い。
二人で槍をやり取りし、アカリアが防御の仕方をレクチャーしてくれた。
高レベルプレイヤーが使うピンポイントの防御のテクニックで、それを習得すると武器の選択の幅が広がる、と言っていた。
いきなりそんなことはできないので、僕は繰り返しアカリアの槍を受けて、レベルの差から即死する。体のどこに当たっても即死だ。
30分はあっという間に過ぎた。
ラーメン屋まで歩こう、とアカリアが提案したので、僕たちはストーンタウンの往来を歩いた。
夜だからか、プレイヤーは多い。僕とアカリアの青い揃いの衣装も紛れるだろう。
僕は何となく、アカリアに申し訳なくて、青い衣装を選んでいた。
だって、せっかく作ってもらったんだし。
「そういえば」
僕は素早くテキストを入力した。
「デギオンがこの前、刀を使った」
そのテキストを読んだはずだけど、返事には少しの間があった。
「刀をね」
そんな気の無い返事だった。
「一撃で、倒したよ。すごかった」
そうテキストを入力しても、そうでしょうね、という返事しかない。
何か、触れちゃいけないことだっただろうか。
「昔のことだけど」
僕がテキストを打てずにいたからだろう、アカリアの方から話し始めた。
「新月騎士団に、切り込み隊と呼ばれる部隊があった。新月騎士団の本隊のメンバーの一人が隊長で、ギルドの中でも血気盛んというか、特攻が好きな奴が集められて、それで、まぁ、総勢で三十人くらいいたかな」
何かを思い出すような喋り方だ。
「その三十人は、ボスとやり合う時、真っ先に死ぬのよ。まぁ、自主的に捨て駒になるようなものだよね」
言葉が途切れ、ラーメン屋の暖簾が見えている。何度見て、不自然な暖簾だ。
「その切り込み隊の隊長が、デギオンで、僕が副長」
想像通りのことを、アカリアが口にする。
「隊長は、剣鬼とも呼ばれて、いつも最後まで生き残った。僕は半々かな」
どう答えることもできないまま、暖簾の前に着いた。
「あいつが刀を使うところは、僕ももう長い間、見ていない。捨ててなかったんだ」
アイテムを捨ててなかった、という意味だと思う。
でも、もしかして。
剣鬼と呼ばれた自分を捨ててない、そう言いたいのだろうか。
また明日、遊びましょう。
そう言ってアカリアはログアウトして行った。
僕はラーメン屋の中で、少し考え事をして、でも答えは出ないまま、やっぱりログアウトした。
(続く)




