プレイ時間:47時間〜
プレイ時間:47時間〜
家に帰ってきて母さんが用意した豪勢な料理が多すぎて、食事の後、ゲームをするよりも横なっていることを優先することになった。
それでもアカリアから誘いがあり、22時にログインした。
ラーメン屋にアバターが出現し、アカリアが素材系アイテムを買い取る店にいるというので、僕はマップを頼りにその店に向かった。
店名は「イシヅカ石材」という店だ。
店の前に真っ青な衣装の少年のアバターが立っている。僕に気づいて、手を挙げるモーションをしたので、こちらも同じモーションをして歩み寄った。
「素材をダラーに変えなよ。ここからは結構、いい値段になる」
そんな風に促されて店に入ると、確かに「黒漆喰」がいい値段で買い取られたし、「原石」はその場で鑑定され、買い取ってくれるものもそこそこの値段、買い取ってもらえないものは、NPCアバターが言うには「精錬所へ持って行きなさい」ということだ。
この場では8000ダラーほどを受け取って、店の外に出るとアカリアが身振りで「精錬所はこっち」と案内し始める。
その小さな背中を追いながら、僕は現実世界での話をするべきか、ちょっと考えた。
現実の話をアカリアにしても、それは僕が勝手に自己満足するだけで、アカリアには何の得にもならない。
それよりも、僕があまりに開けっぴろげで、警戒するか、不快に思うかもしれない。
ゲームにはゲームのルールがあり、関係があるかもしれない。
なのでぐっとこらえて、僕は口を閉じていた。
それなのに、アカリアが肩越しにこちらを見ると「入学式はどうだった?」と話題をふってきた。
「今日だって言っていたよね。友達はできた?」
どう答えればいいだろう。
正直に答えるのは当たり前だけど、友達と言っていいのだろうか。
「食事をした」
そうテキストを打つと、初日で? とアカリアが足を止めて向き直る。
「入学式のその日に? すごいじゃないか」
「向こうから誘ってくれたから」
どうにかテキストでそう答えるけど、アカリアが喜んでいるのは雰囲気でわかる。
「良かったね。楽しい生活を送ってくれたまえ」
回れ右をして、僕は歩き出したアカリアの後を追った。
僕はデギオンのことも、アカリアのことも知らない。デギオンは社会人らしいとはわかるけど、アカリアはいったい何歳なんだろう。
そういう事を聞くのはマナー違反でも、それほどそっけない関係ではない。
いや、親しいかは、ちょっと確信が持てないけど。
精錬所はストーンタウンのはずれにあって、僕が持って行った原石はびっくりすることに15000ダラーに変わった。
僕が驚いていると「これも仕様」とアカリアは平然としたものだ。
どうやら、10万ダラーは初心者には大金でも、少しでもゲームをすれば、いくらでも稼げるらしい。
(続く)




