プレイ時間:45.5時間〜
プレイ時間:45.5時間〜
「エンデッド……?」
四月一日の夜、僕はTWCの第2層の街ストーンタウンで、街頭でアカリアと話していた。
「エンデッドって、えーっと、どんな奴だったかな」
「不自然な剣を使っていて、体格がいい」
そうテキストを打つと、そんなの大勢いるからね、とアカリアが応じる。
「もしかして、超攻撃型の戦い方をしなかった?」
「していた。思い出した?」
そのテキストを受けて、やっと思い出した、とアカリアが天を仰ぐ。
「だいぶ前に、新人で見込みがあるっていうんで、僕とデギオンの下で鍛えたよ。結構、攻撃をつなげるのが得意で、新月騎士団のスカウトどもが目をつけたって感じだった」
「スカウト?」
「そういう役目を負うプレイヤーがいるわけ。もちろん、当人もそれなりの使い手で、新しい自分の部下を探している、という感じでもある」
ふーん、としか感想が出ない。
僕にはあまり縁がなさそうだ。
「それで、まぁ、結構、無理やりにレベルを上げてやって、最後に会った時は、130くらいにはなっていた」
「今は200を超えているって言っていた」
「あのデカ物がレベル200? それは世も末だね」
そこまで言うこともないと思うけど……。
「じゃあ、ハルハロンは新月騎士団の覚えもめでたい、というわけだ」
いきなりそう言われてこちらを見られても、答えに困る。
「デギオンが気になっただけだと思うし、敵視されているような気がする」
そう入力すると、それでも立派、立派、とアカリアは笑っている。笑いのモーションだけど、本気で笑っているようだ。
そのあと、二人で訓練施設で模擬決闘を三十分ほど、やった。
僕の攻撃が当たることはなくて、とにかく防御と回避に必死になる。
訓練の間、デギオンとアカリアがどうやってエンデッドのレベルを上げたか、気になった。
もしかして、人工知能の監視をかいくぐって、訓練で攻撃を当てさせ、無理やりにレベルを上げたのだろうか。
そんな手段があるのか?
僕としては、そこまでしてレベルを上げたいとは思えなかった。
自然と実力が身につくか、才能がないとわかるか、どちらかに落ち着くのが僕の願望である。
ゲームだから、楽しみ方は他人に強制されるものじゃない。
訓練の最後に僕のレベルは15に上がった。ステータスも向上している。
「なんか、僕たちが知っているのとは違う方法で強くなるよねぇ」
呆れたようにアカリアが言う。
僕がアイテムを過剰に持ったまま戦いの訓練をすることを言っているらしい。
「チートじゃないの」
アカリアの冗談に、僕はアバターに苦笑いさせた。
ログアウトしてから、僕は壁に掛けられている大洋高校の制服を見た。
入学式は明後日、四月三日の金曜日である。
(続く)




