プレイ時間:45時間〜
プレイ時間:45時間〜
あまり遅くなっても悪いかな、とデギオンは言ってくれたけど、僕は真相が知りたかった。
二人でストーンタウンの喫茶店に入った。デギオンは体力が減っているようで、食事を注文した。僕は飲み物だけだ。
「あいつは新月騎士団のメンバーの一人だ。今はどうか知らないが、昔は別のパーティの一員で、しかし実質的には俺の部下だったよ」
「ギルドが同じだった?」
「そうなるね。最前線のゲーム攻略を目指すのが目的の連中だ」
「攻略できる?」
そうテキストを打つと、知らんなぁ、とデギオンがぼやくように言った。
「今のところ、レベルは果てしなく上がるようだし、世界樹の最上層もどんどんアップデートされて、追加されている。終わりのないゲームだと、俺は見ているよ」
諦めた、とは違うらしい。
別の楽しみを見つけた、みたいな感じを受けた。
「まぁ、トップレベルの使い手とか、圧倒的なレベルになりたいという願望は、わからんでもない。しかし、まぁ、それ以外の楽しみもある」
「店を開いたり?」
こちらのテキストを見て、デギオンがクスクス笑っているのが聞こえた。
「坊やみたいな新人を育てるのも面白い」
「でも僕はトップレベルにはすぐならないはずだけど」
だろうな、とデギオンが頷いている。
「まぁ、俺も坊やがいきなり最強の使い手になるとは思っていない。レベルもだし、テクニック的にもな。それでも坊やが楽しく遊んでいるのを見るのは、俺も楽しい。それだけのことさ」
その言葉で話題を区切り、鎧を作ってやるよ、と急にデギオンが別の話題を始めた。
「さっき、エンデッドの奴から「真銀」の塊を巻き上げたから、材料はある。製造の手数料は俺が持つ。余計な混乱に巻き込んだ謝罪だ」
真銀? さっきの銀色の塊のことだろう。
でも聞いたことのない素材系アイテムである。
後で調べることにしよう。
「真銀を扱える武具職人は限られている。それこそ、根っからの職人のプレイヤーか、70層より上の街のNPCショップくらいだろう」
そんなに?
そこまで高レベルの鎧を僕のアバターが持てるとは思えない。レベルの適性もなければ、ステータスも足りないだろう。
そんなことを考えているのをどうやってか察しだようで、気にするな、とデギオンが言う。
「レベル15から使えるように注文を出す。レベルが上がっていく中で、作り直していけばいいさ。真銀は簡単に喪失されるような素材ではない」
本当かなぁ。
食事が終わり、次の週末には鎧のアイテムを作っておくとデギオンは請け負ってくれた。
彼もいろいろと忙しいのだろう。
挨拶をして僕はログアウトして、現実世界ではもう今年度最後の日である三月三十一日は終わろうとしていた。
一応、形としては明日から、僕も高校生だ。
(続く)




