プレイ時間:44時間〜
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速い、と思う間もなく、エンデッドの猛攻が始まった。
切るモーションと突くモーション以外にも、僕の知らないモーションがあるらしい。
間断ない連続攻撃は、到底、凌ぎ切れるとは思えなかった。
しかしそれを、デギオンはやって見せた。
彼は斧槍を持っているだけで、その長い柄を使って防御を続ける。
先を知っているのではないか、というほどの的確な受けだった。
デギオンの動きには単純なモーションの連続であることを示す、モーション前の溜めも、モーション後の余韻も、何もない。
完璧にアバターをコントロールしている様には、冷や汗が流れそうになる。
たかがゲームでも、ここまで極めれば、ある種の芸術だ。
さっとデギオンの斧槍の柄頭が低空を走り、エンデッドの足にヒット。
それだけの筈が、エンデッドのアバターが大げさに揺れる。
一発で、攻守が入れ替わる。
斧槍がめまぐるしく振り回される。
穂先が狭い路地の壁を掠めて、火花が散り、石畳にうっすらと線が走る。
エンデッドは後退し、それでも間に合わずに剣で斧槍を受け止める。
姿勢は固定されても、足が滑り、それでも停止。
逆襲に転じようとするエンデッドでも、一瞬で翻った斧槍の石突きの突きの早さにはかなわない。
突きを胸に受けたエンデッドのアバターが後退する。
唸り声をあげて、彼は武器を構え直した。
「レベル200が何だって? エンデッド」
ぐるぐると斧槍を振り回しながら、デギオンが問いを向ける。
声をぶつけられた方は、動かない。
行くぜ、とデギオンの方から攻撃を繰り出して行く。受けに徹すると決めたのだろう、エンデッドはひたすら攻撃を跳ね返している。
こうしてみると、デギオンとエンデッドには速度の差はそれほどないか、場合によってはエンデッドの方が早い。
そこにレベルの差がある。
その差を塗り替えているのが、デギオンの技だった。術とも言える。
そうしてついに、デギオンの斧槍の一撃がエンデッドに直撃、派手なエフェクトを伴ってエンデッドが片膝をつく。
「決まったな」
ピタリと斧槍を振り上げ、デギオンが決闘を終わらせようとした。
しかし、ここでは終わらなかったのだ。
唐突にエンデッドが跳ね上がり、デギオンはその剣の刺突を体を開いて避けた。
先ほどよりなお激しい、エンデッドの攻勢が始まった。
体力が無尽蔵なのかと思うほどの、嵐のような攻撃の連続。
よく見ると、エンデッドのアバターが赤い光をまとっている。
「凶暴化か」
デギオンが呟く。その間にも剣は一撃必殺の攻撃を続けている。
凶暴化というのが何を示すのかもわからないけど、これでは体力勝負になる。
そして体力の数値は、レベルによる。
デギオンの窮地に、俺は見ているしかできなかった。
(続く)




