プレイ時間:43.5時間〜
プレイ時間:43.5時間〜
男のアバターはNPCの注文の確認を突っぱね、こちらへやってくる。
「こんなところで何をやっているんだ、お前は」
見知らぬアバターの言葉は敵意を隠そうともせず、デギオンにだけ向けられている。
「お前はまだそんなに粋がっているのか、エンデッド」
どうやらデギオンは知り合いらしい。
「デギオン、あんたにはだいぶ世話になったが、なぜ俺たちを裏切った」
「裏切っちゃいない。別の遊び方を選んだだけだ」
「いつか、このゲームをクリアするんじゃなかったのか?」
ゲームをクリアする?
聞いたこともない話に、僕は現実で目を白黒させていた。
TWCにはクリアという概念はないはずだ。この世界樹の世界も、はるか上まで続いているし、実際、最強レベルのプレイヤーやパーティ、ギルドも最前線で戦い続けている。
「俺たちはあんたを尊敬していた。しかし、今はそんな素人とつるんで、遊びか」
「ゲームはもともと、遊びだろう」
「俺たちにとっては青春だし、あんたは大人だ」
やれやれ、とデギオンが立ち上がる。
「それで、俺を連れ戻すつもりか、エンデッド」
「決闘だ。俺があんたに勝ったら、あんたはアカウントを消せ」
意味不明で、理解不能ながら、とんでもないことを言っているアバターを、僕は凝視した。
アカウントを消せば、デギオンが積み重ねたレベルやステータス、モーションの全てが失われる。
そんなことを強制する権利は誰にもないはずだ。
「いいよ、エンデッド、すぐやるのか?」
「表に出な」
エンデッドという男はさっさと店を出て行った。
「デギオン、馬鹿げていると思うけど」
そうテキストを打つけど、気にするな、とデギオンは笑みを見せた。
二人で表へ出ると、すでに路地でエンデッドが武器を構えていた。剣だが、柄の両側に刃が伸びている不規則な剣だ。
デギオンが手元の斧槍を取り出し、それを振るうモーションをする。
僕の視界に「決闘開始まで十秒」と表示が出る。
「鎧を着ないのか、デギオン」
エンデッドの言葉に、デギオンは、飄々と応じる。
「俺が勝ったら、いうことを聞けよ、エンデッド」
「あんたは勘違いしている」
不敵な口調で、剣を構えた大柄なアバターが言う。
「俺はあんたがいない間に、レベルを200より上にしているんだ」
レベル200!
トップの中でも上位のプレイヤーなのだ。
「ま、レベルが全てじゃないからな、このゲームは」
デギオンがそう応じた時、決闘が開始され、エンデッドが一気に間合いを詰めた。
(続く)




