プレイ時間:42時間〜
プレイ時間:42時間〜
デギオンから連絡があって、二十二時過ぎにログインした。
服装を変えておけ、と言われたので青い長衣ではなく、他に唯一持っている初期服に着替えた。
セーブポイントを入り組んだ路地にしていたので、今は誰もそばにいない。そこから約束の場所へ向かう。デギオンが指定した、衣装屋の前である。
そこにたどり着いても、デギオンの姿はない。
待つべきかな、と思っているところへメッセージが届き、店に入れとある。
恐る恐る中に入ると、店員のNPCアバターが近づいてくる。
「デギオン様がお待ちです」
商品の購入について聞かれると思っていたので、これには驚いた。そういう機能がショップにあるとは知らなかった。
周囲の光景が変わり、NPCアバターと、見知らぬアバターが現れる。
見知らぬアバターがこちらを振り返った時、その顔がデギオンの顔であることに、先ほどより大きな驚きがやってきた。
髪の毛が伸びていて、一つにポニーテールに結んでいる。そしてヒゲが伸びていて、顎はヒゲで覆われている。服装も見知らぬ地味なものだった。
「迷惑をかけたな、坊や。ちょっと服を買ってやる。いつまでも初期服というわけにはいくまい」
そこは問題じゃないんだけど、とはテキストでは言えず、「その顔と頭は?」と入力した。
デギオンのアバターが表情をふてぶてしい笑みに変える。
「おそらくどこかのギルドかパーティが俺たちを探しているんだろう。俺だけか、アカリアだけか、それとも二人ともかは知らないが」
「なぜ?」
「まあ、それだけの実力があるし、前の仲間から足を洗うやり方が二人とも無理やりだったからな。放っておいてくれればいいが、そうもいかんのだろう」
アイテムでも持ち逃げしたのだろうか。それとももっと直接的に、ダラーを、とか。
僕が黙っているのを納得か理解と解釈したらしく、デギオンはNPCの店員のアバターに次々と服を用意させ、僕にその中から三着を買ってくれた。帽子も二つある。
「いいか、坊や、このゲームでは少し離れるとアバターを見分けるのには服で探すしかなくなる。だからこの三着と初期服の合わせて四着をうまく使って、尾行をやり過ごすんだ」
「青い服は目をつけられている?」
「そうなるな」
そう答えてから、デギオンが僅かに上を向いて、アカリアの奴が派手な服を買うからだ、とぼやく声が遠くから聞こえた。
とにかくだ、とデギオンがこちらを見やる。
「まずは相手を知らんことには、どうにもならない。俺はこの通り、うまく変装できる。アカリアもそれくらいの技能や能力はある。坊やにはきついだろうが、少し辛抱してくれ。すまん」
謝ることじゃないです、とテキストを打つと、デギオンも少しほっとしたようだ。
店を出るときも僕が先に出たので、それからデギオンが何をしたのかは、僕は知らない。
新しい服を着たアバターで僕は路地の奥へ進み、そこでセーブポイントを設定し直して、ログアウトした。
デギオンと話したことで、ちょっと安心している自分がいる。
僕はなんて、臆病なんだろう。
たかがゲームに、こんな必死になるなんて。
でも、デギオンもアカリアも、僕の友人だ。
必死にならなかったら、何かが違う気がした。
何が違うかは、わからないけど。
(続く)




