プレイ時間:39.5時間〜
プレイ時間:39.5時間〜
月曜日だからデギオンは仕事で忙しいと言い、アカリアも予定があると言っていた。
僕は午後から訓練施設で訓練用モンスターとやり合っていた。
第1層の訓練施設のそれよりも手ごわいので、やりがいがある。というより、第1層の訓練用モンスターは本当に初心者向けだったのだとわかった。
2時間ほどを過ごす間に、レベルが14に上がり、ステータスも向上した。新しいモーションも二つ、加わった。
訓練施設を出た僕は、ラーメン屋へ戻って少しアイテムを整理する気になった。
だけどそれより先に、声をかけてくるアバターがいる。
「あんた、どこから来た?」
声はどこか幼さがあるけど、アバター自体は筋骨隆々とした男だった。背丈もある。
どこかで会ったことがあるか、と思ったけど、もちろん、記憶にはない。
鎧を着ているけど、立派なものだ。赤を基調にしている高級そうなもの。背中には巨大な剣を背負っている。彼のアバター自体が大きいから、剣の大きさが少しわからなくなる。
「まだ初心者ですけど」
そうテキストで答えると、男のアバターがちらっとそこに目を走らせる。
「その服はどうした?」
どうやらおかしなことになりつつあるらしい。
何がこのプレイヤーの注意を引いたかはわからないけど、今は誤魔化しておくしかない。
「ローンを組みました」
ちょっと言い訳としては、苦しいだろう。意思疎通ができない相手、と判断して、無視してくれないかな。
ちなみにローンを組むことはできるけど、初心者がローンを組める金額は決して多くない。
男はまだこちらを見ていたけど、さっさと消えな、と手を振るモーションをした。
どうやら僕が本当の初心者か、ヤバイ奴と思ってくれたようだ。
頭を下げるモーションを返して、ラーメン屋へ向かうべきか、だいぶ迷った。
あのプレイヤーに後をつけられると、厄介なことになりそうだった。撒くしかないけど、そんなことができるだろうか。
パーティメンバー間のメッセージで、アカリアとデギオンの両方に連絡を取ろうとするけど、二人ともログインしていない。メッセージはスマートフォンに送られても、すぐに彼らがやってくることはない。
僕は30分ほどを粘って、適当なところをセーブポイントに設定し直して、ログアウトした。
何が起ころうとしているんだろう?
手元のヘッドギアとスマートフォンを見ながらぼんやりしていると、一階から母さんの声で「おやつ食べない?」と声が聞こえた。
返事をして、僕はヘッドギアごとスマートフォンの机に置いた。
おやつを食べても、あまり味もせず、部屋に戻ってからちょっと思案した。
思案しても、何も変わらないと結論を出すしかなく、僕はベッドに寝転がった。
本でも読んで気分を切り替えよう、と枕元に置いてある「ローマ人の物語」のうちの一冊を手に取った。
(続く)




