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三月二十九日(日曜日) (2)

三月二十九日(日曜日) (2)



 コンビニへ向かうはずが、それよりも先に妙な人物と出会った。

 目的地のコンビニに行く近道を選んだのだけど、その途中が工事中で、結局は余計な遠回りになった。

 年度末だから工事が多いのも仕方ないか、と思いながら駅前へ一度、抜けた時、駅舎の中から二人の少女が出てきたのだ。

 その二人が人目を惹くのは、お揃いの服を着ているからだけど、しかし、髪型も同じなら、顔の作りも同じなのだ。

 双子だ。

 ただそれ以上に引っかかったのは、その顔をどこかで見たことがあったからだ。

 どこでだったか……。

 そう、あれは、高校じゃないか。

 ガイダンスの日だ。クラスで見た。

 名前が思い出せないわけではなく、まだ自己紹介もしていないのだ。

 双子の方は僕に少しも注意を払わず、駅舎に隣接のデパートに入っていってしまった。追いかける理由もないし、特に話をすることもないし、改めてコンビニへ向かうとしよう。

 コンビニにたどり着いたけど、店頭に高木くんはいなかった。

 どうも今日はうまくいかない日らしい。

 高木くんのことを店員さんに訊ねることもせず、温かい缶コーヒーを買ってすぐに店を出た。

 家に帰るともう昼食間近で、散歩にしては長かったな、という感想しかない。何の実りもない散歩だった。

 父さんと母さんが庭で花壇をいじっているのを、室内から眺めて暇を潰した。

 秋穂がすぐ横へ来て、

「真澄さんが訪ねてきたよ」

 と、小さな声で言った。誰にはばかっているのか、と冗談にもできたけど、僕は無言で妹を見てしまった。その妹が首を振る。

「甲斐性のない兄貴だこと」

「僕は元々、そういう人間だからね。それで真澄はどうしたの? 何の用だった?」

「何も言わずに帰っちゃった。もしかしたら、ねぇ?」

 思わせぶりなことをいう妹の不遜さに首を振るしかない。

 もしかしたら、僕に告白する何かがあった、とでも言いたいらしいけど、そんなわけがない。

 彼女と僕の間にあるのは、腐れ縁としか言えない関係性だけなのだ。

 両親が作業をやめて、お昼ご飯はピザをデリバリーすることになった。秋穂がいろいろと注文を出し、二枚のピザは三十分もせずに到着した。

 母さんの料理も好きだけど、ピザは好きな食べ物だ。普段は食べられない特別な感じがある。

 安い男なので、ハンバーガーやフライドチキンでも似たような気持ちになる。もしかしたらコンビニ弁当でもそうなるかもしれない。

 食事が終わり、家族揃って書店へ出かけ、帰りにちょっと喫茶店でお茶を飲み、家に帰ってきた時は夕方だった。

 誘われたので、夕食まで父さんとチェスを指し、やっと夕飯にありついたら、お風呂に入り、結局、TWCにログインできたのは21時過ぎになった。




(続く)

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