プレイ時間:38時間〜
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デギオンは真面目な口調で言った。
「俺は坊やの携行できるアイテムの量が制限されないバグは、利用できる限り利用するべきだと思う」
「利用ってどういうこと? まさか本当に荷運びをさせるの?」
そうアカリアが質問を返すと、それよりも重要だ、とデギオンが答える。
「坊やにはある程度の負荷になる量のアイテムを常に所持させる。そうすると、足回りが重たくなるだろう」
「せっかくまともになったのに、また前の鈍臭さに戻れって?」
アカリアがこちらをちらっと見る。
ボイスチャットの二人にはとてもテキスト入力では会話に割り込めない。
「あの鈍臭さは、まあ、確かに不利ではある。ただし、別の側面もあるだろ?」
「わかった。デギオンはハルハロンに、負荷をかけて俊敏性を通常の上昇以上の速度で成長させよう、って言いたいわけだ」
なんだって?
そんなことが可能なんだろうか。
今のところ、僕のステータスでは俊敏性が一番、上がっているのは事実だけど。
「別に坊やも前までの足回りの悪さでも戦ってこられたんだ。奥の手というのも変だが、ある程度のレベルになるまで俊敏性を重点的に高めれば、後になると余裕が生まれると思う」
「まぁ、その手の負荷のかけ方は、少しはあると聞いているけどねぇ」
アカリアが唸るような口調で言う。
「バグなんだから、いつかは直されるだろう。今がチャンスだ」
そのデギオンの言葉に、アカリアは黙っている。それから二人がほぼ同時にこちらを見た。
僕は急いでテキストを打った。
「やってみたいと思います。負荷をかけます」
「なんか、こういうのもチートっていうのかなぁ」
アカリアが嘆かわしげに呟く。
チートであろうとバグであろうと、僕が苦労するだけだし、苦労の後に何かしらの成功があるなら、正しい結果じゃないだろうか。
デギオンとアカリアが相談して、僕は前と同等の荷物を抱え込んで戦うようにする、と決めた。そして可能な限り、僕が死なないようにデギオンかアカリアのどちらかが危険地帯に踏み込む時は同行することになった。
「まぁ、レベルが50くらいになる頃には、きっとお前はとんでもない使い手になる。楽しみにしていろよ」
すぐに頷くモーションをすると、親指を立てた拳を突き出すモーションが返ってくる。アカリアは鼻で笑うモーション。僕は拝むモーションをした。
こうして今後の方針は決まった。
三人の予定をすり合わせて、週に三回は危険地帯に踏み込むことになった。それ以外は訓練施設で習熟に努める。
この予定を確認した時、アカリアも学生らしい、とわかった。
四月になると平日の昼間は無理だ、と言ったのだ。デギオンはあまり気にもしていない。
その日は帰りにさらに三体のロックタイタンを倒して、ストーンタウンに戻った。
それぞれにログアウトして、現実に戻る。
僕がこの世界にどっぷり浸かっていられるのも、あと少しか。
今日もまだ遊びたいけど、現実世界で用事がある。
名残惜しさを感じながら、ログアウトした。
(続く)




