プレイ時間:37時間〜
プレイ時間:37時間〜
日付が変わって、土曜日。
午前中は部屋を掃除したりしているうちに潰れてしまい、約束の時間に間に合うように、昼食の後に慌ててログインした。
ラーメン屋の店内に自分が急に飛び込んで、声を上げて驚いてしまった。
ボイスチャットがオフなので、誰にも聞かれないけど、しかしラーメン屋はNPCの店主がいる以外、他にアバターの姿はない。
その店主のNPCアバターが無言でグラスを目の前に置いていった。
少しするとアカリアがやってきた。やってきたのも店内に唐突にアバターが出現した。
危うく、もう一回、声をあげそうになったのは内緒だ。
「何か今日は面白いことが起こるわけ?」
アカリアは昨日のことを何か曲解しているらしい。
「ちょっとした実験」
そうテキストを打つと、「迷惑はかけないように」という返事があった。
5分遅れでデギオンがやってきた。
「さて、お二人さん、行くとしようか」
三人揃って店を出て、危険地帯との境に立つ。
デギオンとアカリアは武装していく。いつも通りの武装だ。
僕も鎧を身につけ、戦士の盾を左手に、騎兵槍を右手に持った。
「じゃ、出陣」
軽い調子でそう言うとまずデギオン、その次にアカリアが進み出る。
僕が最後尾で踏み込むと、周囲の景色が一変する。
岩の回廊ようなところだ。谷というより、切り通しという感じ。
僕はコントローラーのスティッックを倒し、あまりの動きのスムーズさに驚いた。
今日は声をあげそうになってばかりだ。
アカリアを勢い余って追い越してしまい、彼女が驚きの声を漏らす。
「何? どうしたの?」
僕は足を止めて、何度か動きを確認した。
僕のアバターの動きが、軽快になっている!
デギオンが振り返り、「面白いだろ」とアカリアに笑みを見せている。
「どういう手品を使ったわけ? 僕が知らないところでレベルを上げたの?」
「まさか。背負っていた荷物を預けただけさ」
預けた? とアカリアが首を傾げているので、僕は長いテキストで昨日、デギオンと話したことや、アイテムを預けた話をした。
「バグ? へぇ」
それがアカリアの最初の感想で、その後に続く言葉はなかった。
「荷運びとして重宝されるんじゃない?」
なんとなく気まずい沈黙が三人の間に広がったのを、アカリアがその一言で破った。デギオンが「このレベルじゃなぁ」と応じている横で、僕も何かテキストを打ちたかったけど、それより先にモンスターの出現を告げる効果音が鳴った。
まだ僕たちは切り通しを抜けていないのだけど、両側の岩が崩落、アバターの背丈の二倍はある大きさの、岩の巨人が出現した。
名前は、ロックタイタン。
全部ですでに三体が出現していた。
「じゃ、本当の動きを見せてもらおうか」
突き放すようにそう言って、アカリアが僕の背後へ移動する。
不機嫌になったじゃないか、とデギオンを責めたかったけど、彼は僕にぶつかっていくように指示するようなモーションを使っている。
やれやれ。
(続く)




