プレイ時間:36時間〜
プレイ時間:36時間〜
テキストで、長い文章を四つくらいに分けてなんとか説明するけど、デギオンは「はぁ」と言ったきりだった。
しばらくの沈黙の後、つまり、と彼は首をかしげるモーションをとった。
「坊やは無限にアイテムを携行できる、ということか」
「バグだと思いますけど」
また沈黙がやってくるけどさっきよりは短い。
「今、いくつのアイテムを持っている?」
回復系アイテムと換金していない千年樹の根などを合わせると100を大幅に超えている上に、なめし革の鎧をまだ持っているし、棍棒も残っている。
そんなことを説明すると、信じられん、とデギオンが呟く。
「預かり屋を使わないのか?」
「必要ないですから」
「そんなプレイヤー、聞いたこともない。初めてみた」
デギオンのアバターが顎を撫でる仕草をして、通報するべきかな、と言ってこちらを見やる。
「何か支障があるなら、修正してもらうように通報するが、どうする?」
「支障はないように思いますけど」
「……いや、待て。そうか、ああ! なんてこった!」
いきなりデギオンが大声をあげたので、僕は思わず現実世界で椅子から転げ落ちそうになった。
どうしました? とテキストを入力する前に、デギオンが答えを口にする。
「お前のアバターがノロマな理由だ。迂闊だった。あれは理由があったんだ」
「理由ですか?」
「お前は重量のせいで動きが制限されているんだ」
重量。
それは僕も知っている。
全てのプレーヤーは武器やアイテムを持つことで、俊敏性が下がり、体力の減りが早くなる。
だからある程度は身軽でいるべきなのだけど、僕は特に気にしていなかった。
でもデギオンに指摘されてみると、多くのアイテムを携行していて、それで極端に俊敏性が押さえつけられている、ということはあるかもしれない。
「信じられないが」
デギオンの声はまだ半信半疑だった。もちろん声だけで、アバターは普通の表情だけど。
「俊敏性が異様に高い数値なのも、過負荷のまま行動して、運営の人工知能がそれをそのまま経験値に反映しているんじゃないか?」
そんなことを言われても……。
確認する方法は一つしかない。
身軽になって、戦うことだ。
「第2層に行ったら、早速、試そう。楽しみになってきたぞ」
僕はそれほどでもないけどなぁ。
時間からやや遅れてアカリアがやってきた。
さっきの話をするべきかな、と思ったけど、デギオンが囁きという機能で僕だけに聞こえる声で、「驚かそうぜ」と言ったので、その時は黙ることになった。
三人で中央広場にある石碑の前に立つ。
どの街にも石碑があり、そこが階層同士を結ぶという。
「さて、坊や、パスワードを起動してくれ。今、俺もアカリアも連結されている」
僕はコントローラーを操作し、パスワード一覧にある第1層のそれの下、第2層のパスワードを選択した。
周囲の空気が揺らめき、それが消えたときには、別の街が広がっていた。
ここが第2層「ストーンタウン」か。
(続く)




