プレイ時間:33.5時間〜
プレイ時間:33.5時間〜
盾の品揃えは少ないけど、目当ての商品はちゃんとあった。
名称は「止水の盾」だ。値段は1800ダラー。耐久度は300、防御力は200。
少し悩む値段だ。でも戦士の盾とは比べるべくもない、高性能な盾だ。
うーん、あまりダラーに物を言わせたくないけど、どうしよう。
結局、この日は決断できなかった。
他の商品の値段と性能を確認する。その中にある一番の高性能の盾はレベル12を超えないと使えない。
そのまま店を出て、30分も過ぎているので、アカリアの店に行った。
「早いじゃないか。現実では暇をしているの?」
店に入ると、NPCではなく、椅子に腰掛けてアカリアのアバターが待ち構えていた。
「休みなんです」
そうテキストを打つと、学生の特権だね、とアカリアが応じる。
僕はふと、盾について訊ねる気分になった。テキストを打ち込む。
「ユニコーンに翼を?」
アカリアが驚いているのがアバターの動作より、声でわかる。
「ちゃんと調べなかったの?」
そう言われて、今度は僕が驚く方だ。調べたはずだけど、何か落ち度があっただろうか。
「あの店は第3層に姉妹店があって、「ペガサスに角を」っていう店。知らないよね?」
「知りません」
「あそこに行くと、第1層で売っている商品はみんな五割引で買える。つまりここで買うのは大損ってこと」
そんなことがあるのか……。
無駄な買い物をしないで済んだ、とホッとしている僕の前で、「些細なことでも僕やデギオンに相談しなよ。このゲーム、意外に意地が悪いから」とアカリアはちょっと怒っているようだ。
頼りにならないと思われたのが嫌なのかもしれない。
それからアカリアは僕に戦士の盾と鉄鎧を受け渡し、整備の料金を支払おうとしたけど、出世払いでいい、と受け取らなかった。
「僕もデギオンもダラーには困ってはいないよ。あんたが一番、貧乏で、稼ぎ方も知らないんだからね」
それはそうだけど、さすがに5万ダラーくらいは持っている。
しかし、もしかして二人はそれ以上に持っているのかな。
店をやるくらいだし。
「訓練施設にでも行こうか? さっさとレベルを上げたいでしょ」
昨日の激戦の後にはレベルが上がっていないけど、感覚としてはあと少しだ。
渡りに船、という思うが半分、アカリアの迷惑にならないといいな、という思いが半分で、了承した。アカリアは着ていた服を揃いの青い長衣に変えた。
こうして僕たちは訓練施設へ向かうことになった。
同じ服を着ているだけで、仲間ができたようで頼もしい。
危険地帯でもないのに。
訓練施設では30分ほどを遊んだ。やっぱりレベルはすぐに11に上がった。
びっくりしたのは乱取りのような攻撃の応酬になって、もちろんアカリアの方が素早いし、一撃でこちらを倒せるのだけど、偶然、僕の一撃が一度だけヒットしたことだ。
瞬間、「あなたのレベルが13に上がりました」と表示された。
12の見間違いではない。一度に二つ上がったのだ。
アカリアは表情をしかめるモーションをさせ、それから、
「レベルが上がったでしょ」
とボソッと言った。
僕が「上がりました」とテキストを打つと、不覚だなぁ、とアカリアがつぶやき、不意打ちの鎖鎌の一撃で、僕を即死させた。
すぐに回復するけど、アカリアは容赦なく、もう一回、僕を即死させた。
(続く)




