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プレイ時間:30.5時間〜

プレイ時間:30.5時間〜



 デギオンが時間になると格子の中から一本の棒を取り出す。

 前に見た時のように、その上をデギオンの手が撫でていくと、形が改まっていき、一本の騎兵槍が出来上がった。

 色は前よりも白に近い。透き通るような光の反射が表現されている。

「できたぞ、坊や」

 空中を横切ってきた騎兵槍を手に取る。

 名前は前と変わらない、騎兵槍キツツキ、のままだ。

 武器自体のステータスをチェックする。耐久度は300、打撃力は180だった。

「ものすごくスペックが上がってますけど」

 思わずそんなテキストを入力していた。

 それを受けて、デギオンが肩をすくめるモーションをした。

「低階層では珍しいレアな素材を使ったから、そのせいだよ。坊やだって苦労して協力したんだから、何も気にすることはない。料金は、1500ダラーでいいぞ」

 もう一度、お礼を言う僕に、気にするなって、とデギオンは笑うし、アカリアも笑みを見せている。

 優しい人たちなんだ。

「坊やはこれから、どうするつもりだ?」

 騎兵槍を背中に背負った後、僕たち三人は小さなテーブルを挟んで向かい合った。

「レベル10といえば、第2層は当然だし、あるいは第3層でも通用する」

 それは、と入力して、投稿することもできず、手が止まった。

 わかっているけど、僕の正直な気持ちは、デギオンとアカリアと一緒に遊びたい、というのが一番強い願望だった。

 でも今の僕にできることは限られているし、二人とは自由度が違いすぎる。

 レベルが低いこともある。それにこの問題は、ダラーでは解決できない。

 TWCは残酷なほど、プレイヤー間の隔たりがある。

 デギオンとアカリアは、釣り合うかもしれない。

 僕が二人と一緒にいることは、きっと、できない。

「実はな、坊や、アカリアから提案があった」

 黙っている僕に、デギオンが声をかけてくる。

「ここらで10層くらいまでを再確認してみようってな」

「そんなことは言ってないさ」アカリアがすぐに応じる。「低い層にも楽しみはあるかもしれない、といった。全く違うことを言わないでよ」

 同じさ、いや違う、と二人がやりあっているのを前に、僕はやっぱり言葉を失っていた。

「それは、僕を育ててくれる、ということですか?」

 そのテキストを読んでから、そうなるな、と二人が同時に言って、お互いを見やる。それぞれに顔をしかめたり、目を細めたり、舌を出すモーションをしている。

 モーションの無駄遣いだ……。

「ここまで関わってみると、楽しいかもしれないと思ってな。俺はあまり初心者は好きじゃないが、坊やは面白そうだと思った」

「理屈じゃないのは、僕も同じだけどね。パーティも組んだし、こういう遊びも楽しいかも」

 遊び。

 そうだ、これは遊びだ。

 だから、楽しいと思えることを追求すればいい。

 拒絶されるかもしれないけど、その時は、その時だ。

「よろしくお願いします」

 そう入力すると、いつかのように二人が拳を突き出してくる。

 僕もそこへ拳を突き出した。

 三つの拳がぶつかる。



(続く)

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